2017年08月29日

個人や企業が中央銀行に仮想通貨の口座を持ち、そこで決済すれば、送金・決済の問題は全て解決され、銀行のシステムを使う必要はない。

「野口悠紀雄著:日銀発行の仮想通貨で銀行は要らなくなる、
週刊ダイヤモンド、2016.11.12」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本銀行は、異次元金融緩和によって、マネーストックをマネタリーベースほどには増加させることができなかった。その理由は、マネーストックの大部分は、日銀券ではなく、銀行の預金であるからである。
2.2016年9月の数字を見ると、マネーストック(Ml)667.8兆円のうち、日銀券などの現金は91.8兆円でしかなく、残り576.0兆円は預金通貨である。日銀は、マネタリーペースを増加させることによってマネーストックを増加させようとしたが、できなかった。
3.日銀の政策は行き詰まった。日銀が打つ手として、原理的に、極めて強力な方法は、預金準備率を100%に引き上げることである。銀行は預金の全てを日銀の当座預金にしなければならないので、預金をもとに信用創造をして貸し出しすることはできない。銀行の貸し出しは、自己資本の範囲に限定され、世の中に流通するマネーは、ほとんど日銀券だけになる。
4.日銀券は日銀の負債であり、資産には国債あるいは国への貸し付けがある。国に対する信用をコントロールすることで日銀券の発行が決まる。政府・日銀は、マネーストックを直接に動かせるようになる。貨幣数量説的なメカニズムで物価が決まるとすれば、物価上昇率も思いのままにコントロールできる。日銀は極めて強刀な政策手段を手に入れたことになる。
5.銀行は資産として、貸出金でなく、国債などの安全な資産を持つことになる。送金・決済は、これまで通り預金と日銀の当座預金を用いるので、特に支障はない。100%準備制は、現実離れした思われるが、昔から、繰り返し提案されてきた。
6.オーストリア学派の経済学者は、1910年代に完全準備(100%準備)制を提案した。30年代には、アービング・フィッシャー、フランク・ナイト、ヘンリー・シユルツ、ヘンリー・サイモンズ、ミルトン・ブリードマンなどの経済学者が、完全準備制を提唱した。これは、「シカゴプラン」と呼ばれる。
7.この考えに対して、銀行から強い反対があった。銀行は貸し出しができなくな。マーティン・ウルフは、シカゴブランを紹介し、国家の信用を担保とするマネーを意のままに創造する特権をもつ者が、自分から手放すわけがないと言ってている。このプランは、現実の世界では実現していないが、現在も死んでいない。08年の金融危機以降は、民間銀行による信用創造を制約すべきとの考えが強くなっている。ナロー・バンキングなどリスクのある貸し出しが難しくなっている。
8.最近、大きな条件変化が生じているのが仮想通貨である。中央銀行が仮想通貨を発行し、人々がそれを使うと、銀行に預金を持つ必要はなくなる。人々が日銀券でなく銀行預金を持つのは、銀行券だと取り扱いが大変だからである。現金で持っていると盗難などの危険があるし、遠隔地に送るには現金書留のような手段を使わざるを得ない。
9.個人や企業が中央銀行に仮想通貨の口座を持ち、そこで決済するようにすれば、送金・決済の問題は全て解決され、銀行のシステムを使う必要はない。仮想通貨の方が効率的にできる。預金の利子が失われるとの意見があるが、送金コストの低下の効果の方が大きい。こうして、中央銀行が独自の仮想通貨を発行すれば、完全準備制とよく似た世界が実現する。信用創造は自然になくなる。そして、銀行は安楽死することになる。
10.イングランド銀行は、早くから仮想通貨の発行を検討していたが、16年3月に、ロンドン大学の研究者が、イングランド銀行が利用することを想定した「RSCO2in」を開発したと発表した。仮想通貨の利用によって国際送金・決済のコストを抑えることができる。イングランド銀行だけではなく、カナダ、オランダ、オーストラリアの中央銀行も研究中で、16年1月には、中国人民銀行も独自の仮想通貨を発行する。
11.問題は、マネーストックが増え過ぎる危険がある。完全準備制は、部分準備制下で銀行の信用が無制限に膨張するのを防ぎ、マネーストックの増加に歯止めをかけることを目的とする。増大させることが目的ではない。日本のように社会保障支出が増大していく国では、財政支出を賄うためにマネーが増発されるのは必至だ。われわれは、中央銀行による仮想通貨の発行を食い止めなければならない。


yuji5327 at 06:48 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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