2019年06月09日

ヒトゲノム研究は商業化が進んでいる。ゲノム配列の高速解読には次世代シークエンサーの最新型は約1億円と高額では大学では型落ちになる。最新型を持つ企業が多い。

「岡田随象(大阪大学教授)著:遺伝統計学で迫る日本人集団の適応進化、學士会会報No.936(2019-)」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2008年には国際プロジェクト「千人ゲノム」が始まり、複数集団に属する2500人のゲノムが解読され、約1億個のSNPが明らかになった。ヒトの塩基配列は約30億だから、30カ所に1カ所の割合で世界中の誰かが遺伝子変異を持つことになる。こうして頻度の低いSNPも含め、現世人類のヒトゲノム多型の全容が明らかになった。
2.「国際パップマップ計画」の頃は手作業でゲノム配列を解読していたが、「千人ゲノム・プロジェクト」の頃には、大規模かつ自動的に配列を解読する「次世代シークエンサー」が開発され、効率が劇的に上昇した。コストも劇的に低下した。2000年頃は1人当たり百億円かかったが、現在は十万円以下である。特に日本人集団に代表的なSNPは数十万カ所なので、そこだけを限定して調べる場合、4千円)である。
3.「次世代シークエンサー」の登場以降、ヒトゲノム研究は大規模化した。イギリスの「UKバイオバンク」では50万人の全ゲノムSNPデータが取得され、アメリカの「TopMedプロジェクト」では10万人の全ゲノム配列データが取得された。10年前なら数百人でも大規模だったが、今や50万人ですから、凄い進歩である。しかも、イギリスは50.万人のゲノム情報を安価に配布している。世界中の何千人もの研究者がこのデータを使っている。自分でデータを抽出しなくても、他からデータを安く購人することで研究できる時代になった。
4.遺伝統計学とは、「遺伝情報」と「形質情報」の関連を、統計解析を通じて評価する学問である。「遺伝情報」とはゲノム塩基配列(DNA)のことで、個人間で99.9%同じだが、少しずつ違う。「形質情報」とは表現型のことで、性別、身長、体重、外見、病気など、個人の形質として外から観測可能なものである。
5.わたしたちを含む研究チームが実施した「血液型を決める遺伝情報と貧血に関するヒトゲノム解析」では、血液型は、関連する遺伝子領域のSNPの組み合わせ(遺伝情報)によって決まる。一方、貧血になりやすさは血液成分(形質情報)がある。両者の関連を解析した結果、「B型になる遺伝子を持つ人は、そうでない人と比べ、貧血関連指標(ヘモグロビン)の量が少し多いので、貧血リスクが低い」と判明した。
6.遺伝情報の個人差と形質情報の個人差を結び付ける研究が現在、大流行している。代表例が「ゲノムワイド関連解析」(GWAS)である。数10万人を対象に、数千万カ所のSNPのタイピング(新たなSNPの同定ではなく、既知のSNPの検出)を実施し、形質との関連を評価するものである。ちなみに、GWASが数十万人分のゲノムを解析する際、1人分のゲノムデータはメール1通分(70KB)に圧縮されるので、少し切ない気持になる。
7.GWASは2002年に理化学研究所が世界に先駆けて実施し、その後、技術の発達に伴い、世界中の研究施設が実施するようになった。その結果、2016年までに、千以上の形質(背の高さ、太りやすさ、髪の毛の癖、酒の強さ、病気のかかりやすさなど)に対し、2500以上のGWASが報告されている。主要な疾患の発症に関わる遺伝子変異も、見つかっています。昔は研究者の一生で、疾患の発症に関わる遺伝子が一つでも見つかれば本望でしたが、現在では数千個規模で発見されています。
8.ヒトゲノム研究のもう1つの特徴は、商業化が進んでいることである。ゲノム配列の高速解読には次世代シークエンサーが必要だが、最新型は約1億円と高額である。大学で購入しようとすると、審査などで1〜2年はすぐ経ってしまい、その上、機械は約3年で更新されるので、やっとの思いで購入できた頃には型落ちになってしまう。そのため、最新型を持つのは企業が多くなってきている。しかし、そのお蔭で研究者は高額機器を購入しなくても、最新型を持つ企業にゲノム解読を依頼することで、安く研究できるようになった。
9.ゲノム研究の金銭面での敷居が非常に低くなった結果、ゲノム研究は大容量のゲノムデータを低コストで収集し、スーパーコンピュータを用いてビッグデータ解析をする時代になった。今やゲノム研究は医療現場も巻き込み、個別化医療が始まろうとしている。研究者の意識も、数年前までは「ゲノムは研究者の研究のためのもの」だったが、今では「ゲノムは患者の健康のために使うもの」と変化しつつある。
10.突然変異によってある集団に発生した新たな遺伝子変異は、子孫に受け継がれる過程で頻度が変化する。ある変異は頻度が減少し、消失する。別の変異は頻度が増減を繰り返す。この場合、集団内でその変異を持つ人は増えたり減ったりする。頻度が増大し、集団に拡散していく変異もある。全員に拡散すれば、もはや変異でなくなる。ある変異を持つことが生存に有利(不利)な場合、変異の頻度はその集団内で急増(急減)する。これを「選択」と呼ぶ。「環境に適応する過程で、変異への"選択圧"が働き、変異の頻度が変化して遺伝的多様性が生じた」と考えるのが、ダーウィンの「自然選択説」である。一方、「変異のほとんどは生存に有利でも不利でもない。変異の頻度の変化は、単なる.遺伝的浮動"である(どの変異が子孫に受け継がれるかは、無作為抽出で決まる)」と考えるのが、木村資生博士の「中立進化説」である。両者の間には長い論争があり、現在では「どちらの現象も存在している」と考えられている。

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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
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