2019年02月16日
中国では、長らく消費が経済をけん引している。2018年の経済成長率+6・6%のうち、+5・0%分が消費であった。
![週刊ダイヤモンド 2019年 2/16 号 [雑誌] (あなたの周りのモンスター クレーマー撃退法)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61kfAvwZnRL._SL160_.jpg)
「鈴木貴元（丸紅有限公司）著：政府によるトータルシステム改造とスマホネイティブ流入で変わる北京の生活スタイル、週刊ダイヤモンド、2019.2.116」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
１．中国では、長らく消費が経済をけん引している。2018年の経済成長率+6・6%のうち、+5・0%分が消費であった。しかし、年後半の鈍化は鮮明であり、スマートフォンや自動車の販売の仲びは月次ベースで2桁マイナスを続けた。
２．そうした中、筆者のいる北京は、小売り販売の伸びが18年通年で前年比+2・7%と、天津に次いで全国ワースト2位となった。これは、北京の住宅価格が高ぐ、家計の支出の3分の1が住宅関連に費やされており、投機抑制策が賃貸価格を押し上げてしまい、一般の消費を抑えてしまったからである。しかし、北京の都市生活は大きく変わろうとしている。これは、所得上昇で消費のレベルアップが起きていることに加えて、北京の市改造が行われようとしていることや、ネット原住民と呼ばれる1995年以降生まれに続き、スマホネーティブの2000年代生れが大学に入り始めたことが影響している。
３．北京の都市改造について政府は、政治、文化、科学、国際交流の4つがコアの機能となり、金融、貿易、物流などのサービスが経済を支える都市への変化を目指している。そのため、市中心部では、天安門から5kmほど離れた第3環状路の東側で、床面積250万m^2の新オフィス街の再開発が行われている。また、王府井をはじめとしたショッピング街の拡大、小規模商店の改装・リニューアルも行われている。
４．大型オフィスとホテルの新規開発は、昨年秋以降、第5環状路の内側でほぼ全面的に禁止された。郊外では南部で9月に北京大興国際空港が開港予定。東部でも、通州区で副都心に続きユニバーサルスタジオの建設が始まった。これらの開発地域は、20路線を超える地下鉄によってつなぎ合わされ、都心部に集まり過ぎた機能と交通は分散・整理されるもようだ。
５．もう一つ、北京の都市生活を変えているのが95后、00后の流入である。北京は北京大学などを擁するアジア有数の学研都市であり、彼らが北京に流入してきたことで、新しい生活スタイルが見られるようになっている。例えば、電子商取引の拡大である。北京の小売り販売に占める割合は、18年は22・3%だったが、住宅費、医療費、交通・通信費を除いて推計すると40%超に達している。
６．ネット小売り大手、京東の調査では、北京の大学生は、洗濯用洗剤やスポーツドリンクまでオンラインで購入しており、大学の周りでは宅配業者が小包を山積みにしている。小口の消費者信用も大学生に普及してきている。95后、00后は、物心ついたときには既に中国がGDP世界3位、2位の経済大国で、彼らにとって6%成長は当たり前。キャッシュレス生活を当たり前とする若晋たちが新しい生活様式をつくり出している。
７．1月21日、春節で交通量が多くなる「春運」が始まった。北京は世界遺産が多く、大勢が訪れている。北京は久しく政治、外交、通商の場というお堅い印象が強かった。今後は消費のレベルアップに加えて、都市改造やスマホネーティブによるデジタル生活の浸透で大きく変貌するだろう。中国経済の次のステージにおいて、北京をどのような見本にしていくのか注目される。
