2018年02月11日

いつの間にか、我々はこんなに健康の信奉者になり、病の敵対者になった。老化を素直に受けとめる姿勢が認められてもいい。健康な老化というものがあるとしたら、それが一番望ましい。

「黒井千次著:
老いのかたち (中公新書)
黒井 千次
中央公論新社
2010-04-01

老いのかたち、中公新書、2010年」は面白い。「健康番組、もういいよ」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.近頃のテレビには料理番組と医療(または健康)番組が多い。医療関係の番組は、健康の維持であれ、体調の変異であれ、薬の飲み方であれ、傍観者にとどまれない。歳を重ねれば次第に体力は衰え、身体のあちこちに不具合が生ずる。生命かかわる弱点を突いてくる。幾つかの兆候を列挙し、その中の何項かに該当すればあなたの身体はこれこれの危機を抱えている、などと言われれば、つい気になって回答してみる。すると境界線すれすれか危険の側に傾いている場合が少なくなく、不安におちいる。
2.そこが医療番組の狙いであり、健康上の問題点への注意の喚起、病気の早期発見や適切な対処ならば、番組には意義があるが、同時に番組が効果を発揮する前提として、膨大な視聴者の問に不安が掻き立てられるという側面がある。若いうちはさほど気にかけずに過せたことが、歳をとるとやたら心配になる。病気自体もさることながら、手術をはじめとする様々な処置に耐え得るか否かの体力まで考えざるを得ない。テレビの番組は不特定多数の人々を対象としている以上、一般的に通用する大きな網をかけるので、病んではいない健康な人も怯えてしまう。
3.各種の定期的集団検診や人間ドックなどは個人を対象としているのから、ここで受ける指摘は我が事として受けとめざるを得ない。テレビの場合には、患者と医者が一対一で向き合う医療相談でない限り、個別性、具体性は無視される。健康上の不安を土台としたバラエティ番組に近い。
4.病気や健康維持への関心を人々の問に拡め、生活改善や異変の早期発見に問接的に寄与しているとしたら、これらの番組を遠ざけるわけにもいかない。世界最高水準といおれる日本人の平均寿命の維持に、こういう番組が貢献していると考えることもある。
5.しかし、どうせいつかは幕を引かねばならないのだから、オレのことは放っといてくれよ、と言いたい気分がある。医療番組、健康番組が始ると、もういいよ、と溜息をつきながらテレビのチャンネルを変える癖がついた。こちらには到底不可能な運動を、躍動する若い肉体が懸命にこなしているようなスポーツ番組を見る方が、よほど健康には有益な気がする。
6.食品ブームにも似たところがある。ある食品が身体に良いとテレビで報じられるや、スーパーマーケットの棚からそれらが一斉に姿を消してしまうほど売れるという。しばらく経つとまた売場に並ぶというところからみると、一時の波の如きものである。血液をサラサラにするためにパンを食うのではあるまいし、その新商品を買う気は起らない。
7.いつの間にか、我々はこんなに健康の信奉者になり、病の敵対者になった。老化を素直に受けとめる姿勢が認められてもいい。健康な老化というものがあるとしたら、それが一番望ましい。



yuji5327 at 06:49 
健康 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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