2019年02月07日

ビッグデータが企業に経済的価値をもたらす理田は自明ではない。ビッグデータから経済的価値を引き出すには、特別な仕組みが必要である。


「野口悠紀雄著:ビッグデータはいかに価値を生み出すか、週刊ダイヤモンド、2019.2.9.」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.ビッグデータが経済や社会に大きな影響を与えるとして、注目を集めている。ビッグデータを収集し、それを活用できる企業が今後の経済活動を支配するといわれる。データや情報は昔から重要だった。あらゆる経済活動は、データの活用と密接に関連してなされてきた。
2.ビッグデータは、従来のデータや情報との違いは、ビッグデータとは、インターネットやスマートフォン、SNSなどの利用によって発信されるデータである。「誰がどんなキーワードで検索したか」というデータや、インターネットの地図を利用した履歴などである。これらのデータは、一つ一つを取れば、ほとんど経済的価値はない。また秘密にされているわけでもないので、ビッグデータを構成する個別のデータを売買の対象とすることなど、とても考えられない。もともと情報は売買することが容易ではないが、ビッグデータで対象とされるデータについては、特に売買が難しい。
3.この点が、従来の情報と根本的に違う点である。従来の情報は、個々のものに価値があったので、秘密にされる。有償での取引もなされてきた。従って、ビッグデータが特定の企業に経済的価値をもたらす理田は、自明ではない。ビッグデータから経済的価値を引き出すには、特別な仕組みが必要である。「マネタイゼーションの仕組みが必要」といってもよい。
4.それに成功した代表的企業が、グーグルとフェイスブックである。これらの企業は、検索やSNSサービスを提供することによってビッグデータを収集し、それを利用して新しいタイプの広告を行うことで、巨額の収入を得た。これらの企業にとって、データは利益の源泉である。それは、工場や店舗などの伝統的な固定資産に代わる新しい「資産」になっている。ただし、グーグルも、当初から意図的にこうした事業を展開しようとしたわけではなかった。高性能の検索エンジンが発明されたが、
それをマネタイズする仕組みはなかった。検索サービスの利用者から料金を徴収する方式は機能しなかった。
5.このことからも分かるように、ビッグデータは、データが集まれば自動的に価値が得られるというものではない。そこから経済的利益を得るには、特別の仕掛け(ビジネスモデル)が必要である。それは、従来はなかった仕組みであり、それを生み出すのは、容易なことではない。ビッグデータを保有する企茉が全て巨額の利益を得ているわけではない。例えば、ツイッターは長年赤字を続けてきた。
6.GAFAという名称がよく聞かれる。これは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムを指す。全てがIT関連の事業を行っている。しかし、収益構造の面から見ると、ひとくくりには論じられない。これらの企業の収益構造は、さまざまだ。アマゾンは、確かにデータを活用している。協調フイルタリングという手法を用いた「お勧め」である。しかし、アマゾンが成長したのは、主として物流面での効率化による。それによって、品ぞろえが豊富で短時間で低コストで届けられる配送システムを構築したことの影響が大きい。
7.アップルが高収益を上げているのは、斬新な製品を開発したことによる。また、生産において国際的水平分業を実現したことによる。ビッグデータで収益を上げている面は、あまりない。中国の3大IT企業の一つであるアリババについても、その収益源は基本的にはオンラインショッピングであり、ビッグデータの利用とは言い簸い。その意味で、アマゾンと同じである。.ビッグデータの利用がなされているのはアリペイや芝麻信用など、金融関係の子会社によるものである。
8.ビッグデータが利用されている例としては、コンビニエンスストアにおいてポイントカードのデータが商品の仕入れや店舗での配置に利用されていることなどもある。金融機関による信用スコアリングや、不正取引防止にも使われている。ただし、ポイントカードや信用スコアリングなどがどれだけの利益を生んでいるのかは、明らかでない。さらに、ビッグデータを用いて予測を行い、これによって資産運用する試みもなされている。ただし、これが果たして継続的な利益をもたらすか否かについては、判断が難しい。少なくとも、ビッグデータを用いていると称するファンドが顕著に良好な成績を挙げているわけではない。
9.今後は、ビッグデータがパターン認識の学習データに用いられ、その成果が自動車の自動運転を実現し、これが社会を大きく変えることは疑いない。しかし、自動運転に関連する事業がどれだけの利益を上げられるのかは、不確かである。膨大な利益を獲得できるかもしれないが、それは将来のことであって、現在ではまだ分からない。パターン認識技術の利益は、消費者にも及ぶ。医療や公共的な用途での利用は、そうした結果をもたらす。
10.音声認識や自動翻訳のサービスは、すでにスマートフォンを通じて無料で提供されている。.凹像認識のサービス提供も始まっている。これらのサービスは、明らかに消費者の利益になる。それらの利用を通じて、サービスの提供者にデータが供給されている。これまであったサービスの有料取引とは違う経済取引が行われるようになってきた。
11.中国において、ビッグデータは他の国の場合と違う意味を持っている。個別企業がビジネスに利用するだけでなく、国や政府が企業と密接に連携して利用するである。中国におけるビッグデータの収集と利用において、国(特に警察・公安)と民間企業との関係は、はっきりしないが、民間企業が画像認識の技術開発のために国のデータを使っているともいわれる。民間企業でおいても、政府から完全に独立しているとは言い難い。それに加え、中国の国民はブライパシーに対する意識が十分でないので、ビッグデータを集めて利用することが容易である。
12.そこで、これを人工知能(AI)の学習に用いる結果、AIの能力が高まる。その成果は、軍事面にも利用される。アメリカは、こうしたことを警戒している。もつ一つの問題は、警察や公安によって使われることである。民間企業によって開発された顔認識技術を、警察が捜査の一環として導入・活用しているといわれる。鉄道の駅では人身売買を行う者を見つけるために、空港では乗客確認のために利用されている。
13.2018年4月には、顔認証サングラスを装着した警察官が、数万人の群衆の中から、たった一人の犯人を見いだして検挙したと報道された。こうした技術は、特定の個人や集団の権力維持のために使われる危険がある。国民はデータを提供して、支配される。中国では、このようなことが現実の問題となり得る。



yuji5327 at 06:48 
共通テーマ 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

書道教室(自宅)
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日



livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード