2018年02月12日

そう遠くない将来に、藻類を利用して石油を作る時代になる。藻類エネルギー技術開発を率先すれば、日本は世界を先導できる。

「深井有著:
地球はもう温暖化していない、科学と政治の大転換へ、平凡社、2015年」は参考になる。CO22削減の国家プロジェクトに参画した自分にとって共感できる記述も多い。「第4章:今後とるべき政策を考える」の「3.物理学者の見る地球温暖化問題」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.新しいエネルギー技術は一朝一夕にできるものではない。CO2排出削減のキャンペーンに踊らされて太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が急がれているが、これらの多くは技術として未熟であり、経済性も劣っている。なかには設備や輸送に要するエネルギーを考慮すると、全体としてエネルギーを消費してしまうものもある。誤ったキャンペーンに惑わされることなく、人類の将来を見据えた技術開発に取り組むべきである。
2.大気中のCO2からエネルギーを作り出すのは、新しいバイオマスエネルギーの開発である。これまでのバイオマスエネルギーは植物油や糖質・デンプンから作ったエタノールなどがあるが、次世代のエネルギー源としては藻類の作る炭化水素が本命である。
3.藻類とは、コンブやワカメのような海藻を思い浮かぶが、多種多様である。瀬戸内海に害をもたらす赤潮、富栄養化した湖に発生するアオコ等々、形態も生育場所も大きく異るが、すべて藻類である。光合成を行う生物の中で陸上の植物を除いたすべてが藻類である。
4.藻類は陸上植物に比べて数10倍から100倍も速く増殖し、1日でほぼ倍増する。これは水中では陸上植物のような身休を支える組織が必要でなく、ほとんどすべての細胞が光合成に参加できるからである。
5.藻類のなかには多量の油脂を作るものがある。このような藻類は陸上穀物の約200倍のエネルギーを生産することができ、現在、世界で石油として消費されているエネルギーを作らせるためには全耕地面積の2〜4%があればよい。
6.エネルギー源としての藻類の組織的な研究は、米国エネルギー省(DOE)による「水生藻類プログラム」(1978〜1996)が最初であった。オイルショックによって始められたこのプロジェクトは石油価格の沈静化によって打ち切られ、その後は藻類エネルギーへの関心は薄れたが、数年前から復活し、世界中で研究開発が進められている。
7.2010年に米国DOEから出された報告書「藻類燃料ロードマップ」には、藻類燃料は国を挙げて取り組むべきとして、今後の研究方針も詳述されている。この分野にはすでに10億ドルを超える国家予算が投入されており、さらに大きな研究投資がされようとしている。
8.わが国では筑波大学の渡辺信を中心とするグループが藻類の生態学に根ざした基礎研究から油を産生する種の採集・選別・培養に至る系統的な研究を行っていて、その成果は世界的な業績として評価されている。
9.彼らは油産生能力のとくに優れたボツリオコッカスとオーランチオキトリムという2種類の藻を発見して、その培養・利用法に取り組んできた。その油産生能力は、オーランチオキトリムは霞ヶ浦程度の広さ(2万ヘクタール)があれば日本全体の石油必要量を賄うことができる。
10.これらは植物油とは違って重油相当の炭化水素を作るので、そのまま石油の代替品をして使うことができる。渡辺グループは、つくぼ国際戦略総合特区や仙台市に藻類バイオマス実証プラントを建設するなど活発に活動していて、すでに大型実証プラントで作った油でトラクターや自動車を動かすことまで行っている。
11.2010年6月には藻類産業創成コンソーシアムが設立されて、技術開発、調査、情報交換などを通じて藻類産業の早期確立を目指している。最近では多.くの企業や大学・研究所が参入して技術開発が進められつつあり、雑菌に強いボツリオコッカス株の培養や、油分離を容易にする培養技術の開発など、大きな進展が見られている。
12.2013年には大手重工業数社のチームがボツリオコッカス株を使った燃料工場を東南アジアかオーストラリアに建設する計画を発表した。またユーグレナ社はいすず自動車と共同で、ミドリムシの作る油でディーゼル車を走らせるプロジェクトを始めた。ミドリムシは光合成をする、植物とも動物ともつかない生物で、生産効率は高くはないが軽油相当の油を作る。
13.今のところはまだコストが高く、ガソリン1リットル換算で500円を超えるので広く実用化されるには至っていないが、藻類の作る油が液体燃料として石油用インフラにそのまま載せられるメリットは大きいので、いずれは次世代のエネルギーの本命となるに違いない。実際、次世代を睨んでの諸外国の開発競争は激しく、大型の国家プロジェクトに支えられて研究が進められている。
14.日本政府の意識は低くて、国策がいちじるしく遅れている。そう遠くない将来には、地球が作った石油をとる時代から、藻類を利用して石油を作る時代になる。その流れを適切に見定め、藻類エネルギー技術開発を率先して進めることができれば、日本は世界を先導する国として大きく発展していく。
15.これはエネルギー自給率4%を打開する、たぶん唯一の方策である。これに日木の将来が懸かっていると思えば、どれほど投資をしても惜しくはない。このエネルギー技術を日本のものとして確保し、将来に向けて育てていくためには、今こそ国が思い切った投資をしなくてはならない。CO2削減とか温暖化防止とか、に無駄金を使っているときではない。


yuji5327 at 07:02 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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