2017年10月28日

1990年代、ヒトの約30億塩基対すべてを調べるのに13年、3500億円かかった。次世代シーケンサーという最新機種では2週間、10万円でできる。

「池上彰、岩崎博司、田口英樹著:
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第4章:地球が多様な生命であふれているのはなぜですか」の「ゲノムに大量の無駄があるのはなぜですか」「生命には無駄や多様性が必要ですか」「生命には無駄や多様性が必要ですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ゲノムの大きさは、塩基対の数で表す。ヒトなら30億塩基対。他の生物では、大腸菌は460万塩基対、昆虫であるショウジョウバエは1億8000万塩基対。植物である小麦は170億塩基対。小麦のほうが多いが、ゲノムサイズが小さければ下等生物というわけではない。
2.ゲノムサイズが大きい生物がいる理由は、ゲノムサイズが大きくなると、遺伝子を担う部分が相対的に少なくなり、遺伝子として機能していない部分が多くなる。無駄に思えるが、子どもが生まれるときに、組換えが起こりやすいというメリットがある。無駄に思えるところが、実は多様性を作りやすくしている。
3.多様性といっても、ゲノムで見ればほとんど一緒だという生物はる。ヒトとチンパンジーは2パーセントしか違いがない。2パーセント、つまり50分の1と、DNA複製エラー率の2億5000万分の1とはかなり違う。生命科学が発展している今、人工的に超人類を生み出すという発想は、ゲノム編集という技術を使って、受精卵のゲノムを変えることができる状況になっている。デザイナーベビーの問題になる。
4.ゲノム編集とは、ゲノムの狙った場所を正確に改変する技術で、特に2013年に開発されたCR-SPR/Cas9という方法は簡便かつ安価にゲノム編集できる基礎研究では欠かせない技術となっている。一方で、ヒトの受精卵(育たない異常受精卵)をゲノム編集したとする研究成果も報告されており、倫理的な議論を呼んでいる。日本では2016年4月に「日本ゲノム編集学会」が設立され、ゲノム編集の技術や倫理を議論する場となっている。
5.ゲノムに無駄を作らせてでも、生命には多様性が必要される。人間社会でも、多様性のある社会のほうが強く、多様性のあるほうが強靱で、いろいろな環境や事態に対応できる。
6.バクテリアのゲノムには無駄な部分がほとんどないので、多様性が生まれにくい。だからバクテリアは数十億年もの間、大きな進化がなかった。無駄といっても、今は私たちが解明できていないだけで、もしかしたら生命にとって重要な機能が潜んでいるのかもしれない。
7.生命を語る上で、無駄や多様性がキーワードとなる。DNAの塩基配列を決める分析方法でも、最新の分析機械は、間違いが含まれているかもしれない多くの情報を短時間で読み、その中から正しい情報を取り出すシステムにしている。間違いという無駄が含まれているのを承知の上でやることが、むしろ時間短縮につながっている。
8.DNAの塩基配列を分析する機械は「DNAシーケンサー」または単に「シーケンサー」と呼ばれている。1990年代、ヒトの約30億塩基対すべてを調べるのに13年、3500億円かかっていた「ヒトゲノム計画」が、「次世代シーケンサー」という機械が登場したことで高スピードと低コストが進み、最新機種では2週間、10万円で調べることができる。第3世代、第4世代シーケンサーの開発も進んでおり、いずれは誰もが自分のゲノムをデータとして保有する未来がくるのかもしれない。
9.進化とは、生物の種類が爆発的に増えた表現するのが正確で、その中から環境に適応したものだけが結果的に生き残ると「進化」ということになる。われわれがものを作るとき、目的が最初にある。決まった部品しか作らないが、生命の歴史は違い、いろんな形の部品を手当たり次第に作り、その中でうまく機能するものだけが生き残り、それを繰り返して、さらに最適化を重ねて今の生命がある。進化は、道筋があって進んできたのではない。とにかく試すということを膨大な時間の中で、たまたまいいものだけが生き残った。明確な意思があるのではなく、単に確率的な問題である。昔の人は、そこに明確な意思や創造主のようなものが、あると考えた。


yuji5327 at 06:33 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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