2017年09月07日

生命科学は生物学の一部だが、物理のように統一原理に従っている学問で、決して暗記科目ではない。

「池上彰、岩崎博司、田口英樹著:
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第1章:生きているって、どういうことですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.今の高校生物の教科書は池上彰のころと内容がずいぶん変わっている。違うところは、DNA、遺伝子、ゲノム、染色体の話題が多い。新しい学習指導要領が平成24年度から実施され、生物の内容が大きく変わった。
2.数10年前の生物の教科書で勉強していた人たちからすると、大きく変わった。今の高校生との間に、知識の格差ができてしまった。生物の教科書は大きく変わっ理由は、それまでの教科書の内容が古すぎた。DNAが二重らせん構造をしていることが1953年にわかり、そこから生物学は爆発的に発展し、劇的に変化したが、日本の生物の教科書は、新しい情報を後から付け足していくというスタイルだったため、教科書の内容が根本的に変わらなかった。
3.今までは、現象論中心の博物学だった。一つひとつの生き物について研究し、見つかってきたものを個々に配述していくので、つながりが少ない各論になり、覚えることも多くなり、暗記科目というイメージにつながった。それが、「生命とは何か」という根本原理をベースに考える、という視点が加わった。「どんな生物がいるのだろう」から、「そもそも生命とは何だろう」という視点になった。
4.生物学(バイオロジー)と生命科学(ライフサイエンス)との違いは、生物学は大きな範囲を扱う学問で、生命科学は生物学の一部である。生態学は生物学の一部だが、生命科学には含まれない。生命科学は物理のように統一原理に従っている学問としてとらえることができる。決して暗記科目ではない。
5.今の時代に生命科学が必要とされる理由は2つある。1つは、生命科学を知っておくことは、消費者として間違った情報や怪しい商品にだまされないため。もう1つは「自分は何であるか」を考えるためである。アメリカで、キリスト教の中でもエヴァンジェリカル(福音派)と呼ばれる人たちは進化論を否定し、子どもを公立学校に通わせると進化論を教えられるから、自宅学習をさせている家庭が、約100万世帯いる。
6."生きている"と"死んでいる"の違いを説明するのは難しい。人間の場合、「死」は定義による。脳死を人の死と認めるかどうか、死んでも髪の毛や爪はしばらく伸び続ける、細胞レベルではまだ生きている、多細胞生物のような複雑な生物では、生と死の境界は見方によって変わる、細胞レベルで見るか、個体レベルで見るか、単細胞生物と、多細胞生物の違い。
7.細胞の3つの定義。細胞と何か。すべての生命は細胞からできている。細胞の特徴。境界・自己増殖・代謝の3つ。細胞膜という境界で袋、自己増殖は細胞が分裂で同じものが増えていく。袋の中でエネルギーを作る。外からエネルギーや細胞内成分の元となる物質を取り込んで、袋の中でエネルギーを生み出し、新しく物質を作り、排出する化学反
応。袋の内部環境を維持するための活動を代謝と呼ぶ。
8.ウイルスは自分自身の中でエネルギーや体を作ることはできない。入り込んだ先の細胞を借りて、自分の材料を作っている。もし、生命の定義のうち、他の細胞を使ってもいい、とするなら、ウイルスを生命と見なしていいが、3つの定義に忠実に従えば、ウイルスは生命ではない。ウイルスは生命である、と主張する人もいる。
9.ウイルスの中には、バクテリア(大腸菌、乳酸菌などの細菌)よりも体のサイズやDN
A量が大きいものがいる。ミミウイルスやパンドラウイルスという名前ついている。バクテリアの中には、他の細胞に寄生しないと生きていけない種類もある。
10.マイコプラズマは肺炎の原因の1つである病原体で、大きさは0・0003mmで、遺伝子が500種類くらいしかないバクテリアである。ヒトの細胞は大きさが約0.1mm、遺伝子は約2万5000種類だから、マイコプラズマは本当に極小な生命である。その遺伝子には必要最小限の代謝に関わるものしかなく、入り込んだ先の細胞から必要な材料を集めて生きている。
11.ウイルスのようなバクテリアもいる。ウイルスと生命の違いがあいまいになっているので、細胞や生命の定義を見直そうとする動きがある。細胞を人工的に創るのが手っ取り早いが、細胞というゴールをはっきりさせる必要がある。人工的な細胞作製は成功していない。何をもって成功とするかを判断するためにも、細胞の定義をしっかりと決めておく必要がある。
12.漠然としていた生命を、分子のレベルから説明できるようになってきたから、境界線がはっきりしてきた。物理学や天文学でも、新しいことわかってきたことで定義を変えることは、いくらでもある。
13.宇宙には正体のはっきりしない暗黒物質(ダークマター)や暗黒エネルギーがあって、私たちが知っている物質は宇宙全体の数パーセントに過ぎないが、生命科学も同じである。かもしれませんね。天文学で定義を見直した例に「惑星」がある。2006年に惑星が明確に定義されたことにより、それまで惑星と見なされていた冥王星は「準惑星」に分類された。



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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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