2018年06月07日

EVを長く走らせるには電池容量増大が必須で、そのためには負極材の改良が有効である。世界シェアトップの日立化成を筆頭に、新型負極の開発競争は激しくなっている。


「広木功(化学工業日報編集委員)著:電池材料の開発競争、EV航続500km目指し電極も電解液も次世代品に、エコノミスト、2018.6.5」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.電気自動車(EV)をはじめとするエコカーの普及によって、充電で何度も使うことができる「2次電池」の需要が急速に拡大している。2次電池の中でサイズ・重さ見合いでもっとも高性能なのがリチウムイオン2次電池(LiB〕である。
2.LiBは正極材、負極材、電解液、セパレーターで構成される。LiBを外部電源につなぐと、金属酸化物でできた正極からリチウムイオンが抜け出し、電解液を通って負極に到達し蓄積される。これが充電である。負極から放出されたリチウムイオンは電解液を経由して今度は正極に移動(放電)する。これによって電流を外部に取り出すことができる。
3.EV業界では、航続距離〔1回の充電で走行できる距離)競争が激化している。現在.最先端に位置するのは航続距離200km台後半〜300km台の電池だが、今後は500kmを目指した技術開発が進む。現状LiBでは最高の条件でも400kmがせいぜいであり、高いエネルギー密度の次世代電池が切望されている。
4.その有力候補には、電解液を固体にした「全固体電池」や、正極に空気中の酸素、負極に金属を使う「金属空気電池」などがある。いずれもEVの走行距離を大きく延ばせる大容量化が可能だか、実際にエコカーに搭載し、量産するには安全性や信頼性の担保などに10年はかかりそうである。それまではLiBの改良が進められる。
5.EVを長く走らせるには電池容量増大が必須で、そのためには負極材の改良が有効である。世界シェアトップの日立化成を筆頭に、新型負極の開発競争は激しくなっている。現状は主に黒鉛負極が使われているが、放電容量が理論限界の1kg当たり約370AHにまで近づいている。そこで、より多くのリチウムイオンを蓄えられるシリコンやリチウムといった金属系に注目が集まる。
6.スマートフォン向けなどの小型LiBでは、パナソニックやマクセルホールディングスが黒鉛にシリコンを混ぜた負極を製品化しているが、エコカーにはまだシリコン含有負極材は搭載されていない。電極と言えるのは、黒鉛の10倍以上の大容量を可能にする金属シリコン負極である。
7.金属では、リチウムが固体となって析出し、樹脂状に成長する「デンドライト」が課題で、デンドライトが成長すればセパレーターを貫通し短絡する。これを防ぐ技術など、全電池材料を総合的に見直さねばならない。
8.LiB性能を高めるには、すべての部材の改良が同時に必要になる。正極材は百花線乱の状態から、次第にニッケル成分の多いニッケル、マンガン、コバルトなどの「ニッケルリッチ材料」に集約されつつある。これらの物質は、エネルギー密度を高めるだけではなく、適正価格で安定調違を続けやすいというメリットが大きい。
9.貴金属や触媒を扱うベルギーのユミコアや独BASFと戸田工業の合弁会社はそろってニッケルリッチ正極材料の大増産を図っている。LiBはエネルギー密度を高めて大容量化するほどに異常発火などのリスクが高まる。
10.トヨタ自動車が、可燃性の有機溶剤を使う電解液をなくし、固体電解質への転換を急ぐ理由である。しかし固体電解質は硫化物系、酸化物系ともに、まだ材料探索中である。このため既存の電解液が今後も相当長く使われると思われる。
11.電解液は溶媒に電解質〔LiPF6)を溶かしたもの。エコカー向けは、これに添加剤を入れて、難燃性や、気温が低い時の始動性などの機能を付加する。この添加剤のノウハウが差別化につながる。電解液大手の三菱ケミカルと宇部興産はこうしたノウハウに長けており、最大市場の中国における電解液事業を統合し、今年からEV向け需要を本格的に開拓する。
12.安全面では、セパレーターの役割もさらに大きくなる。セパレーターは、イオンが正極・負極間で円滑に移動できる伝導性を確保しつつ、正負極が直接接触するのを防ぐ絶縁の役割を果たす。
13.セパレーターには、カスタマイズしやすい湿式と、コスト力に勝る乾式の2つがある。世界シェアトッブの旭化成は、湿式に強かったが、2015年に乾式セパレーター大手の米ポリポアを約2640億円で買収し、エコカー市場でのシェア拡大に意欲を見せる。東レも韓国でセパレーターフィルムの生産能力を増強する。
14.乾式であれ湿式であれ、メーカーが目指すのは安全性の確保である。セパレーターのべ一スはポリオレフィン系微多孔膜だ。メーカーは、この膜にセラミックやアラミド樹脂を薄く塗布して耐熱性を高める技術開発を進める。旭化成、東レの2強に次いで存在感を示す住友化学は、米テスラ向けにアラミド樹脂塗布タイプの耐熱性を高めたセパレーターを供給している。


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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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