2017年08月13日
太陽光による人工光合成で、水を原料にして直接空気中の窒素を還元固定しアンモニァを生成することができれば理想的である。
「光化学協会編:夢の新エネルギー:
人工光合成とは何か、講談社、2016年」は参考になる。「第6章:人工光合成への道筋(3)」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.半導体光触媒を使った水の光分解で水素を生成できる人工光合成系には、いくつかのタイプがあり、1つめのタイプは、太陽電池により得られた電力を使って、水を電気分解する。2つめのタイプは、太陽電池の表と裏に、直接水素生成と酸素生成に適した触媒を貼り付けて一体化したデバイスである。これは、見かけ上1枚のデバイスで人工光合成ができるので、ArtificialLeaf(人工の葉っぱ)とよばれている。
2.3つめのタイプである水の中に粉末の光触媒を分散させて光を当てる方法や4つめのタイプとして電極に付けた半導体に直接光を当てて水素を作る方法がある。電極と半導体触媒が一体化しているので「半導体光電極」という。これらの系では光触媒や光電極材料自身が光を吸収し、その固体表面で水素や酸素を生成する。すなわち、光エネルギー捕集と化学反応が同一光触媒上で進行する。
3.4つめの半導体光電極による方法では、水から電子を引き抜いて酸素生成反応を引き起こす半導体は、電極としては光照射で陽極(アノード)としてはたらき、水素生成反応を起こすことができる半導体は、光照射で陰極(カソード)としてはたらく。半導体を付けた陽極だけに光を当てて白金のような対極とつなぐ方法、陰極だけに光を当てて対極とつなぐ方法がある。
4.陽極と陰極それぞれに別の半導体を付けてつなぎ、両方に光を当てる方法がある。。電極系の最大の長所は水素と酸素が分離して得られることである。
5.単一の粉末光触媒を用いた系では、水素と酸素の混合物が得られてしまうため、そのあとにそれらのガスを分離することが必要になる。しかし、簡便さ、拡張性や経済性を考えると粉末系が優位性をもつと考えられる。
6.人工光合成により生み出される化学エネルギーとしては、現在、クリーンエネルギーとして水素が最も注目を集めている。水素は万能に見えるが、全てが優れているというわけではない。水素は酸素が共存すると引火爆発の危険性が高い。また、室温で気体なので体積がかさばり、常圧では2gで22.4リットルにもなるので、多量を運搬するには加圧して鉄製のボンベを運ぶことになる。例えば、最も一般的な水素ボンベ(7000リットル:重さ約53kg)に加圧して満杯にすると水素自体は9kg程度だが全体で約62kg程度にもなる。水素を運ぶというより、容器のボンベを運ぶことになるのである。あるいは極低温で液体にして運ぶ方法もある。この場合にも水素の沸点は-252.6℃と極低温なので冷却のための余分なエネルギーが必要となるし、容器も重くなる。いずれの場合にも、容器の方がはるかに重くなるのでそう簡単ではない。
7.水素をそのまま運ぶことに多くの問題があるので、水素をいったん安全に運搬できる別の物質に変換して、使用する場所まで運び、必要なときにまた水素を取り出す方法が研究されている。変換された物質を水素キャリァというが、水素キャリアとして注目されているのが「有機ハイドライド」や「アンモニア」である。
8.アンモニアは、引火燃焼や爆発のリスクが水素に比べて小さく、重量換算で17.6%と高い水素含有率を有していながら、水素と比べてかなり容易に液体にできるため、輸送に非常に適した水素キャリアである。アンモニアは20℃では、8.46気圧で液化するし、常圧でも-33.34℃で液化する。たとえば、燃料電池自動車に燃料としてアンモニアを搭載し、触媒を用いてアンモニアから水素を取り出して燃料電池に導入すれば、水素を燃料として搭載する必要が無くなり安全性や可搬性を確保できる。アンモニアを直接燃料電池の燃料として使用する研究も始まっている。
9.人工光合成で作った水素を、水素キャリアとしてのアンモニアに変える場合、新たな問題が出てくる。現在、アンモニア合成法として広く利用されているハーバー・ボッシュ法は、水素と窒素を直接、鉄を主体とした触媒上で反応温度400〜600℃、圧力200〜400気圧という過酷な条件で作っている。アンモニアを作るために消費されるエネルギーは極めて大きい。したがって、水素キャリアとしてアンモニアを活用するためには、より穏和で環境負荷の低い合成法を開発することが望まれている。
10.太陽光による人工光合成で、水を原料にして直接空気中の窒素を還元固定しアンモニァを生成することができれば理想的である。
人工光合成とは何か、講談社、2016年」は参考になる。「第6章:人工光合成への道筋(3)」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.半導体光触媒を使った水の光分解で水素を生成できる人工光合成系には、いくつかのタイプがあり、1つめのタイプは、太陽電池により得られた電力を使って、水を電気分解する。2つめのタイプは、太陽電池の表と裏に、直接水素生成と酸素生成に適した触媒を貼り付けて一体化したデバイスである。これは、見かけ上1枚のデバイスで人工光合成ができるので、ArtificialLeaf(人工の葉っぱ)とよばれている。
2.3つめのタイプである水の中に粉末の光触媒を分散させて光を当てる方法や4つめのタイプとして電極に付けた半導体に直接光を当てて水素を作る方法がある。電極と半導体触媒が一体化しているので「半導体光電極」という。これらの系では光触媒や光電極材料自身が光を吸収し、その固体表面で水素や酸素を生成する。すなわち、光エネルギー捕集と化学反応が同一光触媒上で進行する。
3.4つめの半導体光電極による方法では、水から電子を引き抜いて酸素生成反応を引き起こす半導体は、電極としては光照射で陽極(アノード)としてはたらき、水素生成反応を起こすことができる半導体は、光照射で陰極(カソード)としてはたらく。半導体を付けた陽極だけに光を当てて白金のような対極とつなぐ方法、陰極だけに光を当てて対極とつなぐ方法がある。
4.陽極と陰極それぞれに別の半導体を付けてつなぎ、両方に光を当てる方法がある。。電極系の最大の長所は水素と酸素が分離して得られることである。
5.単一の粉末光触媒を用いた系では、水素と酸素の混合物が得られてしまうため、そのあとにそれらのガスを分離することが必要になる。しかし、簡便さ、拡張性や経済性を考えると粉末系が優位性をもつと考えられる。
6.人工光合成により生み出される化学エネルギーとしては、現在、クリーンエネルギーとして水素が最も注目を集めている。水素は万能に見えるが、全てが優れているというわけではない。水素は酸素が共存すると引火爆発の危険性が高い。また、室温で気体なので体積がかさばり、常圧では2gで22.4リットルにもなるので、多量を運搬するには加圧して鉄製のボンベを運ぶことになる。例えば、最も一般的な水素ボンベ(7000リットル:重さ約53kg)に加圧して満杯にすると水素自体は9kg程度だが全体で約62kg程度にもなる。水素を運ぶというより、容器のボンベを運ぶことになるのである。あるいは極低温で液体にして運ぶ方法もある。この場合にも水素の沸点は-252.6℃と極低温なので冷却のための余分なエネルギーが必要となるし、容器も重くなる。いずれの場合にも、容器の方がはるかに重くなるのでそう簡単ではない。
7.水素をそのまま運ぶことに多くの問題があるので、水素をいったん安全に運搬できる別の物質に変換して、使用する場所まで運び、必要なときにまた水素を取り出す方法が研究されている。変換された物質を水素キャリァというが、水素キャリアとして注目されているのが「有機ハイドライド」や「アンモニア」である。
8.アンモニアは、引火燃焼や爆発のリスクが水素に比べて小さく、重量換算で17.6%と高い水素含有率を有していながら、水素と比べてかなり容易に液体にできるため、輸送に非常に適した水素キャリアである。アンモニアは20℃では、8.46気圧で液化するし、常圧でも-33.34℃で液化する。たとえば、燃料電池自動車に燃料としてアンモニアを搭載し、触媒を用いてアンモニアから水素を取り出して燃料電池に導入すれば、水素を燃料として搭載する必要が無くなり安全性や可搬性を確保できる。アンモニアを直接燃料電池の燃料として使用する研究も始まっている。
9.人工光合成で作った水素を、水素キャリアとしてのアンモニアに変える場合、新たな問題が出てくる。現在、アンモニア合成法として広く利用されているハーバー・ボッシュ法は、水素と窒素を直接、鉄を主体とした触媒上で反応温度400〜600℃、圧力200〜400気圧という過酷な条件で作っている。アンモニアを作るために消費されるエネルギーは極めて大きい。したがって、水素キャリアとしてアンモニアを活用するためには、より穏和で環境負荷の低い合成法を開発することが望まれている。
10.太陽光による人工光合成で、水を原料にして直接空気中の窒素を還元固定しアンモニァを生成することができれば理想的である。