2017年11月08日

生物は、遺伝子を子孫に残せばその役目を終える。老化は、生殖を終えた後の現象、老化には制御されたシステムがあり、その研究が盛んになった

「今井眞一郎(ワシントン大学教授)著:夢の「長寿物質」日本で効果を確かめたい、聞き手・構成、伊藤崇読売新聞鯨本社科学部、December2016 
中央公論CHUOKORON110」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.老化を抑制する物質:ニコチンアミド・モノヌクレォチド(NMN)の論文が反響を呼んでいる。米科学誌『セル・メタボリズム』に、マウスにNMNを1年間投与したところ、顕著な老化抑制効果が認めらた。2グループ(各90匹)のマウスに、生後5ヵ月(人間の年齢で20代)から17ヵ月(同60代)までの1年間、NMNを水に溶かして毎日飲ませた。
2.2グループのうち、片方は投与量を多め、もう片方は少なめにした。マウスも年を取ると通常は体重が増えて、メタボリック・シンドロームになるものが出てくる。しかし、NMNを1年間投与し続けたマウスは、投与していない通常のマウスよりたくさん食べるのに、体重は4から9%抑えられた。通常のマウスより脂肪を燃やしてエネルギーを得ており、代謝機能は人間の年齢で30代後半〜40代に保たれていた。一方、筋肉では、エネルギーを作り出す細胞内の機能が高まり、老化による遺伝子の変化が大幅に抑えられていた。老化とともに低下する目の機能も、若い状態に保たれていた。涙の量や骨密度、免疫細胞の数が増加し、インスリンの効き具合も改善していた。
3.NMNは、体の中でニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)という物質に変わり、これがサーチュインという遺伝子の働きを高める。NMNは年を重ねるに従い、体の中で作られる量が減り、それにともないNADの量も減っていく。そこでNMNを体外から補充し、NADを増やしてサーチュインを活性化しようというのが、慶鷹義塾大学医学部と米ワシントン大学医学部が共同で始めた臨床研究である。
4.当初はNMNの投与でがんの発生率が高まることが懸念されたが、がんの発生率や死因、生存期間は、通常のマウスと差はない。NMNの投与量が多いグループの方が、活動量が若干低下する傾向はあるが、この量は、人への投与量に換算すると相当な量になる。投与量が少ないグループは、どの機能にも良い結果が表れた。人への投与量でみると、体重70kgの男性で1日に錠剤1錠程度である。
5.NMNが効くのは、年を取ったり糖尿病になったりして、体の中のNADが減っている場合であり、自分でNADを作り出す能力のある健康で若いマウスには、NMNを投与しても効果はない。人間での効果ばまだわからないが、健康で若い人がNMNを飲んでも、何も変わらない。
6.糖尿病など、老化とともにかかりやすくなる様々な病気でNADが減少する。血糖値が正常より高くなる「二型糖尿病」のモデルマウスにNMNを与えると、インスリンの効きが良くなり、血糖値が改善される。同様にアルツハイマー病や神経変性疾患、心不全でも、NMNを投与すると回復・改善することが確認されている。
7.NMNが人間の老化も抑えるかどうかは、まだわかっていない。マウスで確認されたような効果が、人でも起こりうるかどうかを検証する段階に来ている。NMNのように元々私たちの体内にある物質を投与する臨床研究は、日本では行われたことがない。NMNを社会に普及させる場合、安全性や効果を科学的に調べることが重要である。
8.NMNを作るのは難しいが、世界で唯一、高品質のNMNを作る技術を持つ企業が、食品・バイオメーカーの「オリエンタル酵母工業」(本社東京)である。オリエンタル酵母工業では現在、「研究用」としてNMNを製造している。今回の臨床研究では、NMNを「食品」として扱っている。人間でも効果が確認されれぽ、科学的根拠に基づいて効能を示した「機能性表示食品」として世に送り出すのがいい。
9.老化を抑えるだけでなく、平均寿命も延びるのかについて、マウスの脳内のサーチュインの働きを遺伝子操作で高めた実験では、最大寿命も延びたが、健康で元気に暮らせる「健康寿命」も延びた。健康寿命に相当する期間の延びはメス16%、オス9%で、人間に換算すると女性で13〜14年、男性で7〜8年になる。
10.NMNがどんな食べ物に多く含まれているのかは、野菜やフルーツに多い。特に多かったのは枝豆、ブロッコリー、アボガドなど、種のように栄養を貯める場所に多く含まれる。牛肉やエビはわずかである。マウスに与えたNMNの量はかなり多く、これに相当する量を人間が食事だけで摂取するのは、一日3食、NMNの多いものを食べれば、それなりの量を補うことがでる。
11.米マサチューセッツ工科大学にいた2000年、サーチュインが老化と寿命の制御に重要な役割を果たしていることを発見し、英科学誌『ネイチャー』に報告した。サーチュイン遺伝子から作られるたんぱく質が老化を防ぎ、エネルギー代謝にも関係していることを突き止めた。
12.哺乳類の場合、7種類のサーチュイン(SIRT1〜7)があり、老化の制御において非常に重要なのがSIRT1である。脳の視床下部でSIRT1の機能を高めると、筋肉などの機能が若い状態に保たれることがマウスの実験でわかった。脳の視床下部は、老化を制御する「コントロールセンター」の役割を果たしている。脳の視床下部のSIRT1を活性化するNMNは、脂肪組織が分泌する酵素から作られている。この酵素は血中に分泌され、その活性が非常に高いという特徴がある。
13.足腰が衰えて歩行などが困難になる「ロコモティブ・シンドローム」や、特に筋肉量が減少する「サルコペニア」の研究では従来、筋肉そのものの研究が行われてきたが、脳内でサーチュインの働きを高めると筋肉が若い状態に保たれ、老化にともなう身体機能の低下は、脳内のコントロールセンターの機能減退が原因である。
14.BMIを横軸に、全死亡率を縦軸に取ると、グラフはU字型になる。人種によらず、最も死亡率が低くなるBMIは、男性で24〜25、女性で22〜23である。小太りの状態である。高齢者の場合、やせているより、ふっくらした人の方が元気で病気にもかかりにくいと、昔から言われてきた。BMIが少し高めの人は、外科手術の予後もよく、合併症にかかる割合も低い。脂肪は、飢餓状態の時に生き延びるためのエネルギーを蓄え、体のいろいろな能力を調節する役割を担うように発達してきた。脂肪が少なすぎると、老化を制御する脳の機能が低下し、死亡率も高くなる。
15.私たち生物は進化的には、遺伝子を子孫に残せばその役目を終える。老化は、生殖を終えた後の現象であり、生存に有利な遺伝子を残すという進化には影響しない。昔は、体のあちこちが自然に駄目になっていくのが老化と考えられていたが、老化には制御されたシステムがあり、その結果として寿命が決まっている。そして、老化を制御する研究が盛んになった。


yuji5327 at 06:39 
健康 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

書道教室(自宅)
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日



livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード