2017年09月29日
ヒトには2万5000種類のタンパク質があるが、機能がわかっていない。ヒトのタンパク質はいまだに新しいものが次々と発見されている。遺伝子がもつ情報を元にタンパク質が作られる。
「池上彰、岩崎博司、田口英樹著:
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第2章:細胞の中では何が起きているのですか?」の「代謝とは何ですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.代謝というのは、細胞が増えたり活動をしたりするときに、細胞の中で起きるいろいろな化学反応や物質のやりとりを一括りにしたものである。たとえば、DNAを複製する化学反応も、細胞の外にあるブドウ糖を細胞内に取り込むことも代謝である。
2.代謝は、ほとんどの場合は、「タンパク質」がたらいている。タンパク質は物質の分類として食べるときのタンパク質と同じものである。食べたタンパク質がそのままはたらくのではなく、食べたタンパク質は一度細かく分解され、自分が生きていくために必要なタンパク質に再構築される。
3.細胞内で再構築されたタンパク質は、細胞が生きていくための機能、生命現象のすべてを司っている。タンパク質があるから生命は成り立っている。生命が何かをするときには、必ずタンパク質が関わっている。生命の中で緻密なしくみを運用しているのがタンパク質である。
4.タンパク質が具体的にしていることは、「生きている」という言葉のイメージは、まずは「呼吸をする」だが、「呼吸をする」ということは、空気中の酸素を吸って身体の隅々まで運んで、最後は二酸化炭素を吐くことである。詳しは、酸素を取り込んで、食べたものの中からエネルギーを取り出す。血液を通じて身体の隅々まで酸素を運ぶのは、赤血球という細胞の中にある「ヘモグロビン」という名前のタンパク質である。
5.ごはんを食べたとき、消化酵素が食べ物を細かく分解する。炭水化物を分解する消化酵素はアミラーゼなど、脂肪を分解する消化酵素はリパーゼなど、栄養素としてのタンパク質を分解する消化酵素はペプシンなど、分解するものそれぞれに対して消化酵素がある。。これらの消化酵素もすべてタンパク質である。
6.消化酵素は有名だが、それもタンパク質である。食べものの中にある炭水化物は、消化酵素によってブドウ糖という物質まで分解される。ブドウ糖は多くの細胞に取り込まれ、細胞内でさらに多数のタンパク質によって分解され、最終的に生命が生きていくために必要なエネルギーを作る。
7.「生きている」というと、心臓が動くというイメージがある。心臓の拍動は、筋肉が動くことによって起きるが、筋肉を細かく見ると、そこには動くタンパク質、エネルギーを使って形を変えるタンパク質がある。タンパク質分子一つひとつは10億分の1m単位という目に見えない小さな世界にあるが、それが多く集まれば心臓の拍動という、私たちが実感できるほどの大きな力を生み出す。
8. DNAの複製のときに関わるタンパク質の中心となっているのは、DNAポリメラーゼというDNA合成酵素である。タンパク質の機能を説明するとき、生命の中で何でもやっていると表現するのが一番いい。タンパク質を分解するのも消化酵素というタンパク質だし、自分に必要なエネルギーやDNAを合成するのもタンパク質である。場所が違えば、まったく別の種類のタンパク質がはたらいていて、生命の中では何千種類、何万種類というタンパク質がうまく調和を取りながらはたらいている。
9.ヒトには2万5000種類のタンパク質があるが、機能がわかっていない。ヒトのタンパク質はいまだに新しいものが次々と発見されている。遺伝子がもつ情報を元にタンパク質が作られる。遺伝情報の総体であるゲノムがわかれば、タンパク質が何種類あるのか推測できる。ゲノムに何種類の遺伝子があるかわかれば、そこからタンパク質の種類もわかる。10.人間の場合、ゲノムは2003年に全部解読されている。DNAの塩基配列が全部わかっていて、どこが遺伝子で、どこがタンパク質を作るところか、大体の予想はついていて、それが2万5000種類くらいである。
11.人間のゲノムを解読しようとした1990年代の予想からすると、すごく少ない。たとえば、バクテリアである大腸菌には、遺伝子が4000種類くらいある。人間のほうがずっと複雑なので、人間にはとてつもない数の遺伝子があると、1990年代までは思われていた。大腸菌が4000種類くらいなら、人間は10万種類くらいだろうという予想もあったが、実際は人間の遺伝子は2万5000種類くらいしかなかった。大腸菌の6倍しか違いがなかったのは衝撃的だった。
12.約2万5000種類の遺伝子から、少しずつバリエーションの変わったタンパク質が作られることも、最近わかってきた。バリエーションとは1種類の遺伝子から数種類のタンパク質を作り出すしくみがあるということである。「遺伝子の数の違い」と「生物の複雑さ」対応するほど単純ではない。人間とチンパンジーとで遺伝子の数はそれほど変わらない。
13.遺伝子数はほぼ同じで、ゲノム全体でも約98%は同じで、たった2%の違いだが、そこから作られるタンパク質の機能はだいぶ違ったものになる。人間のタンパク質約2万5000種類がいつも同じ場所ではたらいているのではなく、必要なときに必要な場所で、必要な分だけ作られている。
14.タンパク質は適材適所に配置されている。ヘモグロビンは赤血球で、消化酵素は消化器官で、というように、どのタンパク質をどこで作らせるのかは厳密にコントロールされている。タンパク質を作るのもタンパク質である。自分で自分を作るようなものである。
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第2章:細胞の中では何が起きているのですか?」の「代謝とは何ですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.代謝というのは、細胞が増えたり活動をしたりするときに、細胞の中で起きるいろいろな化学反応や物質のやりとりを一括りにしたものである。たとえば、DNAを複製する化学反応も、細胞の外にあるブドウ糖を細胞内に取り込むことも代謝である。
2.代謝は、ほとんどの場合は、「タンパク質」がたらいている。タンパク質は物質の分類として食べるときのタンパク質と同じものである。食べたタンパク質がそのままはたらくのではなく、食べたタンパク質は一度細かく分解され、自分が生きていくために必要なタンパク質に再構築される。
3.細胞内で再構築されたタンパク質は、細胞が生きていくための機能、生命現象のすべてを司っている。タンパク質があるから生命は成り立っている。生命が何かをするときには、必ずタンパク質が関わっている。生命の中で緻密なしくみを運用しているのがタンパク質である。
4.タンパク質が具体的にしていることは、「生きている」という言葉のイメージは、まずは「呼吸をする」だが、「呼吸をする」ということは、空気中の酸素を吸って身体の隅々まで運んで、最後は二酸化炭素を吐くことである。詳しは、酸素を取り込んで、食べたものの中からエネルギーを取り出す。血液を通じて身体の隅々まで酸素を運ぶのは、赤血球という細胞の中にある「ヘモグロビン」という名前のタンパク質である。
5.ごはんを食べたとき、消化酵素が食べ物を細かく分解する。炭水化物を分解する消化酵素はアミラーゼなど、脂肪を分解する消化酵素はリパーゼなど、栄養素としてのタンパク質を分解する消化酵素はペプシンなど、分解するものそれぞれに対して消化酵素がある。。これらの消化酵素もすべてタンパク質である。
6.消化酵素は有名だが、それもタンパク質である。食べものの中にある炭水化物は、消化酵素によってブドウ糖という物質まで分解される。ブドウ糖は多くの細胞に取り込まれ、細胞内でさらに多数のタンパク質によって分解され、最終的に生命が生きていくために必要なエネルギーを作る。
7.「生きている」というと、心臓が動くというイメージがある。心臓の拍動は、筋肉が動くことによって起きるが、筋肉を細かく見ると、そこには動くタンパク質、エネルギーを使って形を変えるタンパク質がある。タンパク質分子一つひとつは10億分の1m単位という目に見えない小さな世界にあるが、それが多く集まれば心臓の拍動という、私たちが実感できるほどの大きな力を生み出す。
8. DNAの複製のときに関わるタンパク質の中心となっているのは、DNAポリメラーゼというDNA合成酵素である。タンパク質の機能を説明するとき、生命の中で何でもやっていると表現するのが一番いい。タンパク質を分解するのも消化酵素というタンパク質だし、自分に必要なエネルギーやDNAを合成するのもタンパク質である。場所が違えば、まったく別の種類のタンパク質がはたらいていて、生命の中では何千種類、何万種類というタンパク質がうまく調和を取りながらはたらいている。
9.ヒトには2万5000種類のタンパク質があるが、機能がわかっていない。ヒトのタンパク質はいまだに新しいものが次々と発見されている。遺伝子がもつ情報を元にタンパク質が作られる。遺伝情報の総体であるゲノムがわかれば、タンパク質が何種類あるのか推測できる。ゲノムに何種類の遺伝子があるかわかれば、そこからタンパク質の種類もわかる。10.人間の場合、ゲノムは2003年に全部解読されている。DNAの塩基配列が全部わかっていて、どこが遺伝子で、どこがタンパク質を作るところか、大体の予想はついていて、それが2万5000種類くらいである。
11.人間のゲノムを解読しようとした1990年代の予想からすると、すごく少ない。たとえば、バクテリアである大腸菌には、遺伝子が4000種類くらいある。人間のほうがずっと複雑なので、人間にはとてつもない数の遺伝子があると、1990年代までは思われていた。大腸菌が4000種類くらいなら、人間は10万種類くらいだろうという予想もあったが、実際は人間の遺伝子は2万5000種類くらいしかなかった。大腸菌の6倍しか違いがなかったのは衝撃的だった。
12.約2万5000種類の遺伝子から、少しずつバリエーションの変わったタンパク質が作られることも、最近わかってきた。バリエーションとは1種類の遺伝子から数種類のタンパク質を作り出すしくみがあるということである。「遺伝子の数の違い」と「生物の複雑さ」対応するほど単純ではない。人間とチンパンジーとで遺伝子の数はそれほど変わらない。
13.遺伝子数はほぼ同じで、ゲノム全体でも約98%は同じで、たった2%の違いだが、そこから作られるタンパク質の機能はだいぶ違ったものになる。人間のタンパク質約2万5000種類がいつも同じ場所ではたらいているのではなく、必要なときに必要な場所で、必要な分だけ作られている。
14.タンパク質は適材適所に配置されている。ヘモグロビンは赤血球で、消化酵素は消化器官で、というように、どのタンパク質をどこで作らせるのかは厳密にコントロールされている。タンパク質を作るのもタンパク質である。自分で自分を作るようなものである。