2018年01月08日

電気自動車は、エレクトロニクス製品と同じような製品になり、生産方式においても、電子製品の場合と同様に水平分業に移行するが、、この変化に日本企業は対応できるか?

「野口悠紀雄著:リレーも自動車産業も日本の強さは擦り合わせ、
週刊ダイヤモンド、2017.09.09」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.今年の世界陸上競技選手権大会で、日本チームは男子4×100mリレーで銅メダルを獲得したニュースは、日本の自動車産業を連想させた。リレーも自動車産業も、現在の優位性を将来も維持できるか、という疑問になった。
2.リレーは、バトンの受け渡し技術が重要な役割を果たし、個々のランナーがいかに優れていても、受け渡しに失敗したら、勝つことはできない。日本の自動車産業が強い理由も、類似で、部品を組み立てていく過程においては、バトンタッチのような高度の精度を要求される。同じリレーでも、バトンタッチの相対的重要度が低いと、日本は弱い。男子4×400群リレーでは、日本は決勝に進出できなかった。
3.製造業の場合も、擦り合わせの相対的重要度が低下すると、日本の国際競争力は低下する。その好例が、エレクトロニクス産業で、特にIT革命以降、組み立てにはそれほど高度の技術を必要としなくなった。部品の製造は極めて重要だが、それらを組み立てれば容易に製品ができるようになった。このため、新興国の工業化に伴って、エレクトロニクス産業の主力は、新興国、特に中国に移った。
4.この結果、生産の方式が変わった。1980年代までの製造業では、一つの企業または企業グループで部品生産から組み立てまでを行う「垂直統合」が中心的だったが、90年代になると、「水平分業化」が進展した。これは、世界中のさまざまな企業で部品の生産を行い、市場を経由してそれらを購入する方式である。
5.パソコンにおいては、90年代まで、日本国内では国産機がほとんどだった。中でも、NECの9801が国民機といわれたほど高いシエアを実現したが、水平分業化が進むと、NECも含めて日本メーカーの優位性は消滅した。
6.それまで垂直統合でPCを生産していたアップルは、iPodの生産から水平分業に転換し、新興国の企業を活用して低コストでの生産を行い、高い利益を実現するようになった。日本はこのような流れに追い付くことができなかった。
7.自動卓産業においては、日本が依然として強いのは、エレクトロニクス産業とは違って、組み立てが簡単ではないからである。これは、内燃機関を用いる自動車が、機械的に複雑な製品で、特に変速機は極めて複雑な部品である。ハイブリッド車に至っては、動力系統が2つあるので、さらに複雑になる。エレクトロニクス産業のように、部品を集めれば簡単に最終製品ができるというものではない。
8.こうした技術体系が将来も続くかどうかは、分からない。電気自動車(EV)は、個々の部品は技術的に高度なものだが、それらを組み上げて製品にするのは比較的簡単であるので、PCと同じように水.平分業化する可能性があり、PCと同じ事態が生じる可能性は十分ある。
9.フランス政府は、2040年までに国内におけるガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止すると発表した。イギリス政府も、同様の方針を発表した。与党・保守党は、ほぼ全ての自動車とバンのゼロエミッションを50年までに実現すると公約しており、今回の措置はその計画の一環である。ドイツの一部の都市も、ディーゼル車の禁止措置を検討中である。
10.ドイツでは、30年までに、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を搭載した新車の販売禁止を求める決議を議会が16年に採択した。ノルウェーやオランダでも、25年からガソリン車やディーゼル車の新車販売や登録を禁止する動きがある。これらの措置には、EVの開発を促す狙いがある。また、中国もEVを奨励している。動機は各国によって異なる。ヨーロッパの場合には、二酸化炭素(CO2)の排出削減が目的とされている。
11.中国の場合には、電力が割安であるが、ガソリンスタンドを広い国土の隅々まで普及させるのは困難だが、電力であれば広範な地域で利用可能という事情がある。もちろん、充電スタンドなどのインフラストラクチャーの整備が必要なので、ガソリン車やディーゼル車が直ちに消滅してEVに代わるわけではないが、大きな流れが変わったことは間違いない。
12.自動車メーカーは、EVへの転換を迫られる。スウェーデンのボルボは、19年以降に発売する全車種を電動化する方針を表明した。ドイツのBMWも、全てのブランドにEVを用意すると発表した。
13.アメリカのEVメーカーであるテスラは、時価総額でゼネラル・モーターズ(GM)を抜き、時価総額で全米首位の自動車メーカーとなった。16年のテスラの販売台数は、7.6万台だった。これは、GMの100分の1以下で、EVに対する期待がに大きい。
14.EVは、エレクトロニクス製品と同じような性格を持つ製品になり、生産方式においても、電子製品の場合と同様に水平分業に移行する可能性が高いが、問題は、このような変化に日本企業が対応できるかどうかである。男子4×100mリレーについても、日本の優位性がいつまでも継続できる保証はない。他国も日本と同じようなバトンタッチの技術を習得すれば、日本の優位性は崩れてしまう。
15.自動車の場合、EVになれば、重要なのは個々の部品であり、生産方式の転換である。自動車は、EVへの移行以外にも、人工知能(AI)による自動運転という最先端の情報技術だが、日本企業が不得手な分野である。
16.シェアリングエコノミーの進展によって、自動車の使い方が、所有中心から利用中心へと大きく変化する。それに適したハードウェアを追求されなければならない。このような変化に対応するには、社内の技術人材のシフトさせる必要がある。これまでの日本の自動車メーカーで中心だったのは、機械工学のエンジニアで、現在でも会社の意思決定に重要な影響力を持っている。このような変化を実現するには、他の分野の専門家が中心になる必要がある。日本の自動車メーカーが、要求される人材シフトに対応できるだろうが、日本の自動車産業の命運を決める。




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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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