2018年02月15日

新しい産業は、競争を通じて誕生する。生き残ったものが日本経済の主力産業になる。政府は介入すべきではな、規制緩和を通じて、市場の競争メカニズムを発揮させることである。

「野口悠紀雄著:
日本経済入門 (講談社現代新書)
野口 悠紀雄
講談社
2017-03-15

日本経済入門、2017年、講談社」は参考になる。第11章:新しい技術で生産性を高める」の「新しい技術進歩をリードする企業が日本にない」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本が強いのは古いタイプの技術であり、情報技術に弱い。2016年の秋頃まで、アメリカ企業の時価総額ランキングで、5位まですべてIT関係の企業で、ドナルド・トランプ氏が勝利し、金融、エネルギー関係の企業の株価が上昇したため、順位が若干変った。これらの企業を総称したGAFAで、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのことで、中国のアリババを加えて、GAFAAと呼ばれることもある。
2.これらの企業は、新しい情報技術をもとに、新しいビジネスモデルを開発し、従来の企業を乗り越えた。従来の企業が担当していた分野を塗り替えている。アップルは製造業ではあるが、iPhoneという新しい製品を開発し、世界的水平分業という新しい生産方式を確立して、新しい製造業のビジネスモデルを切り開いた。
3.グーグルは、広告収入によって支えられているので広告業だが、検索連動広告という新しい広告方式を用い、従来の広告代理店とはまったく異なるビジネスモデルを確立した。フェイスブックも新しいタイプの広告業で、SNSという新しい方式で個人情報を集め、それをもとに広告を行なっている。アマゾンは、流通業だが、ウェブショップであり、従来の流通業とはまったく異なるビジネスを行なっている。これらの企業のほとんどが、20年前にはなかったか、零細企業だった。IT革命の勝者で、過去20〜30年程度の期問のアメリカ経済の成長は、こうした企業の成長に支られてきた。
4.これらの企業は、ビッグデータを手に入れられる世界で数少ない企業である。AIはビッグデータを用いるので、ビッグデータを取得できる企業が、そのデータを活用することによって未来を開く。
5.アメリカの学生の就職での人気企業は、しばらく前から、伝統的な大企業ではなく、GAFAに代表されるハイテク企業に移っている。日本にこうした企業が登場しなかったことが、失わ九た20年の基本的な原因である。日本の企業で類似のものは、楽天、ソフトバンク桿度しかない。先進国の命運を決めたのは、このような流れに対応して産業構焔を情報分野中心に切り替えたか、製造業に執着したかである。切り替えられたのがアメリカ。イギリス、アイルランドなどであり、切り替えられなかったのが、日本と欧州大陸の諸国である。
6.GAFA企業は、これまでの技術革新をリードしてきた。しかし、このグループの企業はすでに巨大化し、マーケットを支配している。技術革新がこのグループから引き続き出てくるかは、疑問である。
7.世界は、GAFAの時代からさらに先の、ユニコーン企業の時代に進みつつある。ユニコーン企業とは、未公開で時価総額が10億ドルを超える企業で、「あり得ない企業」という意味である。例としてはUber(ウーバ)がある。これは、スマートフォンを用いて、いつでもどこでも簡単にタクシーを呼ぶことができる配車アプリで、株式はまだ公開され
ていないが、その企業価値は約6兆円と推計されている。この額は、日本の代表的な
運輸企業の日本航空や全日空やJR東日本を凌ぐ。
8.Airbnd(エアビーアンドビー)は、民泊を仲介するスマートフォンのアプリで、時価総額は3兆円を超え、世界最大のホテルチェーンのヒルトン・ワールドワイドを約3割上回る。登録物件数が230万件あり、これは、ヒルトン、マリオット・インターナショナル、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループの3大ホテルチェーンの客室数の合計を上回る。
9.フィンテックと呼ばれる分野が急成長している。ITを金融業務に活用する新しい技術で、この分野で最大の企業であるPayPalの時価総額は約6兆円であり、みずほホールデイングスとほぼ同規模です。ユニコーン企業の多くはアメリカ企業だが、最近では中国にもITを駆使して斬新なサービスを提供する企業が続々と生まれている。
10.ユニコーン企業のリストが作られている。フォーチュンが作成するリストによって国別に見ると、アメリカ100社、中国36社、インド7社、イギリス7社、ドイツ5社、シンガポール3社、韓国2社、フランス1社などであるが、日本はゼロである。
11.分野別に見ると、ウォール・ストリート・ジャーナルでは、全産業で149社を挙げ、ソフトウエア、消費者向けインターネット、eコマース、金融、ヘルスケアの分野で、全体の約83%を占めている。、ユニコーンによる技術革新は、GAFAとほぼ同じ方向であり、日本が弱い分野である。ユニコーン企業が日本に生まれない原因は、規制緩和が進んでいないことである。Uberが成長したのは、アメリカのいくつかの州では、白タクが認可されていたためである。Uberのサイトに登録しておけば、一般ドライバーでも客を乗せて走れるようになり、移動手段に変革がもたらされた。日本では白タクは法律違反となるため、Uberのサービスは成長できない。
12.Airbndも日本では民泊は旅館業法に触れる。規制は徐々に緩和されつつあるが、十分ではない。金融業界に技術革新をもたらすフィンテックを日本に導入しようとすると、壁はさらに高くなる。銀行はきわめて強い産業であり、スタートアップ企業が簡単に新しい金融サービスを提供できない。
13.政府の成長戦略には、決まり文句のように「規制緩和」と言うが、表面的なもので、既得権者の利益を覆すことではない。社会を変えるためには、新しいサービスや新しい事業主体が必要だということを、国民が認識しなければならない。
14.新しい産業は、市場における競争を通じて誕生する。生き残ったものが日本経済の主力産業になる。政府は、産業構造再編の過程に介入すべきではない。政府がなすべきは、規制緩和を通じて、市場の競争メカニズムを発揮させることである。
15.安倍内閣は、「地方創生」を打ち出し、「地方活性化を経済政策の最優先目標にする」としているが、地方の反応は、私の町にも国が施設を造ってほしい、というのが多い。地方振興とは、国か何かをやってくれるのを待つことではない。地方の人々が工夫し、努力することで、必要なのは、地域のやる気と、何をやるかというアイディアである。




yuji5327 at 09:48 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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