2019年08月05日

中国では、産業や教育に関して政府が地方都市の首長に権限をもたせて、自由にさせている。地方都市どうしが競い合いながら成長する循環が起こっている。

大前研一 世界の潮流2019〜20
大前研一
プレジデント社
2019-04-30

「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第4章 国家モデルの変容―色あせる民主主義」の概要の続きを自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ヨーロッパではワーキングプアが大きな社会問題となっている。OECDは、所得の中央値の半分を下回っている人を相対的貧困者と定義している。この相対的貧困者=ワーキングプアの18〜64歳人口に占める比率を示した。とくに深刻なのがルーマニアとスペインで、黄色いベストの抗議活動がいまだに続くフランスやイギリスも、首都圏を除くと決してよくない。イギリスでは、8人に1人が平均所得の60%以下の収入である。2016年に実施されたイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票の際にはこういった人たちが、自分たちは移民・難民に仕事を奪われたと思い込んで、賛成票を投じた。フランスのマクロン大統領を窮地に追い込んだ、黄色いベスト運動の抗議活動の中心にいるのも、同じ層の人たちである。ここ数年、世界各地で存在感を高めているポピュリスト政党は、このようなワーキングプアの人たちを取り込みながら、勢力を拡大している。
2.トランプ大統領は、ワーキングプア対策など何も行っていないにもかかわらず、ポスト・トゥルース発言でその層(主としてアメリカ中部のプアホワイト)に訴求することに成功している。幸い、日本ではまだワーキングプアが欧米ほど大きな問題とはなっていないが、決して無縁というわけではない。
3.イギリスがEUから離脱すべきかを問う世論調査の推移をみると、いまは明らかに残留派が離脱派を上回っている。「わからない」という人が減り、その分、よく考えたらやはり残ったほうがいいと判断する人が増えた。TVのニュース番組でイギリスの厚生省が「3月29日のEU離脱前に常備薬を買いだめしておいてください。とくに糖尿病の人は、薬や透析液などを国内で製造していないのでご注意を」というアナウンスをしていた。このように、ブレグジットになると具体的に自分の身にどういうことが起こるかということが、イギリス国民も段々わかってきたのだ。スペインやポルトガルから毎日直送されてくるトマトなどが、人管待ちの状態で何日もたつと"生鮮"でなくなる。こうした具体的な例が毎日のようにテレビなどで報道されることで、いまさらではあるが、人々は「やはり残留がいい」と意見を変えてきている。
4.こうした予想されるべき実態を明確にせず、2016年6月に国民投票を強行したキャメロン前首相に対する国民の怒りも増している。イギリスの失業率は、EUよりもはるかに低く、ほぼ完全雇用状態となっていて、レストランなども働き手を確保するのに苦労している。移民・難民がイギリス人の仕事を奪っているというのが間違いである。イギリスにおける外国人労働者の推移をみると、非EU加盟国出身者よりもEU加盟国から来ている人のほうが、圧倒的に多い。この理由は、イギリスに来ている労働者の多くは、EU大陸から来ている病院や研究所で働くインテリジェントワーカーである。
5.イギリス社会は、こういう人たちがいるおかげで成り立っているが、もしイギリスがEUから離脱すると、現在イギリスで働いているインテリジェントワーカーは、新たにワーキングビザを取得しなければ働けなくなる。だから、みないったん母国に帰る。そうなると社会が大混乱に陥る。こういった状況がある程度予測できたので、ブレグジットを問う国民投票があった直後、イギリスのBBCに出演し「EUから離脱するというのはどういうことなのかわかっていない人が多いので、もう一度国民投票をやり直すべきだ」と提言したが、イギリスのある大臣から「日本人のお前に何がわかる」と一蹴された。
6.東欧では反民主化の動きが活発化していて、EUはたいへん警戒を強めている。チェコでは、2017年12月に、EUの難民政策を公然と批判する発言を行った、「チェコのトランプ」と呼ばれているアンドレイ・バビシュ氏が首相に就任した。また、大統領のミロシュ・ゼマン氏は親ロシア派で、プーチン大統領にきわめて近い。スロバキアでは2018年2月、政府とマフィアによるEUの補助金を巡る癒着を取材していた著名なジャーナリストのヤン・クツィアク氏が殺害されると、大規模な反政府デモが発生。高まる政権批判の混乱収拾のためにロベルト・フィツオ首相は辞任した。現在の首相はペテル・ペレグリニ氏である。
7.ポーランドでは、政権与党の「法と正義」が、裁判官人事への権限を拡大するなど司法介入を強める改革を強行している。これに対しEUはEUの基本理念に反すると、同国の議決権の停止も可能となる制裁手続きを始めた。2018年4月に3期目の政権に就いた与党中道右派連合「フィデス・ハンガリー市民同盟」のオルバン・ビクトル首相は、メディア統制や移民・難民受け入れの拒否など、EUの基本理念に対しあからさまに反旗を翻している。EUはポーランド同様にハンガリーに対しても、制裁手続きを進めている。
8.ルーマニアでは、政治家の汚職が社会問題化していて、抗議デモが連日発生している。オーストリアのセバスティアン・クルツ氏は2017年12月に弱冠31歳で首相に就任した。かれもまた外務大臣時代からEUの移民政策に反対していて、就任後も反移民・難民の姿勢を継続している。このように真空状態となっている東欧に対し熱心に秋波を送っている中国は、EU加盟11力国とバルカン5力国に中国を加えた「16+1」と呼ばれる枠組みを構築した。2012年から毎年首脳会議を開催して経済支援を行っている。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一環だが、中国の狙いが見透かされて現在のところ必ずしもうまくいっているとはいえない。
9.世界全体の名目GDPの推移を見ると、近年新興国の比重が高まっている。中国の伸びが際立ち、EUからイギリスが抜けると、中国が2位に躍り出る。EUにとってイギリスの影響力というのはそれだけ大きい。少し前まで、これからBRICsの時代になるといわれていたが、GDPの推移をみると、結局は中国だけが飛び抜けて成長している。1人当たりGDPの伸びでも、中国はすでにブラジルやロシアより上になっている。その中国に大きく水を開けられた感のあるインドだが、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)政権は、久々の安定政権であり、モディ首相が旗を振る経済政策のモディノミクスも、いまのところ好調である。海外からの直接投資は拡大傾向にあり、インフレ率も下がっている。経済成長率では中国を上回り、6〜8%台を維持している。
10.インドでもうひとつ特筆すべきは、2010年にスタートしたアーダール(アドハー)である。これはインド固有識別番号庁(UIDAI)が全国民を対象に発行する生体認証可能の12桁マイナンバーで、ITサービス大手インフォシスの共同創業者でCEOのナンダン・ニレカニ氏がプロジェクトの責任者を務めている。インドでは2016年11月、モディ首相がブラックマネーのあぶり出しを狙って、1000ルピー新紙幣と500ルピー新紙幣の発行を宣言した。当初は国中が大混乱に陥ったが、わずか数ヵ月で収束することができたのは、アーダールがあったおかげで、スマートフォンベースの取引や送金にすんなり移行できたからである。
11.インドの経済は安定しているものの成長が遅い。理由は、先ほども指摘したように世界最大の民主主義国家だからである。この国では昔から、社会の改革が進むと必ず「政府はやりすぎだ、もっとゆっくりやれ」と引き戻そうとする勢力が現れ、次の選挙では、そういった人たちの意見を汲む政党が支持を集めるという現象が、これまでずっと繰り返されてきている。2018年12月に行われた、2019年に実施される下院選の前哨戦となる国内五州の議会選挙でも、BJPは全敗してしまった。これからも同じことが繰り返されるに違いない。インド最大野党はネルー・ガンジー主義を掲げるインド国民会議派である。インド南部アンドラプラデシュ州のN・チャンドラバブ・ナイドゥ州首相は、ワイクロソフトを誘致するなど海外から投資を集め、州都ハイデラバードをIT企業集積都市にした実績がある。ところが、それでもかつて選挙で負けたことがある。
12.国民会議派の候補が「みなさん、本当に必要なのはコンピュータですか、それともパンと水ですか」と演説すると、「それはパンと水だ」という人がみな国民会議派に票を入れてしまう。いくら「先にハイテクを進めれば、あとからパンと水はついてくる」と説明しても、貧しい人たちはいまパンと水をもってきてくれる人のほうを選ぶのがインドである。国民議会派は富を創出することをあまり行ってこなかったし、むしろ貧困を分配する結果しか残していない。
13.土地を民有化しているという点も、経済成長の妨げとなっている。中国であれば共産党が地図に赤鉛筆で線を引けば、すぐに鉄道が敷けるが、インドの場合はタタのような大財閥でも、農民の反対で工場をつくることできないということが起きている。
14.中国では、2018年3月に開催された全国人民代表大会で、国築席の任期を「2期10年まで」とするこれまでの規定を撤廃する憲法改正案が採択された。これにより習近平国家主席は、2期目が終わる2033年3月以降も続投が可能となり、実質的に、今後10年にわたる独裁体制を確立した。しかしながら、足元をみると、いろいろなところで問題が山積みの状態である。2013年に習近平国家主席が提唱し、2014年11月に北京で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議(APEC)で各国に向けて披露された「一帯一路」は滑り出しこそ順調にみえたが、ここにきて中国が支援する国家で親中政権が相次いで敗北したり、債務返済に関する問題が発生するなど行き詰まりをみせ始めている。
15.米中貿易戦争はいまだに出口がみえない。この米中貿易戦争の契機となったのが、2015年5月に中国政府が発表した、10年後に世界の製造強国になるためのロードマップである「中国製造2025」である。アメリカやEUにおける、中国企業の域内企業に対するM&Aを規制する動きも、中国にとっては痛手である。中国は以前からミー・ファーストの国だが、これまでは発展途上国だったため、他の国はあまり問題としなかったが、これから先進国の仲間入りをするとなると、それなりの立ち居振る舞いが求められ、ある程度国際協調路線に転じなければ、今後も軋礫が増すばかりである。
16.中国がこの先も、永遠に一党独裁の単一国家であり続けるのは難しいと思う。大前氏は、2002年に出版した『中華連邦』に、中国は将来6つか7つに分裂されて、イギリス型の連邦国家、コモンウェルス・オブ・チャイナになると書いた。習近平体制が10年続いたあとは、この流れに向かう動きが出てくる。すでに富裕層は締めつけの厳しい習近平体制に見切りをつけ、国外脱出や資産の海外移転を行い始めている。ただ、中国が分裂すると、一つひとつの地域の人口は2億人、GDPは日本の規模を超えるので、ヨーロッパよりも巨大な連邦国家となる。そうなると地域同士の競争も活発化して、いまの中国よりも経済的に強くなる。
17.中国では、産業や教育に関しては、政府が地方都市の首長に権限をもたせて、比較的自由にさせている。その結果、地方都市どうしが競い合いながら成長するといういい循環が起こっている。とくに、最近は四川、貴州、雲南といった内陸部の都市が、デジタル・ディスラプションの恩恵を受けて、ECや物流などが発達したおかげで、成長率が高くなっている。ただし、これまで資源に依存して重工業で発展してきた東北三省の遼寧省、吉林省、黒竜江省といったところは、完全にその波から取り残されてしまった。



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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
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