2017年08月04日

人工光合成技術導入ソーラーH2によるオレフィンの製造コストは、ソーラーH2の値段が200円/kg程度が達成できれば、他の方法と十分に競争ができる。


光化学協会編:夢の新エネルギー:人工光合成とは何か、講談社、2016年」は参考になる。「第7章:人工光合成を実用化する具体策:事業化の戦略、人工光合成で化学品製造を目標とする」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ソーラーH2とCO2からエチレン、プロピレンなどを作ることができれば、ガソリン相当の燃料を作るよりは利益が得やすい。またエチレン、プロピレンなどから誘導される、より複雑な化学品(たとえばポリマ一)への変換といった高機能化が図られるので、その分より利益が得られやすい。
2.燃料は単に燃やしてエネルギーを作るので、その価値はエネルギー価格で決まる。燃料は安ければ安いほどよいので、燃料には付加価値はほとんどつかない。人工光合成が作る人造石油が、まず狙うべき目標は燃料ではなく化学品とする必要がある。工業的な意味でまず経済合理性を得やすい付加価値の高いエチレン、プロピレンなどのオレフィン類を作ることを目標とする事業化の道を探り、その事業化の後により大規模な生産量(大幅なCO2排出削減)につながる水素を含めた燃料製造を考えるのが合理的であ。
3.化学品の大半は石油から作られている一方、北米でシェールオイルなどの非在来型の化石資源の産出量が急拡大している。生産規模から考えると石油にせよ、シェールガスやシェールオイルにせよ化石資源が化学品製造の原料である時代は当分続く。化学品の価格は当分の間、化石資源の価格に依存する。したが'って、人工光合成によって得られる水素を用いたCO2からの炭化水素の価格は化石資源由来の価格と同等程度でなければ競争にはなりえない。
4.現在使用している化石資源と将来使用したいソーラーH2が登場するまでの間をつなぐことが必要である。CO2排出量の観点から有効な手段として天然ガスのCH4に注目する。化石資源ではあるが、燃料目的に用いられており、また化学品に変換する場合においてもCO2排出量の少ないのがメリットである。まずはCH4を用いてCO2を化学原料化する。
5.その後に、人工光合成に移行する。CO2の化学原料化する。過剰分の水素をもつCH4を酸素で酸化して(酸素が電子を取って)6電子還元相当の炭化水素を作ることが可能であろう。この場合、電子を取りすぎないようにできれば、CO2は生成せずに済む。
6.ソーラー水素と二酸化炭素を利用した化学原料製造によってCO2排出量は減る。化石資源由来の(CH2)n、の場合には、採掘、輸送、製造に際して発生したCO2に加えて、製品を燃やした場合に発生するCO2を加算した「カーボンフットプリント」で表現する。
カーボンフットプリント(略称CFP:CarbonFootprint炭素の足跡)とは、「人間活動が温室効果ガスの排出によって地球環境を踏みつけた足跡」という意味で、一般的に製品が販売され、さらに焼却処分までを含めて排出される温室効果ガス重量をいう。
7.化石資源から製造したH2を用いて燃料電池自動車を走らせても、原料が化石資源である限りにおいては、H2の製造までにたっぷりとCO2が副生している。つまり、化石資源を原料としている限りにおいてはCO2排出ゼロなどという表現を使えば嘘になる。
8.ソーラーH2を用いた場合には水素雰囲気で反応させ、空気(つまり酸素)がない状態で反応するので、生成物のオレフィンが無駄に燃焼することもなくCO2が出ることもないメリットがある。このCO2削減量は、従来技術ではありえない驚異的な数字であり、カーボンプラス(CO2増加)のプロセスからカーボンニュートラル(CO2不変)どころではなく、一挙にカーボンマイナス(CO2減少)プロセスにまで達するのである。人工光合成プロセスは、まさに地球を救う化学プロセスであることがわかる。
9.人工光合成技術を導入したソーラーH2によるオオレフィンの製造コストは、ソーラーH2の値段として200円/kg程度が達成できれば、CH4とCO2を用いた場合を含む他の方法と十分に競争ができる。風力発電や太陽光発電を用いた、水の電気分解法による水素製造に比べても、人工光合成によるソーラー水素は、最も有望であるとの評価が得られている。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
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