2018年01月14日
製紙メーカーがセルロースナノファイバCNF)に本腰を入れるのは、低迷しつつある製紙業界にとって起死回生の好機だからである。
「吉田智(ジャーナリスト)著:セルロースナノファイバー、紙おむつ、化粧品、自動車、1兆円市場にらみ量産化へ、
エコノミスト、2017.4.18」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.製紙メーカーがCNFに本腰を入れるのは、単にパルプの扱いに長けているという理由だけではない。製紙業の生産品目は、新聞用などの「紙」と段ボール原紙などの「板紙」に大別される。ネット通販の隆盛を受けて堅調な板紙に比べ、紙の市況はベーパーレス化で低迷しつつある。製紙業界にとってCNFは起死回生の好機である。
2.商業化への道のりには大きな障壁が2つある。1つは生産コストの高さ、もう1つは現状では用途が限られている点である。生産コストがかさむのは、パルプをナノサイズまで3.「解繊」は、という工程で莫大な電力を要する。原料のバルブは1キロ当たり50〜100円と安価だが、解繊を経るとコストが数干〜1万円に膨れ止がる。CNFが背中を追う炭素繊維は1キロ当たり3000円前後だ。経産省はCNFの価格を、まずキロ当たり1000円、最終的には500円程度まで抑えるのが目標である。
3.コストを下げるカギは、いかに繊維の構造を保ったままナノ化するかという点にある。従来は機械的手法といって、電力を大量に消費し、高速で細かくほぐす方法である。これに対し.近年脚光を浴びているのが、東京大学の磯貝明教授らが開発した「TEMPO触媒酸化法」に代表される化学的手法だ。TEMPOと呼ばれる化合物を触媒として使い、繊維同士の結合を弱めることで、わずかな力でナノ化でき.物理的手法に比べて消費電力も少.ない。日本製紙の防臭シートで使われたのもこの方法である。
4.用途拡大については、現時点で製品化された実例がせいぜいボールペンとトイレタリー製品のみである。あらゆる用途の可能性があるCNFだが.各企業が自社に適した用途は何なのか、手探りの状況である。
5.1兆円という数字に向けて経産省が最も期待するのは、炭素繊維が歩.んだ航空機や自動車部材への採用である。特に自動車業界への用途拡大が本命とされる。
6.CNFは、単体では加工しづらく、他の材料に混ぜることで格段に強度が増す。その筆頭が樹脂との複合である。自動車の内外装に使われている樹脂がCNF複合樹脂に切り替わり、.更に金属部品からの代替が実現すれば、1兆円という数字は現実味を帯びてくる。CNFとゴムとの複合材料、透明性を生かしたガラス代替材料といった可能性も秘める。自動車の車体丸ごとがCNFの採用領域といっても過言ではない。CNFで車体重量を1割削減する環境省のプロジェクトも発足した。デンソーやトヨタ紡織が参加するなど、自動車業界も動き始めている。
7.コスト削減の解決策も見えてきた。京都大学の矢野浩之教授が、王子HD、日本製紙、星光PMCの研究者らと共同で開発したCNF複合樹脂の製法「京都プロセス」では、コストを従来の10分の1に縮小できる。これはナノ化と複合化を一度に行う方法で、実証プラントまで建設したのは世界初である。従来は、まずパルプを化学的もしくは機械的に解繊してCNFにし、次に樹脂と混ぜる2段階の方法が主流だった。
8.日本が世界に誇る炭素繊維は、商用化までにほぼ半世紀を費やした。炭素繊維との違いは、業界の垣根を越えて多.くのプレーヤーの協力が求められている点である。CNFは資源に乏しい日本が素材大国に躍り出るカギを握る。
エコノミスト、2017.4.18」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.製紙メーカーがCNFに本腰を入れるのは、単にパルプの扱いに長けているという理由だけではない。製紙業の生産品目は、新聞用などの「紙」と段ボール原紙などの「板紙」に大別される。ネット通販の隆盛を受けて堅調な板紙に比べ、紙の市況はベーパーレス化で低迷しつつある。製紙業界にとってCNFは起死回生の好機である。
2.商業化への道のりには大きな障壁が2つある。1つは生産コストの高さ、もう1つは現状では用途が限られている点である。生産コストがかさむのは、パルプをナノサイズまで3.「解繊」は、という工程で莫大な電力を要する。原料のバルブは1キロ当たり50〜100円と安価だが、解繊を経るとコストが数干〜1万円に膨れ止がる。CNFが背中を追う炭素繊維は1キロ当たり3000円前後だ。経産省はCNFの価格を、まずキロ当たり1000円、最終的には500円程度まで抑えるのが目標である。
3.コストを下げるカギは、いかに繊維の構造を保ったままナノ化するかという点にある。従来は機械的手法といって、電力を大量に消費し、高速で細かくほぐす方法である。これに対し.近年脚光を浴びているのが、東京大学の磯貝明教授らが開発した「TEMPO触媒酸化法」に代表される化学的手法だ。TEMPOと呼ばれる化合物を触媒として使い、繊維同士の結合を弱めることで、わずかな力でナノ化でき.物理的手法に比べて消費電力も少.ない。日本製紙の防臭シートで使われたのもこの方法である。
4.用途拡大については、現時点で製品化された実例がせいぜいボールペンとトイレタリー製品のみである。あらゆる用途の可能性があるCNFだが.各企業が自社に適した用途は何なのか、手探りの状況である。
5.1兆円という数字に向けて経産省が最も期待するのは、炭素繊維が歩.んだ航空機や自動車部材への採用である。特に自動車業界への用途拡大が本命とされる。
6.CNFは、単体では加工しづらく、他の材料に混ぜることで格段に強度が増す。その筆頭が樹脂との複合である。自動車の内外装に使われている樹脂がCNF複合樹脂に切り替わり、.更に金属部品からの代替が実現すれば、1兆円という数字は現実味を帯びてくる。CNFとゴムとの複合材料、透明性を生かしたガラス代替材料といった可能性も秘める。自動車の車体丸ごとがCNFの採用領域といっても過言ではない。CNFで車体重量を1割削減する環境省のプロジェクトも発足した。デンソーやトヨタ紡織が参加するなど、自動車業界も動き始めている。
7.コスト削減の解決策も見えてきた。京都大学の矢野浩之教授が、王子HD、日本製紙、星光PMCの研究者らと共同で開発したCNF複合樹脂の製法「京都プロセス」では、コストを従来の10分の1に縮小できる。これはナノ化と複合化を一度に行う方法で、実証プラントまで建設したのは世界初である。従来は、まずパルプを化学的もしくは機械的に解繊してCNFにし、次に樹脂と混ぜる2段階の方法が主流だった。
8.日本が世界に誇る炭素繊維は、商用化までにほぼ半世紀を費やした。炭素繊維との違いは、業界の垣根を越えて多.くのプレーヤーの協力が求められている点である。CNFは資源に乏しい日本が素材大国に躍り出るカギを握る。