2018年01月11日

ラストベルトの中でも、鉄鋼からハイテク産業への移行で繁栄を取り戻しつつあるピッツバーグの例がある。

「伊藤元重(学習院大学教授)著:地球を読む、市場経済と格差、民主主義万能ではない、2017/4/2 読売新聞 」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.米国でのトランプ政権の発足、英国の欧州連合(EU)からの離脱、欧州での極右勢力の台頭など、世界の政治が大きく揺れている。それぞれの国で起きていることには違った要素も多いが、共通しているのは、グローバル化と格差拡大の問題である。
2.グローバル化の中、米国では「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)と呼ばれるアパラチア山脈に近い地域で、鉄鋼や自動車などの製造業が衰退を続け、住民たちを直撃した。産業基盤を失った地域の貧困と将来への絶望は、私たちの想像を超える。そうした人たちの投票が、保護主義を訴えるトランプ政権の誕生につながった。グローバル化とは、市場経済が国境を超えて拡大したもので、その意味では、グローバル化と保護主義の衝突は、市場経済と格差拡大の衝突と読み替えてもいい。
3.市場経済は、しばしば所得や富の格差を広げる。勝者の総取りという言葉にあるように、市場での自由な経済活動は、経済的な勝者と敗者を分ける結果を生む。所得や富を一部の人に集中させ、大衆は相対的に貧しくなる。
4.民主主義は、すべての国民に対して1人1票を与えているが、国民の半分以上が市場経済に不満を持っていれば、保護主義でも規制でも、市場経済活動を阻害する政策が支持される。トランプ政権の誕生は、多くの人が「保護主義の方がまし」と考えたからである。5.格差の拡大と定着は、政治的な影響力を持っている。こうした「民主主義」的な力の行使が、社会にとって好ましいとは限らない。米工ール大学のエイミー・チュア教授の著書「富の独裁者」が、それを的確に指摘している。
6.アフリカ南部の国では、少数の白人が富を独占していることに不満を持つ黒人が多かった。「我々の富を取り戻す」と主張した黒人政治家が大統領になるが、独裁者となり、彼に票を投じた国民を苦しめる。結果的に、国民の不満と「民主主義」が政治的にうまく利用されてしまう。
7.トランプ政権の掲げる政策が、ラストベルトの人たちの生活の改善につながる可能性は低い。関税を引き上げ、企業の国外への投資をけん制する保護主義的な政策が、ラストベルトでの雇用を増やすとは考えられない。複雑化したグローバル経済は、単純な政策でコントロールできる代物ではない。
8.最近は、中国の方が、市場経済のアクセルを思い切り踏み込むことができている。中国でも格差は拡大し、様々な形で暴動やデモなどが起きている。それらは投票という形を取らない民主主義の姿である。多くの住民が格差拡大に不満を持てば、投票以外の形で反対運動が起こり得る。
9.中国のような政治体制では、市場経済への不満が社会全体には広がりにくい。非民主主義的な政治が動きを抑圧するからである。中国で、市場経済の動きが加速しているというのも皮肉な話ではある。
10.長い歴史を持つ欧州諸国は、市場経済の拡大と民主主義の矛盾を解消する努力を続けてきた。英国などでは、産業革命で経済が大きく成長すると、多くの労働者の抗議活動や暴動が起きた。こうした動きが、社会の不安定化につながらないための制度設計が求められた。
11.格差是正のためにポイントとなったのが、所得分配政策や社会保険制度である。失業者を守る雇用保険制度が整備され、無償の教育サービスが提供された。医療や年金などの社会保障制度も確立した。累進課税の導入により、高所得者から低所得者への所得移転が行われてきた。これらの制度は、一義的には国民を守り、福祉を向上させた。同時に、結果的には、市場経済のアクセルをより強く踏み込むことができるような安全装置の役割も果たしてきた。
12.重要なのは教育である。貧しい人たちにも教育の機会が提供されることで、貧困や格差が固定しない社会が実現する。ラストベルトの貧困も、将来への希望を持てないことが、当面の貧因以上に深刻な問題である。世代を超えて貧困や格差が固定することが避けられるなら、多くの人がグローバル化の恩恵を強く実感することができる。
13.ラストベルトの中でも、鉄鋼からハイテク産業への移行で繁栄を取り戻しつつあるピッツバーグの例がある。AI(人工知能)研究の世界的な拠点となっているカーネギーメロン大学の存在が大きい。グローバル化に対応できる力を育てていくためにも、教育は重要な意味を持つ。
14.市場経済と格差の間題は、今後の日本の経済政策を考える上でも重要である。国民皆保険で全ての国民に医療の安心を与え、公立学校が安い費用で若者に優れた教育を受ける機会を提供してきた日本の制度は、米国のラストベルトと比べると優れていたように見える。
15.日本の制度が今後も維持できるのかどうか、確信が持てない。財政的な制約で医療、年金、介護の制度が圧迫されている。子供の貧困問題が深刻に語られる中で、旧来の教育制度にほころびが見えている。高等教育が、技術革新や社会の変化に対応できなくなってきた。就職氷河期世代で非正規雇用が増えたことに象徴されるように、労働市場にもひずみが広がっている。市場経済やグローバル化の恩恵を十分に享受できるようにするには、格差の固定化を是正したり、社会保障制度の強化に取り組んだりする必要がある。日本は、デフレからの脱却を政策の最重要課題にあげてきた。そのためには、市場経済を最大限に活用することが不可欠で、グローバル化にも正面から向き合ってきた。今後、そうした流れをさらに加速できるように、、市場経済の安全装置も拡充していかなくてはならない。



yuji5327 at 06:33 
共通テーマ 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

書道教室(自宅)
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日



livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード