2019年06月10日

世界中の複数の集団でアルコール代謝に選択圧が働いていた。アルコール摂取量を減らす遺伝子変異が選択された。酒は百薬の長という言葉は、見直される。

「岡田随象(大阪大学教授)著:遺伝統計学で迫る日本人集団の適応進化、學士会会報No.936(2019-)」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.15万〜10万年前、アフリカの森の樹上で暮らしていた類人猿がサバンナに進出した時、ヒト(ホモ・サピエンス)への進化が始まったと言われる。その後、ヒトはアフリカ大陸を出て、多くの集団に分岐しながら、世界中に拡散していった。拡散の過程でヒトは他のホモ属と交雑したようで、現生人類のヒトゲノムの数%は、ネアンデルタール人由来
と考えられる。世界中に拡散したヒト集団は、異なる地理的環境で異なる選択圧に晒された。その結果、アジア人、欧米人、アフリカ人など集団ごとに、遺伝子変異の頻度に著しい差が生じました。この遺伝子変異に着目し、それがどんな環境や表現型に対応しているかを調べることで、その集団に特有の選択圧が分かる。
2.代表例がマラリアで、マラリアが蔓延する中央アフリカ地域では、ヘモグロビンβ鎖の遺伝子変異による「鎌状赤血球症」という貧血が高い発生率を示した。これは、マラリア耐性を獲得するため、この遺伝子変異が急速に広まったことに由来する。このように生物の形質が世代を経るごとに周囲の環境に応じて変化することを、「適応進化」と言う。います。
3.適応進化には、「優れた生き物に変化する」という意味はない。限定的な環境に適応し過ぎたため、結果として絶滅した生物も数多くいる。例えば、三葉虫はかつて世界中の海に生息し、長い棘の生えたもの、目玉が飛び出たもの、5伉度のもの、70冂兇里發痢甲羅を2つ折りに丸めるものなど、環境に適応して一万種以上の種がいたが、各種は徐々に絶滅し、最後まで生き残ったのは、最初に登場したのと同じ位シンプルな形の三葉虫だった。
4.「適応進化の検討」とは、「ヒトゲノム配列のどの遺伝子領域が、どの集団で、どの表現型との関わりで、選択圧を受けてきたか」を検討することである。この作業はホモ・サピエンスの歴史を知る上でも、現代人の疾患の背景を理解する上でも重要である。
5.ある集団内で特定の遺伝子変異が高い頻度で起きる時、「その集団は過去に何らかの選択圧を受けた」と考えられる。しかし、「その選択圧はいつ起きたイベントの結果か」については「おおまかに数万年前」としか分析できない。ある集団内で、ある遺伝子変異が高頻度で起きるまでには、数万年かかるからである。
6.数万年前、日本人の祖先はまだ日本列島に入っておらず、ユーラシア大陸や東南アジアにいた。近年、「集団内で極めて低頻度の遺伝子変異に注目すれば、数千年前という近い過去の選択圧を分析できる」と分かってきた。発生して数千年(ほぼ百世代)の遺伝子変異は頻度が低いまま保たれているからである。
7.低頻度の変異の例に、シングルトン(集団内で1サンプルしか観測されていない変異)がある。このシングルトンの分布を次世代シークエンサーで解析する手法を、SDSと言う。2016年、イギリスの研究グループが開発した。SDSにより、世界各地の集団がその地域に定住する過程で生じた、最近かつ集団特異的な選択圧の検討が可能になった。
8.イギリスの研究グループは、欧米人集団3000人の全ゲノムシークエンスデータにSDSを実施したことで、「過去数千年間で、身長を高くする遺伝子変異の頻度が急増した」と判明した。欧米人は身長が高くなる方向に選択圧を受けていたのである。これは「北方適応」(北方の寒冷な環境に適応するため、寒さに強い大きな体格になった)と考えられる。
9.「日本人集団は、どのような環境の中でどのような選択圧を受け、どのような形質を形成したか」については、長らく不明だった。大阪大学の研究グループは、理化学研究所及び慶慮大学との共同研究で、日本人集団約2200人を対象に、全ゲノムシークエンス解析を実施し、日本人集団の適応進化の謎に迫った。日本人集団に低頻度で起きた遺伝了変異の分布を検討したところ、「近い過去(約3000年前)に、日本人集団は4カ所の遺伝子領域において、強い選択圧を受けた」と判明した。
10.日本人が罹りやすい疾患と、その原因となる遺伝子変異は既に分かっているので、各疾患に対する選択圧の強さを定量的に検討したところ、「日本人集団は、飲酒量などアルコール代謝と、脂質や血糖値、尿酸値など栄養代謝に関わる形質に強い選択圧を受けた」と判明した。日本人集団が強い選択圧を受けて獲得したのは、高身長やマラリア耐性ではなく、アルコールや栄養に関わる形質だった。これら4カ所の遺伝子領域のうちの2つは、ADH1B、ALDH2という遺伝子で、ここで遺伝子変異が起きると、お酒に弱くなる。日本人集団では、過去数千年の間に、お酒に弱くなる変異の頻度が増えた。これらニカ所の遺伝子変異は、日本人集団だけでなく、稲作を営んできた東アジア人集団でも高い頻度で観測される。今回の解析を東アジア人集団に対して実施しても、おそらく近い結果が得られると考えられる。
11.日本人集団にアルコール代謝に関する強い選択圧が働いたのは、^酒が各集団におけるコミュニティ形成や生存競争に大事だった、古代日本人(縄文人、弥生人)の地理的な移住パターンを反映している、水田に住む淡水生の寄生虫への防御反応に、アルデヒド代謝が重要だった、で帯雨林と違い、日本では自然発生するアルコールはなく、酒が飲めなくても問題はなかった等が考えられるが、本当の理山は不明である。
12.最近の研究では、程度の差はあるが、世界中の複数の集団でアルコール代謝に選択圧が働いていたと指摘されている。アルコール摂取量を減らす遺伝子変異が正の選択を受けていた。「酒は百薬の長」という言葉は、近い将来に見直されるかもしれない。
13.「日本人集団の持つネアンデルタール人由来のゲノム配列に、選択圧は働いたか」について調べたところ、有意の結果は得られなかった。「ネアンデルタール人由来のゲノム配列は、選択圧を介して、ヒトの疾患の発症に寄与した」という従来の学説には、必ずしも一致しない結果だった。
14.遺伝統計学の研究を通じて一番に感じたことは、「歴史の研究は面白い。数千年前の日本に確かに存在していた自分たちの祖先に、何が起きていたのかを考えるのは、とても楽しい」ということである。しかし、日本は遺伝統計学の分野で顕著な人材不足に陥っている。この分野を研究する中国人とインド人は大勢いたのに、日本人研究者は本当に少なく、将来、日本はこの分野で大幅に立ち遅れると悲観されるので、次世代を担う若手研究者の育成を目指し、様々な活動を始めている。実際にゲノムデータ解析をしてもらっている。


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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
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