2019年04月04日

シリコンバレーは、アメリカ政治の中心から遠く離れているが、先進的な企業が集積し、世界経済をけん引している。日本のふるさと納税は何の役にも立っていない。


「野口悠紀雄著:ふるさと納税の廃止は緊急の課題となった、週刊ダイヤモンド、2019.2.23」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. 大阪府泉佐野市は、ふるさと納税制度によって、2017年度に全国最多の約135億円の寄付金を集めた。これは、ビールなどを返礼品に使ったからである。さらに、18年度は19年3月末までの予定で、返礼品とは別にインターネット通販アマゾンのギフト券100億円分をプレゼントするキャンペーンを実施中で、これによつて360億円以上を集める見込みだとしている。これは、19年度予算案での市税収入見込み(約209億円)の約1・7倍にもなる。
2. 高額の返礼品を求める人々の欲得によって、地方税の配分がここまでかく乱されると証明された。恐ろしいことである。このような奇怪な制度によつて税収増が本来の1.7倍にもなってしまうのは、異常事態である。まだ人々の間に自制心が残っているからよいものの、もし全ての日本の納税者が欲得だけを目的にして制度を利用するとしたら、どうなるか?・最も有利な返礼品を提供する自治体に寄付の全てが集まり、他の自治体の住民税が激減する危険がある。
3. ふるさと納税の控除限度額は年収や家族構成などで異なるが、年収500万円の給与所得者の場合、5万円程度だ。給与所得者は約6000万人いるので、仮に1人5万円寄付するとすれば、総額は約3兆円になる。これは、16年度の住民税(個人分)約12兆円の約25%である。日本の地方税制度は、潜在的にコントロール不可能な状態に陥ったと言わざるを得ない。このような異常事態に対して、総務省は地方税法を改正するとしており、税法改正案を国会に提出する。
4. 改正案は、返礼品について、調達価格が寄付額の3割以下である地場産品に限る方針だ。また、「期間限定」などの派手な宣伝で寄付を募集する行為は規制する。4月上旬に詳細な規制の基準を公表し、5月には基準に適合した自治体を指定する。指定されなかった自治体に、6月以降に寄付しても、減税の特例は受けられない。
5.この措置によって、返礼品競争が収まると考える人がいるが、そんなことはない。仮にこのような制約が課されたところで、問題の基本が解決されることにはならない。なぜなら、返礼品の価値が寄付額の3割以下に抑えられたとしても、それが2000円を超える限り、つまり寄付額が約6666円を超える限り、寄付者は利益を得ることになるからである。また、寄付を受ける自治体の税収が増えることに、変わりはない。
6.こうして、一見したところ、寄付者も、寄付を受ける自治体も、利益を得ることになり、誰も損をしないで利益を生み出す制度のように思えるが、そうではない。寄付者と同じ自治体に住んでいてふるさと納税をしていない人たちは、その自治体の税収が減ることを通じて、負担を強いられる。学校や幼稚園などについて本来であれば受けられたであろう自治体のサービスを受けられなくなる。現在は、この弊害はまだ一部の自治体にとどまっているが、上に述べたような事態になれば、財政運営が不可能になる自治体が続出する危険がある。
7.上記の総務省の規制強化に対して、自治体からの反発がある。制度の基本をそのままにして、運用だけで対処しようという総務省の方針に反対が出るのは、論理的に言えば当然である。総務省は過大な返礼品は自粛すべきだと言うが、なぜそうした介入が正当化されるのか? 返礼品競争が過熱化するからだというが、3割に抑えられたとしても、返礼品の競争は続く。それとも、過大な返礼品を出せば自治体の財政が圧迫されることを懸念しているのであろうか? 確かに、そうした危険はあり得るが、そのような心配は返礼品を出す当該自泊体がすべきことであって、総務省がすることではない。これは余計なおせっかいである。
8.返礼品競争が起きるのは、制度の基本がおかしいからである。問題は、わずか2000円の負担で自由に寄付ができることである。これは寄付税制の一般的な原則に反することである。こんな奇妙で異常な制度を導人したから、異常な事態が生じる。それをそのままにして、返礼品競争をするなというのは、論理的に破綻している。寄付税制の原則に従い、寄付の一定割合を所得控除する仕組みにすべきである。そうすれば、納税減少額は、現状よりずっと少なくなる。
9.財源の偏在是正はもちろん重要な課題である。このために、地方交付税制度が存在する。この制度は、日本財政の根幹的な制度である。従って、ふるさと納税といった奇妙な制度ではなく、地方交付税制度をいかに運営するかを考えなければならない。ふるさと納税制度によって財源の偏在が是正されることにはならない。それだけではなく、財源の適切な配分を妨げる。それは、泉佐野市の例を見ても分かる。同市が特に財源に窮しているというわけではない。創意や工夫によって税収を増やしたというのでもない。単に高額の返礼品を出しただけのことである。
10.多額の返礼品を出す自治体に寄付が集中するのだから、財源の配分上、深刻な問題が生じる。財源不足に悩みながらも返礼品を出せない自治体にとつては、深刻な問題である。インターネットには、高額返礼品ランキングなどというものもある。財政困窮度のランキングではない。どこの自治体を助けるかということではなく、どこの自治体に寄付すれば得になるかだけが考えられている。
11.現在の制度は、どこに寄付したら何がもらえるかという利益あさりのための制度に堕してしまっている。ふるさと納税の最も重大な問題は、地方の発展に寄与しないことである。本来の地方の発展とは、地方に産業や文化を興すことである。ヨーロッパには、歴史ある地方都市が、特色のある発展をしている。欧米では、大学は大都市ではなく地方都市にある場合が多い。そして、地方の中心として重要な役割を果たしている。
12.アメリカ、カリフォルニア州のシリコンバレーは、東海岸にあるアメリカ政治の中心から遠く離れているが、IT企業など先進的な企業が集積し、アメリカ経済のみならず世界経済をけん引する存在になっている。本来の意味での地方の発展とは、このような形のものである。こうした目的のためにふるさと納税は何の役にも立っていない。むしろ寄付の獲得に目が向いてしまい、本来の発展のための努力がおろそかになる。
13、地方の特産品を返礼品とすれば地場産業が発達するという意見があるが、一部の業者の利益を増やすだけである。それが行政や政治と結び付いて利権化するだけである。このような異常な制度がいつまでも続くはずはないから、いつかは廃止される。そうなれば、寄付が集まらなくなる。寄付に依存した財政体質になってしまえば、取り返しのつかない事態に陥る。制度の欠陥がここまで異常な事態を引き起こした以上、事態の収拾は焦眉の課題となっている。



yuji5327 at 06:31 
共通テーマ 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





地域別アクセス

ジオターゲティング

ジオターゲティング
livedoor プロフィール

yuji5327

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード