2019年01月05日
中国国民は、中央政府の強力な統制から益を得ている。中国の発展には敬意を抱き、人口変動、教育、格差、グローバリゼーション、エネルギー・環境、個人・政府債務の問題がある。
![週刊エコノミスト 2018年12月25日号 [雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51q9lpxlN7L._SL160_.jpg)
「ロバート・J・ゴートン、インタビュー、発明の革命性は衰えた、世界の牽引役は中国へ移行、エコノミスト、2019.1.8」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1著書『アメリカ経済成長の終焉」では、米国が1871年からの100年間に「特別な繁栄」を体験したと指摘している。1870年代から80年代にかけ、「電気」や「内燃機関」など現代文明を可能にした数々の基本的発明が登場し、さらに1920年代になると派生の発明が数多く生まれ、生産性を飛躍的に増大させた。いわゆる「第2次産業革命」である。
２．30年代の大恐慌時代も発明は続き、同時期の生産性上昇は非常に力強かった。19世紀末から20世紀前半の発明が「革命的」性格であった理由は、食料、衣服、住宅、輸送、娯楽、通信、情報、健康、医療といった広範な領域で、人間の必要と欲求をほぼ網羅したからである。これらの発明は米国を「ほとんどが農村の社会」から「ほとんどが都市の社会」へと変えた。ここで重要なのは、この変化が1回限りのものであることである。
３．次の80年から2005年に起きた「第3次産業革命」すなわち紙からコンピューターへの移行やデジタル化は、前の革命のごく一部、特に娯楽、通信、情報分野の革命で、生産性に対する効果も限られていた。
４．第3次革命と比べても革命性に欠ける。その対象も19世紀末の発明と比べてかなり狭
い。さらに、第2次、第3次革命における発明の利益の大部分は、05年までに享受されていた。それゆえ現在の米国の成長率はさえないのである。
５．1929年から60年代にかけては高関税がかけられた輸入品への依存度が低かった。国内総生産(GDP)に占める輸入の割合は5%程度と、現在の17%に比べて少なかった。我々が使うモノはほとんど国内の生産でまかなわれ、生産性向上の成果も国内で受益されるものだった。
６．その後、自由貿易やグローバル化は消費者に利益をもたらし、米農家が世界市場に大規模出をすることを可能としたが、同時に雇用がメキシコやアジアに流出し、多くの地域で活気が失われた。今こそ政府の支援が必要である。敗者となった人々に再訓練を施し、より繁栄している地域へ転居するための補莇金を出すなどして、資源を再配分すべきである。
７．トランプ政権は保護主義を強め閉鎖経済を志向しているようである。良い面と悪い面がある。まず、先のブッシュ(子)政権やオバマ政権が放置していた、中国企業による米企業の知的財産権の侵害や、中国政府の米企業に対する技術情報開示の強制に対し、高関税で報復していることは自国企業保護という点では評価できる。一方、関税を上げれば消費者が支払う価格が上昇するだけである。インフレ圧力が高まり、それを抑えるために金利が引き上げられ、人々が高金利下で受託宅を購入しにくくなるなど弊害も多い。
８．大躍進時代を生んだ技術は「生産性」「賃金の改善」に貢献したが、現在のIT企業は収入を押し下げる要因になっている。確かに、生産性や賃金の改善の力は、以前の発明よりは弱い。しかし、労働者の待遇悪化は技術の問題ではない。問題は、�］�働組合の衰退、勘輸入増加、�グ槎荏�加、〔オートメーション化の進展、��.最低賃金の低下などにあり、それが今日の「大格差」杜会を生んだ。
９．90年代からは経営の唯一の目標が株の価値を最大化させる、ことに移り、経営陣の報醐が株価上昇にひも付けられるようになった。利潤のために、労働者の生活に関係なく工場閉鎖などが行われるようになった。現在の大格差社会の是正には、まず高所得層への増税が不可欠である。テクノロジー企業が競争を阻害しているとの批判がある。
１０．フェイスブックやグーグルが、より小規模の競合企業を買収して巨大化するのを、政府が介入して剛止すべきだ、との論は支持する。20〜30年前と比べ、同じ業界で競争する企業の数が減った結巣、集中が進み競争が減っている。これを政府が放置していることが問題である。
１１．米国の高成長が終わった今、世界経済の成長のエンジンは、当画は、中国が米国に取って代わるようになると考える。中国の人口は米国の4倍ある一方、1人当たりのGDPは米国の25%に過ぎない。生活水準で米国を追い抜くまでの道のりは長く、その分、成長の伸び代が大きい。中国は多くの産業において世界的な支配的地位を確立している。
自前の技術開発も目覚ましい。発展途上のインフラ建設では訴訟や抗議活動に阻害される心配がない権威主義的な手法で、経済を全体的に統制して肯定的な結果をもたらしている。
１２．中国国民は、中央政府の強力な統制から益を得ている。中国の発展には敬意を抱いている。米国経済の逆風として、�／邑�変動、��教育、�３丙后↓ぅ哀蹇璽丱螢次璽轡腑鵝↓ゥ┘優襯�ー・環境、�Ω朕諭�政府債務の問題を挙げている。2019年の先行きをどうみるか。11年からの8年間、持続させてきた高成艮から利益を享受する状態が続くだろう。減税効果で雇用の拡大と賃金の上昇が続き、消費がさらに増える。また、超党派でGDPの1.5%に相当する3000億ドル分の財政支出が追加されるだろう。
１３．株式市場はトランプ大統領就任前より30%も高い水準にある。そうした「富」が一部でも使われるなら、経済はより早く成長するが、20年になれば財政支出がなくなり、金利の上昇が株価を押し下げるだろう。また、これだけ雇用が引き締まってくると、労働力不足から賃上げぺースが加速し、インフレ率は2%の水準よりかなり上昇する。それに加えてトランプ政権の関税引き上げで物価も上がる。20年か21年に米国で景気後退が起こる確率はかなり高い。その時期は20年11月の大統領選の後になる。20年通年では成長がマイナスになることはない。
