2019年08月04日

これまでの西欧型民主主義国家の魅力が色あせて独裁型国家が力をもつ。民主主義と資本主義の理想のために犠牲を払う。西欧型民主主義国家の特徴である。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第4章 国家モデルの変容―色あせる民主主義」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.これまでの「西欧型民主主義国家」の魅力が色あせて「独裁型国家」が力をもつようになってきている。民主主義と資本主義、それから理想のために犠牲を払う。これが西欧型民主主義国家の特徴である。20世紀においてはこの標準的モデルがアメリカであり、各国はみなアメリカを手本に国づくりを行ってきたが、手本であったはずのアメリカがトランプ大統領の誕生により、利己的な独裁国家の色を帯び始めた。
2.中国に次ぐ新興国の雄として期待されていたインドが、かなり進んだ民主主義国家であるために、工業化が進んだかと思えば反対派が足を引っ張るといったようなことが繰り返され、なかなか国として発展しづらいというのも、民主主義が魅力を失う理由のひとつである。これに対し、中国のような強権主義、現実主義、自国第一主義の独裁型だと、国が特定の産業や分野に資源を集中投下できるため、発展が早い。そのため、成長期にある途上国には発展速度の早さに魅力を感じ独裁型が増えてきている。
3、EUは21世紀型の新しい国家モデルの構築という壮大な目標を掲げてスタートした。自分もEUに期待していたが、実際は現状維持が精いっぱいというありさまである。移民や難民問題、マーストリヒト条約やシェンゲン協定などに記された厳しい規定などが重荷となり、「やはり自由がいい」という反作用もここにきて出てきた。4.EUとその周辺国の状況を国ごとに見ると、イギリスは、EUから離脱するかどうかで迷走している。もしEU合意なしの離脱ということになればイギリス経済は大混乱に陥るだろう。混乱の最大の原因は、テレサ・メイ首相がEUとの協定にあった、北アイルランドとアイルランド間の通行のみ自由にし、残りの地域はイギリスが厳格な国境管理を行うという部分を明らかにしなかったからである。そのため、メイ首相が議会を侮辱したという動議が出され、可決された。その後メイ首相に対する保守党党首不信任案も提出されたが、これは信任325対不信任306でなんとか辞任は免れたものの、メイ首相の信頼度は地に落ちた。メイ首相は迷走し、ついに離脱期限であった3月29日を延ばすが、再度国民投票というところに追い込まれている。
5.フランスのマクロン政権の出だしは好調だったが、ここにきて燃料税増税に端を発した黄色いベストの抗議活動に対し、財源を示さないまま最低賃金を月額100ユーロ上げるといった「付け焼き刃的な対策」しかとれなかったことで、本当にリーダーにふさわしいのか、単なる理想主義者にすぎないかと、国中に不信感が広がっている。
6.スペインでは2018年6月、それまで7年にわたって政権を担ってきたマリァノ・ラホイ首相が、自らが党首を務める国民党(PP)に所属する国会議員や地方自治体の首長らの汚職問題で失脚した。後を継いだペドロ・サンチェス首相も、移民問題で頭を痛めている。イタリアが移民の受け入れを拒否したことで、寛容な移民政策をとるスペインへの移民が急増している。スペインを含む南欧諸国は、若年失業率の高さという問題にも直面している。若年失業率はスペイン、ギリシャ、イタリアで30%台、ポルトガル、フランスで20%台である。
7.ドイツでは、メルケル首相が過去18年間率いてきたキリスト教民主同盟(CDU)の党首の座を退くことになった。後任はアンネグレート・クランプ=カレンバウアー党幹事長。メルケル氏は、任期が満了する2021年秋まで首相を続け、その後は連邦議員からも引退する意向を示している。メルケル氏は東ドイツで育ち、ロシア語が堪能なこともあって、ロシアに親近感をもっている。2011年にはロシアからバルト海を通ってドイツに直接ガスを送るパイプライン(ノルド・ストリーム)も完成した。NATO問題でも、自分たちはロシアと仲よくやれるから、アメリカがいつ出ていってもかまわないというのがメルケル氏の本音である。
8.ロシアは、トランプ大統領後のアメリカに反発を強めるEU加盟国の切り崩しを狙って、今後は米欧関係にあの手この手で揺さぶりをかけてくると思われる。中・東欧では、残念なことだが、反EUの動きが年々かなり活発になっている、中・東欧諸国の心情としては、ようやくあこがれのEUの一員になれたと喜んでいたが、加盟してみるとたいして豊かにはなれず、各国に対する規制や締めつけばかり厳しくて、だんだん嫌気がさしてきたというのが実情である。たとえば、移民問題は、EUが定める基本的価値のひとつである人権の保護を理由に、積極的に移民を受け入れるよう加盟国に求めているのに、ハンガリーなどの中.東欧諸国は反発している。この地域には、メディア統制をするような強権的な政治家も少なくなく、チェコ、ハンガリー、ブルガリアといった親ロシア派の政権も誕生している。
9.旧ユーゴスラビアを構成していた7つの国のひとつであるマケドニァのゾラン・ザエフ首相は、経済発展と安全保障の強化のために、EUとNATOへの加盟を望んでいるが、これまでは隣国のギリシャが、自国の歴史であるアレキサンダー大王が治めた古代マケドニア王国の名前を国名に使うなどというのは許せないと強く反対してきたために、実現できなかった。ザエフ政権は、国名を北マケドニア共和国に変更することでギリシャの同意を得たが、国民投票を行って国名変更の是非を国民に問うたところ、約9割が賛成だったものの投票率が憲法上有効な意見表明となる50%に届かず、国名変更は頓挫した。しかし、再度EU加盟を振りかざして投票し、かろうじて国名変更を達成している。
10.トルコはリラ急落、難民流入が増加、クルド人圧迫と話題にはこと欠かないが、いいことはひとつもない。エルドアン大統領はロシア、イラク、サウジ、カタールなど対立国のいずれに対してもいい顔をする「コウモリ外交」を行っていて、中東の要となっている。
11.イタリアは2018年5月にマッタレッラ大統領がジュゼッペ・コンテ氏を首相に任命。これによりポピュリズム政党の「5つ星運動」と極右政党の「同盟」による、連立政権樹立となった。EUは当初、コンテ政権のつくった2019年度の予算案がEUの財政規律から逸脱していると、修正を要請。コンテ政権は当初難色を示したが、EUを追い出されるとユーロが使えなくなり、イタリア政府の発行するリラに戻らなければならなくなる。いまさらリラなど誰も使いたくないとイタリアは譲歩し、再提出した修正予算案が欧州委員会によってかろうじて承認され、当面の危機は免れた。これも、EUに対して言いたいことを言い放って就任したギリシアのチプラス首相。彼がその後味わった苦悩が一つの先行事例として重石となってのことである。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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