2018年05月31日
ヨーロッパは今、「反移民」と「反EU」が席捲している一方で、逆の動きがある。ブレグジヅトも同様で、イギリスのEU離脱後、欧州各国で残留派が5%増えている。
「遠藤乾(北大教授)、水島治郎(千葉大教授):大衆のマグマは、日本にも溜まっている、中央公論、2017.MAY」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.イギリスの国民投票でEU離脱が決まり、11月にアメリカでトランプ大統領が選出された。ヨーロッパ、アメリカで確認されたのは、ポピュリズム勢力が支持を伸ばしたということ。3月にオランダ下院選挙が行われ、フランス、ドイツと国政選挙が続いた。
2.オランダは、2017年の欧州各国が注目を集めている。1月段階では「反EU・反移民」を掲げるポピュリズム政党、自由党が第一党になることが予想されていたが、アメリカでトランプ大統領が就任後、自由党の支持率が徐々に低下していった。トランプはやりすぎだ、とオランダ国民が思うようになったことが要因のようである。
3.現首相ルッテが率いる自由民主国民党(以下、自民党)は、1月に新聞広告を出し、イスラム移民を意識して「オランダの価値に合わせることができない者たちは出て行け」と訴えた。既存の与党が「反移民・反イスラム」に舵を切った。それによって、自由党に投票すべきか迷っていた有権者の一部が自民党に流れた。
4.自由党は12議席を20議席に伸ばしつつも、40議席から33議席に減らした与党・自民党に第一党の争いに敗れた。自民党の「反移民」への転換が、選挙戦略として奏功した。自民党と連合政権を組んできた中道左派の労働党は、35議席から9議席と大幅減になった。再分配政策が看板の労働党だが、政権にあって緊縮財政を実施したため不信を買い、票が「緑の党」などに流れた。
5.注目すべきは、EU支持の政党が伸長したこと。与党・自民党は、自由党と同じ「反移民」路線に振れた一方で、欧州統合の歩みを大切にする。同様に親EU、"プロ・ヨーロッパ"の中道左派「D66」や「キリスト教民主アピール」も票を伸ぽした。、オランダでは、両極化と多党化が同時進行しつつ、反EUのうねりは起きなかった。
6.投票率が82%と、国民の関心が非常に高い中でこの結果になった。自由党は若年層にも高齢者にも一定の支持がある。中でも、低所得で、都市部より地方、ウィルダースの出身地である産業の衰退した南部などに多い傾向がある。現状の政治に不満を持つ人々の声を集めた。
7.自民党と労働党からなる現在の左右大連合政権は、今回の選挙で議席を半減させた。与党が議席を半減させるのは、オランダ史上例外的で、財政緊縮政策によって社会保険料が値上がりする一方で、年金など福祉給付が切り詰められ、現政権への不満とが溜まっていた。不満を掬ったのが必ずしも自由党ではなく、D66やキリスト教民主主義政党。これまで議席の少なかった環境左派「緑の党」が、若きリーダーを戴いて都市の若年層の支持を集めて躍進した。
8.労働党は、右派の自民党とともにここ5年ほど政権党についていたが、緊縮政策を続けた結果、支持基盤が離れた。労働党に対する不信感で、票が他の左派野党に回った。
9.ヨーロッパは今、「反移民」と「反EU」という強い言葉が席捲している一方で、それと逆の動きが顕在化してきた。ブレグジヅトについても同様で、イギリスのEU離脱の国民投票後、欧州各国で残留派が5%くらい増えている。ユーロの緊縮財政の中で反EUの感情が高まる一方、イギリスの状況を見て、頭が冷やされた。
10.オーストリアでは大統領選挙が行われ、移民排斥を謳う極右候補者がリベラル候補者を猛追した。5月に決選投票し、0.7%差でリベラル候補者の勝利となったが、開票作業に不正があったとして極右支持者が猛反発。12月にやり直し選挙が行われた。極右元首の誕生かとも言われたが、6月のブレグジットを見て、票が動いた。最終的にはリベラル派が7%差で勝利した。
1.イギリスの国民投票でEU離脱が決まり、11月にアメリカでトランプ大統領が選出された。ヨーロッパ、アメリカで確認されたのは、ポピュリズム勢力が支持を伸ばしたということ。3月にオランダ下院選挙が行われ、フランス、ドイツと国政選挙が続いた。
2.オランダは、2017年の欧州各国が注目を集めている。1月段階では「反EU・反移民」を掲げるポピュリズム政党、自由党が第一党になることが予想されていたが、アメリカでトランプ大統領が就任後、自由党の支持率が徐々に低下していった。トランプはやりすぎだ、とオランダ国民が思うようになったことが要因のようである。
3.現首相ルッテが率いる自由民主国民党(以下、自民党)は、1月に新聞広告を出し、イスラム移民を意識して「オランダの価値に合わせることができない者たちは出て行け」と訴えた。既存の与党が「反移民・反イスラム」に舵を切った。それによって、自由党に投票すべきか迷っていた有権者の一部が自民党に流れた。
4.自由党は12議席を20議席に伸ばしつつも、40議席から33議席に減らした与党・自民党に第一党の争いに敗れた。自民党の「反移民」への転換が、選挙戦略として奏功した。自民党と連合政権を組んできた中道左派の労働党は、35議席から9議席と大幅減になった。再分配政策が看板の労働党だが、政権にあって緊縮財政を実施したため不信を買い、票が「緑の党」などに流れた。
5.注目すべきは、EU支持の政党が伸長したこと。与党・自民党は、自由党と同じ「反移民」路線に振れた一方で、欧州統合の歩みを大切にする。同様に親EU、"プロ・ヨーロッパ"の中道左派「D66」や「キリスト教民主アピール」も票を伸ぽした。、オランダでは、両極化と多党化が同時進行しつつ、反EUのうねりは起きなかった。
6.投票率が82%と、国民の関心が非常に高い中でこの結果になった。自由党は若年層にも高齢者にも一定の支持がある。中でも、低所得で、都市部より地方、ウィルダースの出身地である産業の衰退した南部などに多い傾向がある。現状の政治に不満を持つ人々の声を集めた。
7.自民党と労働党からなる現在の左右大連合政権は、今回の選挙で議席を半減させた。与党が議席を半減させるのは、オランダ史上例外的で、財政緊縮政策によって社会保険料が値上がりする一方で、年金など福祉給付が切り詰められ、現政権への不満とが溜まっていた。不満を掬ったのが必ずしも自由党ではなく、D66やキリスト教民主主義政党。これまで議席の少なかった環境左派「緑の党」が、若きリーダーを戴いて都市の若年層の支持を集めて躍進した。
8.労働党は、右派の自民党とともにここ5年ほど政権党についていたが、緊縮政策を続けた結果、支持基盤が離れた。労働党に対する不信感で、票が他の左派野党に回った。
9.ヨーロッパは今、「反移民」と「反EU」という強い言葉が席捲している一方で、それと逆の動きが顕在化してきた。ブレグジヅトについても同様で、イギリスのEU離脱の国民投票後、欧州各国で残留派が5%くらい増えている。ユーロの緊縮財政の中で反EUの感情が高まる一方、イギリスの状況を見て、頭が冷やされた。
10.オーストリアでは大統領選挙が行われ、移民排斥を謳う極右候補者がリベラル候補者を猛追した。5月に決選投票し、0.7%差でリベラル候補者の勝利となったが、開票作業に不正があったとして極右支持者が猛反発。12月にやり直し選挙が行われた。極右元首の誕生かとも言われたが、6月のブレグジットを見て、票が動いた。最終的にはリベラル派が7%差で勝利した。