2017年10月30日
DNAが正確に複製されていれば、同じものしかできない。多様性が生まれるのは、DNAは100%正確には複製されず、エラーが起きている。
「池上彰、岩崎博司、田口英樹著:
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第4章:地球が多様な生命であふれているのはなぜですか」の「どのようにして多様性が生まれるのですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.DNAが正確に複製されていれば、同じものしかできないはずだが、多様性が生まれるということは、DNAは100%正確には複製されず、エラーが起きているということになる。、エラーの箇所によっては、一見無害なときもあれば、致命的になるときもある。
2.エラーが起きる確率は、2億5000万分の1だと考えられている。ヒトのゲノムは30億塩基対あるので、1回のDNA複製ではおよそ12カ所でエラーが起きる。30億分の12だが、DNAの95%以上はタンパク質を作る遺伝子とは関係ないところなので、ほとんどのエラーは体への影響がない。
3.遺伝子でエラーが起きると、がんなどの病気につながることがある。遺伝子が異常になる原因が、DNAを複製するときのエラーである。ヒトのDNAのうち95%以上は遺伝子と関係ないが、遺伝子と関係ないところの存在意義は、はっきりとわかっていない。今まさに盛んに研究されている。無駄な部分でも、興味深いものとして、「レトロトランスポゾン」と呼ばれているものがある。
4.長い進化の過程で、一部のDNA領域が、まるでコピー&ペーストされたものが、ヒトのゲノムの中に残っている。レトロトランスポゾンは、まず自分自身のDNAをRNAに転写する。そのRNAを元にDNAが作られ、ゲノム中に転移する。この"レトロ"は、セントラルドグマにおけるDNAからRNAという遺伝情報の流れとは逆向き(レトロ)いう意味である。
5.RNAからDNAという逆向きは、ヒトのゲノムの中には、約40パーセントも占めている。タンパク質を作る遺伝子の部分よりもずっと高い割合である。レトロトランスポゾンは現在ではほとんど機能していないが、進化の長い歴史を振り返れば、生命の多様性を作り出すしくみの1つになっている。
6.他に多様性を作るしくみとして、染色体の「組換え」というものがある。精子と卵子が作られるときに、1対の染色体の間で交叉が起きる。組換えが起きると、新しい遺伝子の組み合わせが生まれ、生まれてくる子どもに遺伝子の多様性が生まれる。DNAの複製エラーが小さな差を作り、そしてレトロトランスポゾン、染色体の組換えが大きな変化を引き起こす。こうした現象の積み重ねが多様性を作る。
7.ヒトのゲノムの中にあるレトロトランスポゾンは進化の名残であり、現在は逆転写されてゲノム中で増えることはほとんどないが、一部のウイルスは今でも逆転写を利用している。たとえば、AlDS(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)は逆転写を行うことで、ヒトの免疫細胞のゲノムにHlVの遺伝子を入り込ませる。入り込んだHIV遺伝子からHlVを構成するタンパク質が作られ、HlVが免疫細胞内で増殖する。やがて免疫細胞が減ることでAlDSを発症する。
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第4章:地球が多様な生命であふれているのはなぜですか」の「どのようにして多様性が生まれるのですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.DNAが正確に複製されていれば、同じものしかできないはずだが、多様性が生まれるということは、DNAは100%正確には複製されず、エラーが起きているということになる。、エラーの箇所によっては、一見無害なときもあれば、致命的になるときもある。
2.エラーが起きる確率は、2億5000万分の1だと考えられている。ヒトのゲノムは30億塩基対あるので、1回のDNA複製ではおよそ12カ所でエラーが起きる。30億分の12だが、DNAの95%以上はタンパク質を作る遺伝子とは関係ないところなので、ほとんどのエラーは体への影響がない。
3.遺伝子でエラーが起きると、がんなどの病気につながることがある。遺伝子が異常になる原因が、DNAを複製するときのエラーである。ヒトのDNAのうち95%以上は遺伝子と関係ないが、遺伝子と関係ないところの存在意義は、はっきりとわかっていない。今まさに盛んに研究されている。無駄な部分でも、興味深いものとして、「レトロトランスポゾン」と呼ばれているものがある。
4.長い進化の過程で、一部のDNA領域が、まるでコピー&ペーストされたものが、ヒトのゲノムの中に残っている。レトロトランスポゾンは、まず自分自身のDNAをRNAに転写する。そのRNAを元にDNAが作られ、ゲノム中に転移する。この"レトロ"は、セントラルドグマにおけるDNAからRNAという遺伝情報の流れとは逆向き(レトロ)いう意味である。
5.RNAからDNAという逆向きは、ヒトのゲノムの中には、約40パーセントも占めている。タンパク質を作る遺伝子の部分よりもずっと高い割合である。レトロトランスポゾンは現在ではほとんど機能していないが、進化の長い歴史を振り返れば、生命の多様性を作り出すしくみの1つになっている。
6.他に多様性を作るしくみとして、染色体の「組換え」というものがある。精子と卵子が作られるときに、1対の染色体の間で交叉が起きる。組換えが起きると、新しい遺伝子の組み合わせが生まれ、生まれてくる子どもに遺伝子の多様性が生まれる。DNAの複製エラーが小さな差を作り、そしてレトロトランスポゾン、染色体の組換えが大きな変化を引き起こす。こうした現象の積み重ねが多様性を作る。
7.ヒトのゲノムの中にあるレトロトランスポゾンは進化の名残であり、現在は逆転写されてゲノム中で増えることはほとんどないが、一部のウイルスは今でも逆転写を利用している。たとえば、AlDS(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)は逆転写を行うことで、ヒトの免疫細胞のゲノムにHlVの遺伝子を入り込ませる。入り込んだHIV遺伝子からHlVを構成するタンパク質が作られ、HlVが免疫細胞内で増殖する。やがて免疫細胞が減ることでAlDSを発症する。