2017年11月01日
親をゲノムで選び、どんな子どもが生まれるか予測するシステムの特許は取得され、サービス会社がある。
「池上彰、岩崎博司、田口英樹著:
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第4章:地球が多様な生命であふれているのはなぜですか」の「地球上にこんなに多くの種類の生物がいるのはなぜですか」「両親のゲノムから子どもの特徴は予測できますか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.地球上にはいろいろな種類の生物がいて、全然違うように見えるのに、細胞レベルではほとんど同じしくみで機能している。そのしくみを解明するのが、生命科学という学問である。同じしくみで機能している生物がこれほどまでに多種多様にいるということは驚きである。
2. DNAを正確に複製して細胞が分裂し、100パーセント正確に複製されていれば、遺伝子が異なる多様な生物は生まれていないはずだが、現実はそうではなく、生物の種類が多いだけでなく、同じ人間の中でもいろいろな人がいる。多種多様な生命がおり、多様な生物種と、同じ生物種の中でも多様な個体がいる。日本人と外国人とは目の色などが違い、見た目だけではなくて、体質もバラバラ。お酒が全く飲めない人もいれば、いくら飲んでも平気な人もいる。
3.遺伝子のほんのちょっとした差で変わる。お酒を飲んでも平気かどうかは、「アセトアルデヒド脱水素酵素」というタンパク質を作る遺伝子の個人差で大きく決まる。血液型も多様で、ABO式だけを見ても4種類ある。みんな同じ血液型で問題なさそうなのに国や地域によって割合が違う。日本ではA型が多いが、ブラジルではO型がほとんどである。
4.特定の血液型だけが現在まで生き延びているという可能性はある。感染症という環境の影響を受けている。例えば、鎌状赤血球症とマラリアの関係がある。鎌状赤血球とは、赤血球の形状が変化して、酸素を運ぶ能力が落ちた赤血球のことで、酸素を運ぶヘモグロビンを作る遺伝子が変化したことで起きる病気で、貧血を引き起こす。鎌状赤血球症は、鎌状赤血球を作る遺伝子を父親・母親両方から受け取った場合は重い症状となり、ほとんどは成人前に死亡する。片方の遺伝子が正常であれば、日常生活を送る分には支障はない。
5.マラリアの原因となるマラリア原虫は赤血球内で増殖するが、鎌状赤血球内では生存できない。マラリアに強いから今でも鎌状赤血球を作る遺伝子が残っている。日本では鎌状赤血球を作る遺伝子をもつ人はほとんどいないが、マラリアが流行するアフリカでは25%もの人が異常ヘモグロビン遺伝子をもっている。多様な人間がいる理由の一つに、そういった生存に関わる環境がある。
6.遺伝子からどんな子どもになるのか予測するのは、実際には単純な話ではない。たとえば、お酒に強いかどうかは確率的に予測できる。これらは特定の遺伝子だけで決まっていることが明らかになっている。しかし、美人になるかどうか、頭がいいかどうかは、1つの遺伝子だけで決まらない。複数の遺伝子が関わっているし、環境要因や文化の影響も受ける。
7.予測できるのは、血液型などごく1部で、予測できないものが圧倒的に多い。一人ひとりのゲノムが全部解読されるようになると、あるカップルからどんな子どもが生まれるのか、予測するシステムが将来出てくるかもしれないが、ゲノムだけで人間が決まるほど単純な話ではない。かつての優生学のような間違った認識を繰り返してはいけない。
8.親をゲノムで選び、どんな子どもが生まれるか予測するシステムの特許はすでに取得されている。2013年9月、アメリカの遺伝子解析サービス会社「23andMe」は、精子または卵子提供者(ドナー)と、受け取る者(レシピエント)の両者のゲノムを解析することで、生まれる子どものがんリスクや目の色、寿命などを総合判定して最適なドナーを選択できるシステムの特許(特許番号US8543339)を取得した。2016年現在、運用はされていない。なお、この特許は個人向けの遺伝子解析サービスとして世界で100万人近くのユーザーを獲得している。遺伝子を調べる料金は149ドル(約1万5000円)。日本でも同様のサービスがある。
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第4章:地球が多様な生命であふれているのはなぜですか」の「地球上にこんなに多くの種類の生物がいるのはなぜですか」「両親のゲノムから子どもの特徴は予測できますか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.地球上にはいろいろな種類の生物がいて、全然違うように見えるのに、細胞レベルではほとんど同じしくみで機能している。そのしくみを解明するのが、生命科学という学問である。同じしくみで機能している生物がこれほどまでに多種多様にいるということは驚きである。
2. DNAを正確に複製して細胞が分裂し、100パーセント正確に複製されていれば、遺伝子が異なる多様な生物は生まれていないはずだが、現実はそうではなく、生物の種類が多いだけでなく、同じ人間の中でもいろいろな人がいる。多種多様な生命がおり、多様な生物種と、同じ生物種の中でも多様な個体がいる。日本人と外国人とは目の色などが違い、見た目だけではなくて、体質もバラバラ。お酒が全く飲めない人もいれば、いくら飲んでも平気な人もいる。
3.遺伝子のほんのちょっとした差で変わる。お酒を飲んでも平気かどうかは、「アセトアルデヒド脱水素酵素」というタンパク質を作る遺伝子の個人差で大きく決まる。血液型も多様で、ABO式だけを見ても4種類ある。みんな同じ血液型で問題なさそうなのに国や地域によって割合が違う。日本ではA型が多いが、ブラジルではO型がほとんどである。
4.特定の血液型だけが現在まで生き延びているという可能性はある。感染症という環境の影響を受けている。例えば、鎌状赤血球症とマラリアの関係がある。鎌状赤血球とは、赤血球の形状が変化して、酸素を運ぶ能力が落ちた赤血球のことで、酸素を運ぶヘモグロビンを作る遺伝子が変化したことで起きる病気で、貧血を引き起こす。鎌状赤血球症は、鎌状赤血球を作る遺伝子を父親・母親両方から受け取った場合は重い症状となり、ほとんどは成人前に死亡する。片方の遺伝子が正常であれば、日常生活を送る分には支障はない。
5.マラリアの原因となるマラリア原虫は赤血球内で増殖するが、鎌状赤血球内では生存できない。マラリアに強いから今でも鎌状赤血球を作る遺伝子が残っている。日本では鎌状赤血球を作る遺伝子をもつ人はほとんどいないが、マラリアが流行するアフリカでは25%もの人が異常ヘモグロビン遺伝子をもっている。多様な人間がいる理由の一つに、そういった生存に関わる環境がある。
6.遺伝子からどんな子どもになるのか予測するのは、実際には単純な話ではない。たとえば、お酒に強いかどうかは確率的に予測できる。これらは特定の遺伝子だけで決まっていることが明らかになっている。しかし、美人になるかどうか、頭がいいかどうかは、1つの遺伝子だけで決まらない。複数の遺伝子が関わっているし、環境要因や文化の影響も受ける。
7.予測できるのは、血液型などごく1部で、予測できないものが圧倒的に多い。一人ひとりのゲノムが全部解読されるようになると、あるカップルからどんな子どもが生まれるのか、予測するシステムが将来出てくるかもしれないが、ゲノムだけで人間が決まるほど単純な話ではない。かつての優生学のような間違った認識を繰り返してはいけない。
8.親をゲノムで選び、どんな子どもが生まれるか予測するシステムの特許はすでに取得されている。2013年9月、アメリカの遺伝子解析サービス会社「23andMe」は、精子または卵子提供者(ドナー)と、受け取る者(レシピエント)の両者のゲノムを解析することで、生まれる子どものがんリスクや目の色、寿命などを総合判定して最適なドナーを選択できるシステムの特許(特許番号US8543339)を取得した。2016年現在、運用はされていない。なお、この特許は個人向けの遺伝子解析サービスとして世界で100万人近くのユーザーを獲得している。遺伝子を調べる料金は149ドル(約1万5000円)。日本でも同様のサービスがある。