2019年01月10日

プロファイリングやスコアリングが正確にできるようになれば、さまざまな場面で個人個人に合わせた対応が可能になる。

「野口悠紀雄著:匿名社会の問題をAIは克服するか?、週刊ダイヤモンド、2018.12.22.」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.人工知能((AI)によるプロファイリングやスコアリングの試みが広がっている。これは、個人や企業の属性を推測する手法である。この際、検索履歴やSNSのデータ、そしてプログ等を通じて発信されるデータなどが用いられる(これらは、ビッグデータと呼ばれる)。
プロファイリングやスコアリングが正確にできるようになれば、さまざまな場面で個人個人に合わせた対応が可能になる。
2.この技術が最初に用いられたのは、広告の分野だった。ユーザーの個性に合わせ、一人一人の好みに合わせた広告を出す。最近では、広告以外にもプロファイリングの応用が広がっている。
3.自動車にセンサーを搭載し、運転の状況によって保険料を変える自動車保険がすでに提供されている。また、血液検査などのデータから、保険金の支払いを自動的に変える保険も登場している。また、医師に代わって病気を診断することも試みられている。
4.選挙にも利用される。政治的なメッセージを、誰に対しても同じものを送るのではなく、個人に応じたものを送る。2016年のアメリカ大統領選挙で、フェイスブックのデータを用いて有権者のプロファイリングを行い、選挙運動に使われたと、18年の春に報道された。用いられたデータが不正な手段で流出したものであったために、大きな問題とされた。
5.ブロファイリングが選挙に用いられたのは、これが初めてではない。08年のアメリカ大統領選でも、フェイスブックのデータがバラク・オバマ陣営で用いられた。フェイスブック自身もその強力さに驚いたという。
6.中国では、顔認証技術を用いた特殊なサングラスを警察官が装着することが始まっている。これを用いて、今年の4月、南昌市のコンサートに集まった5万人の群衆の中から、犯人を発見、逮捕したと報道された。鉄道の駅では人身売買を行う犯罪者を見つけるため
に、また、空港では乗客確認のために、顔認証技術を用いているという。「木を隠すなら森の中」というが、中国では、この方法は通用しなくなった。
7.人間社会の原始的な形態である、規摸が小さいコミュニティーでは、誰もが他の人のことをよく知っていた。生活のあらゆる側面が筒抜けになっており、その人のことだけでなく、もっと前の世代のことまで分かっていた。ここでは、プロファイリングもスコアリングも顔認証も必要ない。プライバシーは、もともとないからである。こうした社会の息苦しさは、場合によっては耐え難い。
8.やがて誕生してきた都市は、そうしたコミュニティーからの脱出を可能にした。中世ドイツで、「都市の空気は(人間を)自由にする」といわれた。これは、もともとは、都市の城門内に逃げ込んだ農奴が一定期間後に自由の身分を得られたことを表したものだが、より一般的な意味で使われることが多い。つまり、都市の住民は匿名性を獲得できる。そして、匿名性は人間を自由にする。
9.現代社会では、個人情報の保護は、基本的な人権の一つと考えられるようになっている。ころが、匿名性は、経済活動においては問題となることが多い。取引相手が誰か分からなければ、信頼できるかどうか分からないからである。経済活動が大規摸化し、都市化が進展するとともに、この問題も深刻化した。
10.取引の相手方を知る必要は、昔からあった。ただし、伝統的な社会では生活圏が狭かったので、「評判」としてかなりの情報を得られた。都市化が進展して売り手と買い手の関係が希薄な大衆消費社会になり、交通手段の発達によって経済圏が拡大したために、こうした情報の入手が難しくなってきた。
11.市場の役割は、需要者と供給者を結び付けることだが、それが望ましい結果をもたらすためには、提供される財やサービスの質についての情報が得られる必要がある。アダム・スミスが市場の効率性を論じたときの大前提は、そうした情報がコストなしに得られるということである。
12.現実には、サービスの供給者はサービスの質についての情報を持っているのに対して、需要者は持っていないことが多い。例えば、タクシー乗り場でタクシーを待つ利用者は、これから乗るタクシーの運転手が優良運転手かどうかを知ることができない。これは、「情報の不完全性」あるいは「情報の非対称性」と呼ばれる問題である。ノーベル経済学賞受賞者のジョージ・アカロフは、このような市場を「レモンの市場」と呼んだ。そして、こうした市場では、財やサービスの質が低下していくことを示した。
13.このような問題に対処するために、古くから、さまざまな仕組みが考案された。商法など法制度の整備、不動産などの登記システム、格付けなどである。国際貿易では、遠隔地の相手と取引しなければならないので、信頼性の欠如は、とりわけ大きな問題だった。
このため、信用状などの手段が発明された。
14.消費者保護のために、規制当局が介入した。例えば、タクシーの場合、何も規制しなければ白タクが増えて、安全が確保できないし、法外な料金で暴利をむさぼられるかもしれない。そうしたことを防ぐために、一定の水準を満たすタクシー会社だけに営業を認める。
15.都市化が進展した後も、インターネットが普及する以前は、完全な匿名社会ではなかった。リアルネーム(日本では戸籍上の名前、アメリカでは出生証明書にある名前)が多
くの場合に確認可能であり、そのために、相互監視がかなりの程度は機能した。例えば、手形が裏書で転々流通するのも、相互監視の結果である。不渡りになれば、信用を失って商売ができなくなる。北欧諸国で脱税が少ないのは、日常生活で相互監視が働いているからだといわれる。
16.インターネットの利用拡大によって、リアルネームによる監視が難しくなった。サイバー空間では、各人が幾つもの人格をつくれる。それらが全て本人であるように振る舞える。経済取引でも深刻な問魎が発生する。相手が本当は誰か分からずに取引しなければならない。eコマースでは、これは大きな問題である。代金.を支払ったのに商品が発送されない。あるいは、商品は受け取ったのに代金.が支払われない、などの問題が発生する。
17.プロファイリングやスコアリングは、こうした事態に対応するために生み出されてきたものである。それは、匿名社会での問題を克服するために必要とされる技術なのである。こうした手法は、ブライバシー保護との関係で重大な問題がある。正確なブロファイリングを行えるようになれば、ブライバシーがなくなる。プライバシーを確保しつつ、匿名性がもたらす問題を克服できるかを世界はこれから大きな実験を行うことになる。

yuji5327 at 06:29 
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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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