2019年08月14日

日本の自動車産業が強いのは、製品がコモディティー化していないからである。機能や品質などでの差別化ができず、価格だけが選択の基準となってしまった製品である。


「野口悠紀雄著:自動車産業は将来も日本経済を支えるか? 週刊ダイヤモン 2019.6.29.」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本の半導体産業や液晶産業の不調が目立つ半面で、自動車産業は好調である。現在の日本の製造業の中心が自動車産業であることは、間違いない。法人企業統計調査で自動車・同付属品製造業の状況を見ると、次の通りである。(2019年1〜3月期の全規摸の計数。かっこ内は製造業全体に占める比率)。売上高18・9兆円(18・2%)、営業利益4902億円(11・3%)、人員計105万人(11・7%)。13年1〜3月期から19年1〜3月期までの売上高増加率は、製造業全体では6・3%だが、自動車・同付唇開製造業では、24・4%もの高さになっている。
2.資本金1000万円以上2000万円未満の企業を見ると、製造業全体では売上高増加率が▲9・3%だが、自動車・同付属品製造業では、63・6%もの高さになっている。日本自動車工業会の資料では、18年4月〜19年3月で、四輪車の国内生産は975万台、輸出が484万台である。つまり、国内で生産される約半分が輸出される。
3.国内需要は停滞しているが、海外需要が伸びるので輸出が伸び、そのために国内生産を維持できる。自動車輸出が輸出総額に占める比率は15・1%であり、鉄鋼(4・2%)、原動機(3・6%)、半導体等製造装置(3・3%)、半導体等電予部品(5・1%)などに比べてかなり高い。自動車は日本の最も重要な輸出品である。これは、日本の自動車メーカーの国際競争力が強いことの反映である。
4.1980年代には、世界の時価総額リストの上位に日本の金.融機関も登場したが、いまや金融機関は脱落し、上位50社に残る日本企業は、トヨタ自動車だけになった。このリストでも、日本を代表しているのは自動車会社である。
5.日本の自動車産業は、生産の海外展開を進めている。日本自動車工業会の資料では、四輪車の18年4月〜19年3月の海外生産は1976万台である。国内生産は975万台なので、海外生産比率(海外生産が世界生産に占める比率)は、67・0%になる。日本の製造業全体で見た海外生産比率は、16年度で23・8%だ。自動車の海外生産比率は、これに比べて著しく高い。
6.日本の自動車産業はこのようにグローバルな産業なので、単独決算と連結決算で数字が大きく違う。トヨタ自動車の場合、19年3月期で、営業利益は、単独では1.3兆円だが、連結では2・5兆円になる。ホンダの場合、単独では10億円だが、連結では7264億円になる。
7.法人企業統計調査の計数は、単独決算のものである。自動車産業が日本経済に占める比率は、連結で見ればもっと大きいことになる。日本企業は80年代の貿易摩擦をきっかけに、ヨーロッパやアメリカを中心に海外生産を拡大してきた。その後、新興国が工業化し、また需要先としても台頭してきたため、新興国での生産も増大した。
8.自動車の場合には、貿易摩擦との関係があるので、先進国での生産比率が高い。この点は、コスト削減を主たる目的として新興国で生産が進んだ他の業種との違いである。海外生産の比重が高いので、自動車産業の成長は、必ずしも日本国内の雇用を増やすわけではない。また、設備投資の多くも海外で行われる。研究開発は本国でというのがこれまでのパターンだったが、研究開発の重点が人工知能(AI)にシフトしていくと、これも海外に出ていってしまうかもしれない。
9.自動重産業の活動は、世界情勢の変化によって大きな影響を受ける。特に最近では、トランプ米大統領の関税政策によつて、少なからぬ影響を受けている。同大統領の支持基盤といわれる「ラストベルト」は、かつてのアメリカの自動車産業の中心地である。だから、その地域での生産を取り戻すために、輸入に高関税を課すというのは、十分に考えられることである。
10.今年の2月には、同大統領は、自動車の輸入を制限するため追加関税を発動すべきかどうかの検討を指示した。日本との通商交渉で、関税の代わりに数量制限などを迫られる可能性もある。今年の5月31日には、トランプ大統領はメキシコに制裁関税を課す計画を発表した。日本の自動車メーカーの多くがアメリカへの輸出の生産拠点をメキシコに置いているため、影響は不可避との懸念が台頭し、日
本の自動車業界に波紋が広がった。6月になって、追加関税の発動を見送ると表明されたものの、今後どうなるかは分からない。
11.日本の自動車産業はなぜ強いのか?  半導体や液晶などとの違いは何なのか? 自動車生産は、日本が今後も依存できる分野なのか? 日本の自動車産業が強いのは、製品がコモディティー化していないからである。ここでコモディティー化とは、機能や品質などでの差別化ができず、価格だけが選択の基準となってしまった製品である。電気製品では、デジタル化などによって複雑な製造工程を必要としなくなったため、コモディティー化が顕著に進んだ。そして、安価な労働力で生産ができる新興国の台頭を許し、日本のメーカーのシェアが著しく低下した。
12.それに対して、自動車の場合には、価格はあまり低下していない。08年に発表されたインドの「タタ・ナノ」などの格安自動車の例はあるが、あまり普及しなかった。自動車がコモディティー化しない理由は、幾つか挙げられる。第1は、安全性について一定の基準を要求されることである。仮に公的な基準がなかったとしても、人々は安全性を求める。価格がいくら安くても、安全性で問題があれば、買わない。第2の理由としていわれるのは、メカニカルに複雑な構造を持つ機械であるために、製造装置だけ備えればすぐに生産できるというわけではない。
13.こうした複雑な製品の組み立てには、規律正しく、チームワークが取れた日本の労働体制が向いているといわれる。しかし、将来を見ると、次の諸点に留意する必要がある。第1に、電気自動車(EV)になれば、自動車という製品の特徴はかなり変わってくる。部品の生産には高度な技術が要求されるとしても、その組み立ては容易になる。第2に、研究開発の内容が、メカニカルな都分に関するものから、AIによる自動運転に関するものにシフトする。
14.この分野では、ウェイモが、実験車の走行距離などで見て、日本メーカーを含めた他社を圧倒的にリードしている。このため、自動運転の時代には、ウェイモが自動車産業をリードすることになり、日本メーカーが優位性を失う危険がある。第3に、自動運転の時代になれば、自動車を巡る環境は一変する。ライドシェアリングの利用が進み、自動車は保有するものから利用するものに変わる。そうなれば、生産量が激減し、自動車メーカーの地位は低下する。このように変化する条件の中で、日本の自動車産業が引き続き優位性を維持できるのかどうかは、確かではない。


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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
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