2019年06月05日
4月10日に発表されたM87のブラックホールの重さは巨大で、太陽の65億倍である。ブラックホールを直接見る時代に入った。
「渡部潤一(自然科学研究機構国立天文台教授)著:ついにその姿が見えた、銀河中心の巨大ブラックホール、週刊ダイヤモンド、2019.4.27」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1. ブラックホール、どんなものでも強力な重力でのみ込んでしまうモンスター天体として、その知名度は抜群である。もともとアインシュタインの一般相対性理論が発表されたのを契機に、理論的に質量が極めて狭い範囲に集中した場合にどうなるか、という視点で研究進み、ドイツの天文学者シュヴァルツシルトが、アインシユタイン方程式の特殊な解として導いた。さらにインド出身の物理学者チャンドラセカールが、ぎゆうぎゆうに詰まつた星の質量には上限があることを理論的に導き、実在する可能性を予言した。1930年のことである。
2. 理論的に存在が予測されてきたが、実在することが広く認められるまでには時問がかかった。アインシュタイン白身がシュヴァルツシルトの導いた解が数学的には存在するが、実在には疑問を抱いていたし、チャンドラセカールの計算に至っては、当時の天文学界の大御所であるエデイントンに否定されてしまったからである。それ以後、研究.がしばらく停滞していたが、60年代に米国の物理学者ホイーラーがブラックホールという名称を用いて研究し始めてから盛んになっていく。
3. ブラックホールが存在する可能性は、相対性理論を理解していなくとも、単純な思考実験で類推できる。地球からロケットが脱出するには、地球の重力を振り切り、宇宙に飛び出すための脱出速度〔11km/s〕が必要である。脱出迷度は、天体の質量が大きいほど、また天体の半径が小さいほど大きい。例えば地球をぎゅつと縮めて、半径6mm程度まで小さくしたとすると、脱出速度は30万km/sとなる。これは光速だ。光速を超えることはできないので、光を含めてあらゆる物質が抜け山してくることが不可能になる、つまり一度入ったら二度とは戻れない底なしの穴、プラックホールになる。
4. 実際には光に質量がないので、この思考実験は物理学的に正確ではないが、ブラックホールを理解してもらうには良い例えである。では、地球を半径6.mmに縮められるか考えても難しそうだが、人類にはなし得ないことを宇宙では実現する。例えば.冬の一等星シリウスの伴星シリウスBは、半径が太陽の100.分の1、せいぜい地球租度なのに、そこに太陽ほどの質量が詰め込まれた恒星である。.その密度は1t/cm-3を超える。超新星.爆発の後にできる中性子星になると、大きさはシリウスBのさらに100分の1、半径10km程度であるのに、質量は、太陽ほどもある。平均密度は1cm-3当たり5億トンにもなる。ぎゅうぎゅうに押し込めら.れた物質が全て中性子となり、辛うじて中性子同士の押し合う圧力が、強力な重力に打ち勝って、バランスを保っている。
5. だが、チャンドラセカールが予言したように、中性子の圧力で支えられる質量にも限界がある。この限界を超えると、その重力を食い止める力は生じない。ほとんど無限に収縮して、半径6.mmよりも小さくなり、ブラック.ホールが出現する。
6. 理論的に予測されたブラックホールは、実在するのかについて、強い重力しかなく、光さえも抜け出せないので、あらゆる情報が直接出てくることはない。つまり、直接には見えな。天文学者はさまざまな方法でブラックホールが実在することを間接的に証明してきた、その方法の一つが、吸い込まれる前の物質が放つ「叫び声」を聞くことである。星間物質がブラックホールに吸い込まれるときには、押しくらまんじゅう状態になり強力な電波やX線が、いわば「叫び声」として発.生するので、それらを観測す.ることで、ブラックホールの存在を問接的に見つけることができる。
7. 特に、大きな星が超.新星爆発をしてブラックホールになったものと、通常の恒星が連星になっている場合は,ブラックホールヘガスが引き込まれていくためにX線を発するので見つけやすい.。このとき、星の運動を調べれば,見えない相手方がどの程度の質量かが分かるため.、プラックホールと推定できる。
8. はくちょう座X−1などのX線源は、こうして発見された太陽の15倍程度の重さのブラックホールである。ブラックホールにのみ込まれる直前の物質は、押し合いへし合いした結果、その一部が相当量、ものすごいスピードで2方向に噴き出す。
9. 銀河の中心には、質最が太陽の何百万倍から何億倍という巨大なブラックホールがあるが、その周りでは強力な重力で星聞物質や恒星が振り回される。その運動から確実に巨大ブラックホールの存在を証明したのが、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡である。りょうけん座の銀河M106の中心付近で、秒速770ー1080kmという猛烈なスピードで回転する複数の電波源を発見し、これが銀河の中心からわずか0・4〜O・8光年の領域内に存在することから、太陽.の3600万倍の巨大ブラックホールが存在することを示した。銀河レベルになるとジェットもすさまじい。
10.地球から5500万光年離れたおとめ座.にある巨大銀河M87の中心からは、目に見えるほどのジエットが噴き山している。しかし、これらはいずれも間接的な証明にすぎない。ブラックホールを直接見ることはできないだろうか。そう考えて世界中の電波望遠鏡が協力したプロジェクトがイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)である。国立天文台が欧米と共に運用しているアルマ望遠鏡などを他の国の望遠鏡などと組み合わせ、巨大なブラックホールを直接見ようというプロジェクトである。
11.その成果が4月10日に発表された。M87のブラックホールがついに見.えたのである。その重さは本当に巨大で、太陽の65億倍であるという。われわれ人類はついに、ブラックホールを直接見る時代に入ったのである。
1. ブラックホール、どんなものでも強力な重力でのみ込んでしまうモンスター天体として、その知名度は抜群である。もともとアインシュタインの一般相対性理論が発表されたのを契機に、理論的に質量が極めて狭い範囲に集中した場合にどうなるか、という視点で研究進み、ドイツの天文学者シュヴァルツシルトが、アインシユタイン方程式の特殊な解として導いた。さらにインド出身の物理学者チャンドラセカールが、ぎゆうぎゆうに詰まつた星の質量には上限があることを理論的に導き、実在する可能性を予言した。1930年のことである。
2. 理論的に存在が予測されてきたが、実在することが広く認められるまでには時問がかかった。アインシュタイン白身がシュヴァルツシルトの導いた解が数学的には存在するが、実在には疑問を抱いていたし、チャンドラセカールの計算に至っては、当時の天文学界の大御所であるエデイントンに否定されてしまったからである。それ以後、研究.がしばらく停滞していたが、60年代に米国の物理学者ホイーラーがブラックホールという名称を用いて研究し始めてから盛んになっていく。
3. ブラックホールが存在する可能性は、相対性理論を理解していなくとも、単純な思考実験で類推できる。地球からロケットが脱出するには、地球の重力を振り切り、宇宙に飛び出すための脱出速度〔11km/s〕が必要である。脱出迷度は、天体の質量が大きいほど、また天体の半径が小さいほど大きい。例えば地球をぎゅつと縮めて、半径6mm程度まで小さくしたとすると、脱出速度は30万km/sとなる。これは光速だ。光速を超えることはできないので、光を含めてあらゆる物質が抜け山してくることが不可能になる、つまり一度入ったら二度とは戻れない底なしの穴、プラックホールになる。
4. 実際には光に質量がないので、この思考実験は物理学的に正確ではないが、ブラックホールを理解してもらうには良い例えである。では、地球を半径6.mmに縮められるか考えても難しそうだが、人類にはなし得ないことを宇宙では実現する。例えば.冬の一等星シリウスの伴星シリウスBは、半径が太陽の100.分の1、せいぜい地球租度なのに、そこに太陽ほどの質量が詰め込まれた恒星である。.その密度は1t/cm-3を超える。超新星.爆発の後にできる中性子星になると、大きさはシリウスBのさらに100分の1、半径10km程度であるのに、質量は、太陽ほどもある。平均密度は1cm-3当たり5億トンにもなる。ぎゅうぎゅうに押し込めら.れた物質が全て中性子となり、辛うじて中性子同士の押し合う圧力が、強力な重力に打ち勝って、バランスを保っている。
5. だが、チャンドラセカールが予言したように、中性子の圧力で支えられる質量にも限界がある。この限界を超えると、その重力を食い止める力は生じない。ほとんど無限に収縮して、半径6.mmよりも小さくなり、ブラック.ホールが出現する。
6. 理論的に予測されたブラックホールは、実在するのかについて、強い重力しかなく、光さえも抜け出せないので、あらゆる情報が直接出てくることはない。つまり、直接には見えな。天文学者はさまざまな方法でブラックホールが実在することを間接的に証明してきた、その方法の一つが、吸い込まれる前の物質が放つ「叫び声」を聞くことである。星間物質がブラックホールに吸い込まれるときには、押しくらまんじゅう状態になり強力な電波やX線が、いわば「叫び声」として発.生するので、それらを観測す.ることで、ブラックホールの存在を問接的に見つけることができる。
7. 特に、大きな星が超.新星爆発をしてブラックホールになったものと、通常の恒星が連星になっている場合は,ブラックホールヘガスが引き込まれていくためにX線を発するので見つけやすい.。このとき、星の運動を調べれば,見えない相手方がどの程度の質量かが分かるため.、プラックホールと推定できる。
8. はくちょう座X−1などのX線源は、こうして発見された太陽の15倍程度の重さのブラックホールである。ブラックホールにのみ込まれる直前の物質は、押し合いへし合いした結果、その一部が相当量、ものすごいスピードで2方向に噴き出す。
9. 銀河の中心には、質最が太陽の何百万倍から何億倍という巨大なブラックホールがあるが、その周りでは強力な重力で星聞物質や恒星が振り回される。その運動から確実に巨大ブラックホールの存在を証明したのが、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡である。りょうけん座の銀河M106の中心付近で、秒速770ー1080kmという猛烈なスピードで回転する複数の電波源を発見し、これが銀河の中心からわずか0・4〜O・8光年の領域内に存在することから、太陽.の3600万倍の巨大ブラックホールが存在することを示した。銀河レベルになるとジェットもすさまじい。
10.地球から5500万光年離れたおとめ座.にある巨大銀河M87の中心からは、目に見えるほどのジエットが噴き山している。しかし、これらはいずれも間接的な証明にすぎない。ブラックホールを直接見ることはできないだろうか。そう考えて世界中の電波望遠鏡が協力したプロジェクトがイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)である。国立天文台が欧米と共に運用しているアルマ望遠鏡などを他の国の望遠鏡などと組み合わせ、巨大なブラックホールを直接見ようというプロジェクトである。
11.その成果が4月10日に発表された。M87のブラックホールがついに見.えたのである。その重さは本当に巨大で、太陽の65億倍であるという。われわれ人類はついに、ブラックホールを直接見る時代に入ったのである。