2017年08月07日

日銀に対する信頼の低下が、長期金利のコントロールを困難にしている。3年半たっても目標を実現できず、その責任を外的要因に押し付けるのは不誠実である。

「野口悠紀雄著;長期金利の操作が難しいのはなぜか、
週刊ダイヤモンド、2016.10.15」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本銀行は、9月21日の金融政策決定会合で、金融政策の枠組みの変更を決めた。これまでは国債贈人量という「量」を決めてきたが、これを変史し、「金利」を目標にする。量的政策から金利政策への転換という意味では、非伝統的な金融政策から伝統的な金融政策への回帰である。伝統的な金利政策での操作対象は、短期金利と将来への期待であるが、今回の政策変更では、長期金利を直接操作することが目標にされた。
2.問題は、長期金利の決定メカニズムを理解することである。2年間資金を借り入れる場合、2つの方法がある。第1は、今2年間借りること。第2は、今1年間の借り入れをし、1年後に再び1年間の借り入れる。第2の方法では、1年後の金利の予測が重要な意味を持つ。金利が将来急騰するかもしれないので、2つの方法が同じと評価されるためには、2年物金利が1年物金利より高くなる必要がある。この差を「リスクプレミアム」という。
このモデルを一般化すると、「1年物金利」が「短期金利」になり、「2年物金利」が「長期金利」になる。長期金利は、(A)現在の短期金.利、(B)将来の短期金.利の期待(予測)、そして、(C)リスクブレミアムによって決まる。
3.伝統的な金融政策では、まず現在の短期金利を操作する。日銀による将来の金利予測を市場に信じさせることができるなら、イールドカーブを操作できる。これを「時間軸効果」というが、この方法で長期金.利をビンポイントで操作するのは、人々の期待を正.確に操作するのは難しいので、極めて難しい。従って、長期金.利の操作は中央銀行の政策になじまないとされてきたが、今回の決定は、これまでの日銀のこうした基本姿勢を180度転換するものである。
4.日銀に対する信頼の低下が、艮期金.利のコントロールをさらに困難にしている。日銀は、2%のインフレ目標を2年以内に達成すると約束しながら、3年半たっても実現できず、目標時期をズルズルと先延ばししてきた。そして、今回の総括検証で時期を曖昧にした。しかも、その責任を消費税増税や原油価格下落という外的要因に押し付けている。これは不誠実な態度である。
5.日銀が信頼を喪失したのは致命的で、消費税増税の延期を繰り返したので、政府に対する信頼も低下した。長期金利は、リスクブレミアムによっても影響を受ける。日銀の将来の政策に対する不信感が増大すれば、リスクブレミアムは高まる。リスクプレミアムが高くなり過ぎた場合、日銀のコントロールは、人々の心理的な問題なので、将来の短期金利の予測のコントロール以上に難しい。
6.高くなり過ぎた金利をターゲットまで引き下げるには、国債購入が必要になるが、どれだけ購入すれば目標の金利が実現できるか、事前には分からない。今回、日銀が考えているのは、日銀が指定する利回りで国債を買い入れる手段も老えられている。「価格」を固定すれば、「量」は受動的に変動する。金利ターゲット政策の下では、金利引き上げが必要で国債購入量を減らさねばならない場合もある。他方、多額の購人をしないと価格が下落するため、国債購入量を増やさなければならない場合もある。長期金.利が高騰した場合には、国債を買い支えなければならない。
7.将来の金利が現在よりかなり高くなるという予測は、政府の文書に書かれている。公的年金に関する「平成26年財政検証結果レポート」においても、積立金の運用利回りが20年度で4.0%とされている。
8.内閣府や厚生労働省が想定する事態が実現した場合、日銀は極めて大量の国債を購入する必要がある。しかし、日銀は、すでに発行残高の3分の1を超す国債を保有しており、あと数年すれば、これまでのような購入は困難になる。その場合の日銀はどう対処するのだろうか?


yuji5327 at 06:49 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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