2018年10月14日

人口減少が避けられなければ、地域経済の縮小を避けなければならない。1人当たりの稼ぐカを高め、域外から稼ぎつつ、稼ぎを地域内で消費・投資する地域経済循環が必要である。


「田中信一郎(地域政策デザインオフィス代表理事)著:人口減少でも地域経済を成長「地域エネ政策」の長野モデル、エコノミスト、2018.1016」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本は、2008年から有史以来初の人口減少時代に突入している。08年に1憶2800万人のピークを迎え、現在に至るまで減少を続けている。国のシナリオの「60年に1億人」が実現しても、人口急減が続くことに違いはない。70年ごろまで急減が続き、その後、9000万人で定常化すると想定されている。
2.人口減少は、内需を中心とする地域経済に大きな影響を及ぼす、地域と運命を共にするガス、交通、金融、建設、小売りなどは需要縮小が避けられない。住民や自治体から見ると、地域経済の縮小は、どうしても避けたい。民間企業によって供給されている住民サービスの縮小・撒退を意味し.さらなる住民の流出を助長しかねない。
3.人口減少が避けられない現実だとすれば、地域経済の縮小こそ避けなければならない。1人当たりの稼ぐカを高め、域外から稼ぎつつ、その稼ぎを地域内で消費・投資する地域経済循環を形成することが必要である。
4.これまでの地域経済政策は、人口増加を前提にしてきた。自治体の主な政策は、増え続ける住民の雇用先となる企業を誘致することと、大企業の下請けとなる中小企業の資金繰りを支援することだった。
5.一方、経済構造の全体を俯瞰し、地域の資金収支を改善することには不熱心だった。自治体は、商工、農林、建設と縦割り化し、地域経済の一翼を担う健康福祉や教育などについては、産業としての視点を持っていなかった。
6.人口減少や資金収支という視点では、これらの政策は地域経済のさらなる衰退を招く恐れがある。雇用先でなく、働き手の不足が常態化するからである。そのため、自治体は経済政策の抜本的な転換を迫られている。従来の政策を継続すれば、縮小していく、雇用者と消費者の奪い合いを、域外資本と地域資本が繰り広げ、自治体が火に油を注ぐかたちになる。
7.その際、政策の見直しに加えて、地域エネルギー政策を確立することが重要になる。電気・ガス・燃料は、元をたどると石汕・石炭・液化天然ガス(LNG〕とほぽ海外産であ
る。消費と引き換えに、代金を日々、それらの産出国に支払っている。
8.地域エネルギー政策によって、エネルギーの利用の効率化と産出の地域化を促進すれば、その分だけ、資金収支が改毒する。例えば.地域の工務店に200万円で建物の断熱改修をしてもらい,毎年10万円の光熱費を減らしたとすれば、20年間で投質回収できる。これを工務店から見れば、顧客が200万円を域外に光熱費として支払う代わりに、新たな仕事を受注したことになる。同様に、燃料を地域産の木質チップに変更すれば、域外に流出するはずの燃料代が、地域の木材業者や森林組合へ行くことになる。風力や太陽光で発電した電気を大都市に売れば,域外から新たな収入を得ることにもなる。
9.長野県では、13年度から地域エネルギー政策を経済政策に位概付け、エネルギーと経済の好循環に取り組み始めている。同年度からの「長野県環境工ネルギー戦略」は、経済成長とエネルギー消費量・温室効果ガス排出量抑制の両立を目指している。
10.福島原発事故から半年後の11年10月から、筆者は長野県の任期付きの課長級職員として、5年間にわたりエネルギー政策に携わった。省エネ分野では、新築建物にエネルギー性能の検討を義務づけている。それと合わせ、建築事業者が施主に客観的な性能をデータで説明できるよう、評価ツールを普及した。例えば、建築費2000万円で年間光熱費20万円の住宅と、建築費2200万円で年問光熱費10万円の住宅のどちらを建てるか、施主は選べるようになった。
11.その結果、長野県の新築では、省エネ住宅の割合が大幅に増加した。国の省エネ基準を上回る新築戸建て住宅は、正確な統計はないものの、全国半均で3〜4割といわれる。16年の長野県調査では、8割を超える新築住宅が省エネ基準を上回っていた。
12.再エネ分野では、事業に取り組むスタートアップや中小企業を促進している。長野県内で再エネ普及を目指す産官学民のネットワーク組織「自然工ネルギー信州ネット」に、再工ネ事業に関心をもつ行政、中小企業、NPO、専門家、研究者、個人が参加し、再エネ事業に関する情報やノウハウを交換している。
13.その結果、再工ネ事業に取り組む事業者が県内各地に生まれている。例えば、「上田市民エネルギー」は、市民から小口の資金を集め、太陽光発電事業を展開している。18年5月現在、同県上田市を中心に.41ヵ所・600kWの設備を展開している.長野県は、18年6月に国から「SDGs〔持続可能な開発目標}未来都市」に選定され、地域エネルギー政策を活用した地域経済循環の強化に取り組み始めている。.
14.長野県の地域エネルギー政策は、大きな地域経済効果を生むと見.込れている。立命館大学のラウバッハ教授らの分析によると、長野県の再エネ目標(10年10万kW→50年300万kW)が達成された場合、50年までの累積で最大4400億円の付加価値が再エネ事業
を通じて生まれると試算されている。
15.この分析から、再エネ事業における資本・経営・資金の帰属の重要性が明らかになった。再エネ事業は、ほとんど雇用を産まないため、誘致しても固定資産税くらいしかメリットはない。けれども、利益を生まないわけでなく、利益の多くが事業所得になることが特徴である。つまり、地域の企業や住民が出資と経営を担い、地域の金融機関が融資したとき、地域への経済効果が拡大化される。出資・経営・融資のすべてを地域で担う手法を「地域主導型」と呼ぶ。一方、いずれも域外で担われる「外部主導型」では、地域への経済効巣は小さくなる。
16.長野県では、地域主導型の促進を方針とし、そのための支援策を積極的に講じてきた。信州ネットはその一環で、地域金融機関からの融資を後押しする補助金も設けている。こうした長野県の地域エネルギー政策は、地域固有の状況に依存するものでなく、全国の自治体に水平展開できるものである。
17.地域経済に資するエネルギー政策が現.実的になったのは、福島原発事故の11年以降である。再エネの固定価格買い取り制度が国会で成立し、再エネ発電で収益をあげることが容易になった。並行して、再エネ技術が安価になり、建築などの省エネ技術が高まり、地域エネルギー政.策の手法が確立した。それらが相まって、神奈川県小田原市や北海道ド川町、同ニセコ町など、同様の政策に取り組む自治体が、各地に増えつつある。


yuji5327 at 06:34 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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