2018年10月10日

アメリカの住宅価格パブルがなかったら、トヨタは、あれほどの躍進はできなかった。トヨタの利益が年々驚ぐべき勢いで増加したのは、アメリカの住宅価格パブル抜きには考えられない。


「野口悠紀雄著:米国の住宅価格バブルと日本の景気回復の関係、週刊ダイヤモンド、2018.10.13」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.リーマンショックで輸出産業が壊滅的な打撃を受けた。その理由は、当時の日米経済による。日本では、1990年代の末に金融機関の破綻が相次ぎ、経済全体が大きく落ち込んだ。株価は、2003年の初頭まで変動を繰り返しながら下落した。日経平均株価は、95年末に1万9868円となり、02年1月末には9000円台にまで下落した。その後、02年の末には8579円まで下落した。
2.こうした状況に対処するためさまざまな政策が取られ、金融政策では、99年にゼロ金利政策が、01年に量的緩和政策が導人された。もつ一つは直接的な為替介入である。90年代後半から始まった円売り・ドル買いの為替介入は、90年代後半の後も断続的に行われていた。
3.為替レートは03年初めには120円台まで上昇した。これによって、日経平均株価は、03年3月から4月には、月平均で8000円を割り込む事態になった。政府・日本銀行は、これを危機的な状況と捉えて反応し、03年1月から頻繁なドル買いを開始した。1〜3月の介入規模は、2兆3867億円に達した。介入はエスカレートし、その規模は前代未聞の大きさにまで膨張した。
4.ただし、03年から04年までは、これによって顕著な円安が進んだわけではない。大規模介入の効果は、円高の進行を食い止めたことである。当時、米金利は日本より高かった。それに加え、介入によって将来ドル安にならないという期待が形成されたため、円で借りてドルに転換し、アメリカに投資する取引が増加した。これは「円キャリー取引」と呼ばれる。
5.これによって、05年初めから傾向的な円安が進み、07年1月には1ドル=120円台にまでなった。日本では「心地よい円安」ということがいわれ、製造業の国内回帰が生じた。このころ、テレビ生産の巨大工場が次々に稼働した。04年1月にシャープの亀山第1工場が稼働し、06年8月に第2工場が稼働した。パナソニックの第2工場(茨木)が04年4月から、第3工場(尼崎)が05年9月から、第4工場(尼崎)が07年6月から稼働した。
6.アメリカに流入した資金の多くが、住宅ローンに充てられた。「住宅ローンの借り換
えによって生まれた資金で車を買う」ということが行われた。このメカニズムは、次のようなものである。10万ドルの家を全額住宅ローンで購人して、その住宅が2倍に値上がりし、金利が2分の1に低下しすると、新しい住宅価格の限度額いっぱいまで借り入れをして、元のローンを返却すれば、10万ルの現金が手元に残る。金利の支払いは前と変わらない。つまり、住宅価格が値上がりを続け、金融緩和が続くと、何のコストもなしに、現金が手元にのこるようなことが可能になった。これが、「キャッシユアウト・リファイナンス」と呼ばれた。そして、これによって得られた現金の多くが、新車の購人に充てられた。こうして、住宅の価格上昇が自動車購入を増やした。
7.自動車需要が全体として伸びる中で、とりわけトヨタ車が人気を集めた。シリコンバレーでは、街を走る車のほとんどがトヨタになってしまうという異様な光景があった。トヨタが伸びた理由は、トヨタ車は故障が少なく、ディーラーのサービスが充実していることなどによる。それだけでなく、円安によって日本車が割安になったことの影響も無視できない。
8.仮にアメリカの住宅価格パブルがなかったら、トヨタは、あれほどの躍進はできなかった。トヨタの利益が年々驚ぐべき勢いで増加したのは、アメリカの住宅価格パブル抜きには考えられない。
9.自動車を中心として日本の輸出が増大し、日本は外需主導型と呼ばれる景気拡大を経験した。日本の景気回復は、円キャリー取引によって支えられたものであり、その背後にはアメリカの住宅価格バブルがあった。日本の景気回復は、アメリカの住宅価格パブルによつて支えられたものである。アメリカの住宅価格バブルも、アメリカの事情だけで起こったものではなく、外国からの資金流入が支えていた。その中で、日本からの流入は重要な位置を占めていた。
10.日本の景気回復とアメリカの住宅価格バブルは、互いに他を強めながら進行したのである。住宅価格が下落を始めると、これら全てが逆回転を始めた。キャッシュアウト・リファイナンスの魔法が効かなくなり、自動車購人が急激に落ちた。
11.アメリカにおける自動車販売額の急減は、こうしたメカニズムで生じた。円キャリー取引でアメリカに向かっていた資金が日本に還流して、円高になった。これは、「円キ
ャリー取引の巻き戻し」と呼ばれる現象である。
12.ドル円レートの推移を見ると、07年6月には1ドル123円だったものが、08年3月には、すでに100円にまで円高になった。09年9月には90円になった。つまり、自動車需要が全体として急減し、しかも円高によって日本車の有利性が消滅したのである。こうして、二重の意味で、日本の自動車産業が逆風を受けた。アメリカ住宅価格バブルの崩壊によって日本の製造業が壊滅的な影響を受けた。
13.在庫の急増に直血した企業は、生産活動に急ブレーキをかけた。日本経済は、「自由落下」としか形容しようのない急激な落ち込みに陥った。秋にかけて、日本経済が極めて深刻な状況にあることを示すニュースが、次々に発表された。11月には、トヨタの利益が急減していることが明らかになったが、日本に危機意識は薄く、楽観論が支配的だった。
14.経験した実質経済成長率低下の最悪は1998年のマイナス2.1%だが、これを上回る事態がこれから生じる可能性は否定できない、と書いたが、当時の雰囲気では、これはまったくの異端的な見方だった。日本経済がマイナス成長に落込むことなどあり得ない、と考えられていた。
15.日銀の「経済・物価情勢の展望」は、09年度の実質国内総生産(GDP)の成長率を0.3〜0.7%としていた。結果的には、08年10〜12月期の実質年率成長率が▲8.9%、09年1~3月期が▲18・1%となった。


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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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