2019年04月20日

国境はなくなったはずだが、ベルファストの町のあちこちに壁がある。住宅街では、カトリック教徒とプロテスタント教徒が住む地区を隔てている。レンガ、有刺鉄線などまちまちである。


「池上彰と増田ユリヤ著:EU離脱に揺れる壁、イギリス、PRESIDENT、2019.4.15」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. イギリスのEUからの離脱、いわゆるブレグジットは3月29日と決まっていたが、目前に迫っても混乱が続いた。EUとの合意がないまま離脱に踏み切れば、急に関脱が上がったり物流が滞ったり物価が上がったりして、イギリス経済と国民生活は大打撃を受ける。離脱延期はしない、と明言していたメイ首相が、2月末に延期の可能性を示唆しただけで、イギリスポンドのレートが上がった。世界経済も、それだけ敏感になっていた。
2. 最大の焦点は、イギリスの一部である北アイルランドと、EU加盟国アイルランドの国境問題ですね。現地はどうなっているのか、北アイルランドの首府ベルファストへ取材に行っった。離脱によって貿易のルールが変われば、税関や検問が必要だが、厳しい国境管理はやりたくないという点で、イギリスとEU側は一致している。これには、歴史的な背景がある。
3. そもそもブレグジットのきっかけは、ポーランドなどの東欧諸国から高い給料を求めた移民がたくさん入ってきて仕事を奪われ、公共サービスや社会保障にもしわ寄せが生じて、暮らしが悪くなっている、とイギリス人の不満が高まったことである。これまで通り国境を自由に行き来できるなら、移民の人たちは一度アイルランドに行けば、北アイルランドへ簡単に入れるので、ロンドンへも行ける。それでは離脱する意味がないので、アイルランドとの国境が注目を集めてきた。
4. EU加盟国はアイルランドをはじめ大半がカトリックだが、イギリスは袂を分けてプロテスタントのイギリス国教会をつくった。北アイルランドには両方が住んでいて、お互いを殺し合った長い紛争の歴史がある。イギリスとEUは、国境を分断することで紛争が再燃することを恐れている。
5. 16世紀の国モヘンリー8世が、王妃の侍女と再婚するためにつくったのが、イギリス国教会である。カトリックは離婚ができないからである。現在のチャールズ皇太子がダイアナ妃と離婚して、カミラ夫人と再婚できたのも、ヘンリー8世のおかげである。
6. イギリスがアイルランドを併合すると、プロテスタントの入植者が北アイルランドにたくさん入った。その影響で、アイルランド独立の際に、北アイルランドはイギリスに残った。しかし、ここに住むカトリックの人たちはアイルランドと一緒になりたい。支配層のプロテスタントに虐げられたので、統一を目指して立ち上った。その中の過激派がアイルランド共和軍(IRA}という軍事組織をつくって、イギリスに対するテロ活勤を始めた。
7. サッチャー元首相やエリザベス女王まで暗殺する計画があった。1970〜80年代は、ロンドンでもしばしば爆弾テロがあった。プロテスタント側も対抗して、アルスター義勇軍をつくった。血で血を洗う争いだった。3000人以上の犠牲看を出した末に、和平が成立したのは、98年で、双方が完全に武装を放棄したのは、2010年である。和平が実現した理由として大きいのは、98年に発足したEUにイギリスもアイルランドも加盟したことで、国境がなくなり、北アイルランドが、わざわざイギリスから分かれてアイルランドと一緒になる必要が薄れた。
8. 国境はなくなったはずだが、ベルファストへ行ってみたら、町のあちこちに壁が立っていた。繁華街やビジネス街にはないが、住宅街では、カトリック教徒が住む地区とプロテスタント教徒が住む地区を隔てている。レンガでできていたり、有刺鉄線だけだったり、場所によって、壁のつくりや高さはまちまちである。昼間は自由に行き来できるが、夜になると自動的にゲートが閉まる。和平が成立して、みんな仲良く暮らしているのかと思ったら、こんな壁ができていた。住んでいる地域も、子どもたちの通う学校も別々だが、名前は「平和の壁」という。
9. 紛争が起こらなくなった理由は、壁をつくってお互いの生活を分断したからである。元々、イギリス軍がつくったものだが、むしろ和平成立後に市内のあちこちに増えて、合計すると20kmの長さになる。力トリック側の壁には、独立運動やイギリスへの抵抗運動をした人たちの絵が、ずらっと描いてあって、観光地になっている。獄中でハンガーストライキの末に餓死LたIRA.の活動家ボビー・サンズの肖像が描かれた有名な建物も、この近くにある。
10. 殉教者と呼ばれている英雄である。服役中にイギリス下院議員に立候補して当選したが、亡くなったので登院はできなかった。少数派のカトリックの人たちは、抗議も含めて壁に絵を描いた。プロテスタント側の壁にも、絵はある。つまり支配層と思われている側にも、不満や訴えたいことがあり、現地を取材してみて感じるのは、誰もが満足する暮らしを実現するのは難しいということである。どんな国や地域でも歴史の影響は避けられない。


yuji5327 at 06:33 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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