2018年10月06日

米国にしても中国にしても、政府関係者が21世紀の経済=ボーダレス経済を全く理解していないから、愚かな「報復合戦」が繰り広げられている。

2018/10/5付けの「 大前研一 ニュースの視点 」(発行部数 166,219部)は、「米通商政策/日米貿易/米韓関係/米中貿易戦争〜中国がトランプ大統領の関税制裁に報復するべきではない理由とは?」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日経新聞は先月24日、「通商は大統領に聞いてくれ」と題する記事を掲載した。米トランプ政権の閣僚が重要な通商交渉を任されても、トランプ氏の胸三寸でちゃぶ台返しにあうと紹介。8月から始まった日米経済協議でも政権の担当者であるライトハイザー氏が
「案件は大統領に聞いてくれ」と述べたとのことで、トランプ氏との間合いを心得ているはずの安倍首相にとっても通商問題は視界不良としている。
2.今回は安倍首相もちゃぶ台返しにあった格好である。トランプ大統領は通商を自分の「おもちゃ・面白い道具」として使っているに過ぎない。それを使って「ディール」を引き出すことが目的である。
3.例えば中国をいじめる「道具」として使う一方で、習近平国家主席と直接会談したときには急に態度を軟化させて、自分に有利な「ディール」を成立させようとする。ムニューシン米財務長官やライトハイザー氏が事前に調整していたとしても、最後はトランプ大統領次第である。これでは二人とも本気になって取り組んでも意味がないと思う。
4.日本ではライトハイザー氏と茂木経済再生担当相が相対しているが、結局はひっくり返る可能性がある。トランプ大統領は通商を「道具」として使っているだけで、本当の「通商」を理解していない。中国との関係では、今は喧嘩している場合ではないが、わかっていない。また、日本が過去25年間、米国で何をやってきたのかも知らない。
5.そういうことを何も知らないまま、相手国に難癖をつけて1つでも2つでも新しい「ディール」を引き出し、それをアピールする。トランプ大統領の興味はそこにしかなく、そんな大統領とまともに付き合ってもしょうがない。
6.トランプ大統領に、また日本が振り回されている。安倍首相は先月26日、米トランプ大統領と会談し、農産品などの関税を含む2国間の「物品貿易協定」(TAG)の交渉を開始することで合意した。これはモノの輸出入にかかる関税に関して定める協定で、投資やサービスの自由化にも範囲が及ぶ自由貿易協定(FTA)とは別で、日本政府の説明では、協議中は米政府が自動車への追加関税は発動しないことで一致したというが、それは嘘である。ライトハイザー氏は米国の記者に対して「これはFTAのこと」だと説明している。
7.日本は二国間協定(FTA)を受け入れられない姿勢を見せているから、表面的には二国間協定ではないと言いつつ、日本を引っ張りだしている。今回のTAGは「モノに限られた」物品協定ということだが、そこで止まるわけがない。茂木経済再生担当相は農畜産物の関税に関して、TPPの水準以上の譲歩はしないと発言しているが、TAGがこのまま終わると考えるのは難しい。
8.トランプ米大統領と韓国の文在寅大統領は先月24日、米韓自由貿易協定(FTA)改正案に署名した。米国仕様の自動車を韓国で販売できる台数をメーカーあたり年5万台に倍増するなど、自動車を中心に米国の要求を反映。韓国のウォン安誘導を禁じる「為替条項」について、競争的な通貨切り下げを禁じるなど強制力のない付帯協定も加えた。
9.これもほとんど意味がないことで、トランプ大統領に呆れる。文在寅大統領としては、トランプ大統領に花を持たせるために、今回は全てを妥協して受け入れた形をとったが、実際には、韓国側が困ることはほぼない。
10.これまでも米国仕様の車を韓国仕様にすれば、韓国国内で販売することはでた。これまでのFTAでは「米国仕様」の車を販売できる上限を2.5万台に定めていた。今回はその上限台数を「5万台に倍増させた」というのが、トランプ大統領に言わせれば「ディール」なのである。そもそも韓国において「米国仕様」の車は2.5万台すら売れていない。上限台数を5万台にしたところで、「米国仕様」の車の販売台数が伸びるわけではないから、何の意味もない。韓国側では影で笑っていると思われる。茶番劇もいいところで、これがトランプ大統領の「ディール」だから、いい加減にしてほしい。
11.トランプ米政権は先月24日、対中制裁関税の第3弾を発動した。約22兆円相当の中国製品に10%の追加関税を課すものだが、中国政府も即座に報復関税を発動した。これにより両国の貿易戦争は、互いの輸入品の5割〜7割に高い関税を課す危険水準に入った。。
12.トランプ大統領は、2019年1月1日以降はを25%に引き上げる予定であり、最終的にはその対象を中国からの輸入全体に適応すると、中国を脅している。中国からの輸入総額は約60兆円だから、そうなれば米国政府は10兆円を超える税収増になる。
13.これにより、トランプ大統領による富裕層優遇の減税で減った財源を米国は取り戻すことができる。この税収増加分は、一般の米国民が中国からの高い輸入品を購入することで支払うことになるが、国民の中に気づいている人は少ない。トランプ大統領が仕掛けた「トリック」である。
14.それほど高い関税になるなら、米国内で生産するほうが割安なモノが出てくると思う人もいるかも知れないが、25%程度であれば、その対象となる商品は少ない。製造する中国企業にしても、インフラ整備、自動化も進めているため、簡単に他国へ移すことは出来ない。25%の高い関税をかけられても、中国で生産したものは今まで通り米国へ輸出され、米国内での生産に切り替わるわけでもないので、何も変わらず今まで通りである。この関税率の引き上げは「中国に対する制裁」にはなっていない。
15.自らを英雄のように見せるトランプ劇場に目をくらまされているだけで、結局高くなった商品を買って割りを食うのは米国の消費者である。こうした事実を理解していれば、中国側の態度も変わってくる。わざわざ報復する意味などないからである。むしろ、「米国が苦しむのを見ろ」「これは中国への制裁ではなく、米国の消費者への刃だ」と言えば良い。米国民がいずれトランプ大統領に仕掛けられた「トリック」に気づいて、「トランプは何をやっているんだ」ということになる。
16.米国にしても中国にしても、政府関係者が21世紀の経済=ボーダレス経済を全く理解していないから、愚かな「報復合戦」が繰り広げられている。パウエルFRB議長などは、このままだと米国がインフレになるのは間違いないと分かっているので、早速予防の動きを見せている。


yuji5327 at 07:08 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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