2018年06月05日
高性能な光触媒が登場しつつあることで、再生可能エネルギーによる水素供給の可能性が見えてきた。
「清水孝太郎(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員)著:化石燃料用いず水素を生産、人工光合成研究は日本が突出、エコノミスト、2018.6.5」は参考になる。印象に残った部分の概要の続きを自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.水素は、自然界でそのまま産出することはないため、事実上の化.右燃料である天然ガスを分解して得るか、化石燃料や原子力などから得られた電力で水を電気分解するぐらいしか方策がない。高性能な光触媒が登場しつつあることで、再生可能エネルギーによる水素供給にも大きな可能性が見えてきた。
2.人工光合成の2段階目は、光触媒で得られた水素と、工場などで発生する二酸化炭素を原料として、樹脂の原料を合成するものである。この取り組みは、二.酸化炭素の吸収源対策にも通じることから、地球温暖化対策の一つとしても期待されている。
3.水素と二酸化炭素を合成させる手法は、電圧をかけて化学反応を起こす「電気合成」や、酵素などを触媒に用いるものなど多様だが、いずれも小規模実験のレベルだが、期待の持てる研究も進んでいる。
4.12年に経済産業省が開始した先述の「人工光合成」プロジェクトは、ARPChemが21年度まで政府研究開発プロジェクトとして進める。このプロジェクトでは、光触媒で塗産された水素と二酸化炭素とを反応させ、樹脂原料となるエチレンC2H4〕、プロピレン〔C3H6〕、プテン(C4H8)などのオレフィン(不飽和炭化水素)の合成を目指している。
5.実現すれば、これまで排出抑制の対象とされてきた発電所や工場などから発隼する二酸化炭素を、樹脂原料に利用することが可能になる。現在、日本は、ナフサやシェールガスといった樹脂原料は海外からの輸入に頼らざるを得ないが、輸入に依存することも少なくなる。
6.人工光合成の研究は、日本が世界で突出している。草分けはトヨタグループの豊田中央研究所である。11年、可視光の太陽光エネルギーを利用しながら、水中で二酸化炭素を有機物(蟻酸、CH2O2)、に変換する技術を開発した。蟻酸は水素貯蔵材料として持ち運びも可能だ。その蟻酸を、水と二.酸化炭素を基.に生産できる技術原理を明らかにしたことは意義深い。
7.パナソニックは13年、太陽光エネルギーを利用して二酸化炭素と水から蟻酸、また都市ガスの主成分であるメタン〔CH4〕を合成する技術を公開した。昭和シェル石油も二.酸化炭素からメタンやエチレンの合成に成功した。東芝は 二酸化炭素からペットポトルなどの.原料となるエチレングリコール〔C2H6O2〕の生成を試みている。
8.戸建て分譲住宅販売の飯田グループホールディングスは、大阪市立大学と連携しながら、二.酸化炭素を消費して水素燃料を生み出すという「1Gパーフェクトエコハウス」構想の実現を目指している。人工光合成で得られた蟻酸を基に水素を発生させ、これを燃料電池に通せば、家庭で必要な電力をまかなうことができる。
9.人工光合成は、地球温暖化対策として、また自国における資源開発プロジェクトとして大いに期待される。現在の光触媒には、エネルギー変換効率や耐久時間では課題があるものの、実現すれば究極の「無炭素社会」を体規するキーテクノロジーとなるだろう。