2017年08月06日

化学プラントで排出されるCO2は、日本の年間排出量は約13億トン(2015年)であり、その中で化学産業は約8000万トン程度である。

「光化学協会編:夢の新エネルギー:
人工光合成とは何か、講談社、2016年」は参考になる。「第7章:人工光合成を実用化する具体策:事業化の戦略、人工光合成で化学品製造を目標とする」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.現在、我が国における人工光合成の研究の中で、実用化に向けた取り組みとして人工光合成化学プロセス技術研究組合の人工光合成プロジェクト(略称ARPChem)がある。これは経済産業省所管の国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」による2012〜2021年という10年問の国家プロジェクトである。
2.ソーラー水素や液体燃料の製造・出荷を直接の目的とはせず、水素をもとにして化学工業の原料を製造し、出荷するプラントの実現を目標としている。プラントから出荷されるのは、水素でなくエチレンやプロピレンなどの化学工業の原料プラスチックなどの製品の原料である。
3.CO2削減の課題および産業としての採算性の課題を解決する。新技術を適用する際に考えるべきポイントが2つある。1つは、必要不可欠な課題が解決できる点だ。2つは採算がとれること。
4.産業活動によるCO2排出のうちの多くは自動車、飛行機、船舶などの燃料や火力発電所の燃料からの排出、製鉄所で鉄鉱石をコークス(炭素)で還元して鉄を生産する際のCO2排出に由来する。化学プラントで排出されるCO2はこれらに比較するとそれほど大きくない。日本を例にとるとCO2の年間排出量は約13億トン(2015年)であり、その中で化学産業は約8000万トン程度である。
5.化学原料を人工光合成の開発対象にする理由は、各家庭へのガスや電気エネルギーの供給方法や社会全体のエネルギーシステムなどはすでに、社会が多額の投資を蓄積してきた結果として有している社会インフラ、社会資本である。これらを、一気に変えて、新しいシステム、設備に移行するは、新たな巨額投資が必要になる。現在の社会インフラ、社会資本、エネルギーシステムを最大限有効利用しながら、少しずつ新しいシステムに移行していく考え方、方法が現実的である。
6.ソーラー水素、人工光合成技術は、事業化に成功する確率の高い方法で社会実装しようとしている。化学製品を事業対象にするのかは、より付加価値の高い製品として出荷することで、採算性を取ろうとするからである。
7.これまで天然ガスのメタン(CH4)を原料として合成ディーゼル油やジメチルエーテル(DME)を製造する触媒プロセスの開発が実施されてきたが、未だに実用化されていない。その理由の一つとしてエネルギー用の燃料価格の安さがある。
8.石油化学産業の現在の原料であるナフサ(原油を蒸留して得られる30〜180℃程度の沸点をもつ成分の混合物)は、ほぼガソリンと同様の成分であり、価格も同等であるが、ナフサクラッカー(ナフサを熱分解して低分子化合物を得るための分解炉)によって得られるエチレン、プロピレンなどの低級オレフィンは、クラッカー(分解炉)での熱分解というひと手間をかけている分のコストが加算されるので割高になる。


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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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