2019年06月14日

社会保障費増大の影響を考えると、消費税の税率をさらに引き上げる必要があるが、そうした議論は全く行われていない。MMTの影響力を軽視するのは危険である。


「野口悠紀雄著:MMTが問題なのは無駄な支出を増やすから、週刊ダイヤモンド、2019.5.11」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.現代貨幣理論(MMDという考えがアメリカで注目を集めている。日本でも、参議院の決算委員会で議論された。これは、自国通貨建てで政府が借金して財源を調達しても、インフレーションにならない限り、財政赤字は問題ではないという主張である。ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授などが提唱している。この考えに対して、主流派経済掌者や政策当局者は、異端の学説として強く批判している。
2.MMTは、幾つかの理論を根拠としている。一つは、ドイツの経済学者、ゲオルク・フリードリヒ・クナップによって20世紀初頭に唱えられた貨幣理論(チャータリズムと呼ばれる)である。これは、貨幣は素材の価値があるから通用するのではなく、国が価値があると宣言するから通用するという考えである。もつ一つは、20世紀中ごろのアメリカの経済学者、アバ・ラーナーの主張である。内国債は、国から見れば債務だが、民間の国債保有者から見れば資産である。両者は帳消しになる。従って、「将来時点で、外国に利子と償還金の支払いをするために国が使える資源が減る」という意味での「国債の負担」は発生しない。この点で、内国債と外国債は経済効果が異なる。さらに、ケインズ経済学がある。これは、経済が不完全雇用にあって遊休資源があるなら、財政赤字によって財政支出を増やすべきだとする。
3.MMTが「インフレにならない限り」と言っているのは、「不完全雇用なら」というのとほぼ同じである。だから、これはケインジアンの理論そのものである。ところでチャータリズム、ラーナーの理論、ケインズ経済学は今では縫済学者に広く受け入れられており、格別新しいものではない。クナップのチャータリズムは、金本位制が万能と考えられていた20世紀初頭の世界では異端の考えだったが、管理通貨制に移行した現代の世界では、ごく当たり前のものである。ラーナーの考えは、今でも一般には理解されていないことが多い。 財政赤字を家計の借金と同じようなものと見なして、「負担を将来世代が負うから問題」という考えは、マスメディアではごく普通に見られる。
4.しかし、経済学者の間では、内国債が自分自身への借金だという考えはすでに1940年代に確立されており、正統的なものである。アメリカの経済学者、ポール・サミュエルソンは、この考えを、戦争の費用を内国債で戦後に転嫁することはできない」と表現している。ケインズ経済学も、多くの経済学者によって広く受け入れられている。
5.以上で述べた限りでは、MMTは「モダン」と称してはいるものの、あまり目新しい老えではない。どこが新しいのかは、財政赤字を、長期的な施策の継続的な財源としていることである。
6.今、MMTが論争となっているのは、アメリカ民主党左派にグリーン・ニューディール(地球温暖化対策)や国民皆医療保険などの大型の歳出拡大が必要との意見があり、その財源としてMMTが提唱されているからである。そして、民土党の急進左派を中心に支持者が増えている。これが、アメリカの大統領選挙で争点となる可能性がある。
7.ケインズ経済学で財政支出を増やすという場合に考えられているのは、短期的な需要を調整するための一時的な支出である。これらは、経済が完全雇用になれば、すぐにやめることが想定されている。ところが、上に述べたような施策は、完全雇用になったからといってすぐにやめられるものではない。「インフレにならなければ問題ない」というのだが、政策をすぐにやめられなければ、インフレになる可能性がある。
8.そうなれば、大きな問題が生じる。ケインジアンと見なされている論者までもがMMTに反対を表明しているのは、このためである。さらに、インフレが生じない場合においても、問題がないわけではない。無駄な支出が行われる可能性が高いからである。イギリスの経済学者、ロイ・ハロッドは、ケインズの理論は「ハーヴェイロードの仮定」に立っているとした。これは、財政支出が賢人たちによって決められるということである。しかし、現実の政治プロセスでは、この仮定は満たされず、大衆迎合的な決定がなされる。このことは、アメリカの経済学者、ジェームズ・ブキャナンなどによつて、60年代から70年代に指摘された。ブキャナンの理論はノーベル経済学賞を受けた。問題はこのように、純粋に経済的な問題というよりは、政府支幽に関する政治的なメカニズムの問題なのである。9.簡単に言えば、増税で賄うとすれば反対が強くて実行できない政策でも、財政赤字で賄うとすれば通ってしまう。例えば、増税して戦費を賄おうとしても政治的な抵抗が強くてできないが、財政赤字で賄うことにすれば、負担が意識されないので財源が調達できてしまい、実際に戦争が起きる。こうしたことによって資源配分がゆがめられれば、将来の生産力が低下する.このような意味において、「国債の負担」が発生し得るのである。
10.日本はすでにMMTを行っているという指摘がある。これは、日本銀行の異次元金融緩和政策によって、大量の国債を市中から買い上げたことを指している。国会の議論でも、こうした指摘が行われた。ここで注意すべきは、日本の場合、大量の国債が購入されたのは事実だが、まだ貨幣化までには至っておらず、日銀の当座預金.が増加したままの状態になっていることである。これは、MMTの主張者が言っていることそのものではない。
11.ただし、市中から国債が減少した結果、財政赤字に対する危機感が弱まったことは否定できない。第1に、金利が上昇すると、銀行保有国債の価値が下がり、これが銀行(特に地方銀行)のバランスシートで問題を起こすと懸念されていた。銀行保有国債が減った結果、この問題への関心は薄れた。第2は、国債利子の支払いや償還金だ。まず金.利が低下した結果、新発債の利子負担が減少した。さらに、既発債についての負担も、次の理由で減少した。国債を民間主体が保有している場合、国が支払う利子や償還金.は、民間に対する支払いになる。ところが、国債を日銀が購入してしまうと、これらは日銀納付金を通じて国に還流する。だから、国庫にとって負担がないような状態になってしまった。
12.以上を考えると、今後の日本で、「財政赤字は問題ないのだから、歳出を拡大(あるいは減税)せよ」という声が強まる危険は否定できない。実際、財政赤字幅縮小への努力は、すでに減少している。消費税率の10%への引き上げは、これまで2回延期された。また、将来の社会保障費増大の影響を考えると、消費税の税率をさらに引き上げる必要があると考えられるが、そうした議論は全く行われていない。異端の学説であるからといってMMTの影響力を軽視するのは危険である。


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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
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