2018年09月08日
有各大学に入学すれば、勉強しなくなる。就職した後は、人間関係が重要と考える。日本経済停滞の大きな原因は、勉強が大学入試までで終わってしまうことである。
「野口悠紀雄著：超独学法、AI時代の新しい働き方へ、KADOKAWA,2018年7月10日」は参考になる。「第10章人工知能の時代に独学の必要性はたかまる」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
１．ブロックチェーンを用いて、個人の生涯にわたる学習履歴を記録するプログラムが開発されている。その1つが、Learning is Earningでは、学校教育のみならず、コミュニティカレッジや個人から教えられたことも対象にする。そして、ブロックチェーンに記録したデータを、就職などのさまざまな機会に活用できるようにする。
２．就職の際に、学歴や学校の成績のほかに、TOEICなどのテスト業者が行う試験結果が参照されることはあるが、それらは、アドホックに参照されているにすぎない。それをシステマティックに利用しようというものである。大学入試の際に高校の内申書は参照されるが、参考資料程度でしかなく、学校以外の教育は参照されない。それらは、信頼できるデータにはなっておらず、かつ簡単に処理できる電子的なデータとして統一されていないからである。
３．日本の大学は、いったん入学してしまえば、成績が悪くても途中で振り落とされることはなく、卒業できる。したがって、有各大学に入学すれば、人生のパスポートを得たように錯覚し、勉強しなくなる。これでは、勉強する意欲はわかない。生涯学習の必要性が言われるが、勉強したことに対する報酬がなければ、インセンティブは生じない。だから、就職した後は、勉強するよりは、上司に取り入ったり職場の人間関係を円滑にすることのほうが重要と考えられるようになる。日本経済停滞の大きな原因は、勉強が大学入試までで終わってしまうことだが、それが変わりつつある。
４．このシステムを奨学金に結びつけることもできる。将来有能と見込まれる学生に、投資家が投資をする。奨学金制度を市場で運営するというアイデアは、昔から経済学者が夢見ていたが、評価が難しいので、実現できなかった。それが原理的には可能になる。
５．Learning is Earningという言葉は、学習を収入に結びつける実利主義のようだが、個人の能力が数字で表すことは、コネ・縁故・情実などで就職が決まることに比べればずっと透明でずっと公平である。これまで、本当に能力のある人が評価されず、たまたま社会的地位の高い家庭に生まれただけの理由で多くの利益を受けるようなことが多かった。そうした不公平がなくなることは、採用側としても望ましいことである。
６．コンピュータは、これまで人間がやってきたことを代替する。AIとブロックチェーンが人間の仕事を奪う。専門家や経営者の仕事も安泰ではない。こうしたことはこれまでもあった。例えば産業革命がそうだった。今回はもっと影響が大きいが、そうした時代になっても人間のやることはなくならない。ある種のことについては、コンピュータの能力は、人問より高い。囲碁もチェスもそうである。こうした分野では、人間がコンピュータと張り合っても無駄で、ても勝てないのと同じことである。
７．すべてのことで人間が劣るのでは決してない。現在のAIは、すべてのこで人間と同等のことをできるわけではない。AIができるのは、特定の分野にかぎられ、「特化型AI」と言う。多くの人がAIについて持っているイメージは、「汎用AI」で、人間以上の感覚と判断力を備え、人間と同じように考えるコンピュータである。これは、「スター.ウォーズ」の「C-3PO」など、SFや映画の中に出てくるAIであるが、人類はそれらを実現できていない。
８．重要なのは、AIが単純作業を代替することによって、価値が高まる人間の仕事もあるということである。どこに人間の仕事を見出していくか、を問い続けることが必要である。
