2019年08月18日
昨年はアリババのティーモールが約3.5兆円、京東集団のJD.comが約2.5兆円を1日で売り上げた。日本のトップの三越伊勢丹の年間売り上げ約1兆2000億円を、一日で軽々超えた。
「大前研一著:世界の潮流2019〜20、プレジデント社、2019.4.30」は参考になる。「第3章 G-1=Me First 世界をかき回すトランプ問題」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる
1.昨年はアリババのティーモールが約3.5兆円、京東集団のJD.comが約2.5兆円を1日で売り上げている。
日本のトップ百貨店である三越伊勢丹HDの年間売り上げ約1兆2000億円を、たった一日で軽々超えた。決済も、アリババグループではアント・フィナンシャルのアリペイ、テンセント系の京東集団ではWeChatペイといったスマホアプリが主流になっている。クレジットカードと異なるのは、スマートフォンでQRコードを読み込むと、その瞬間に口座から引き落としが完了するデビット決済方式である。手軽なうえに、クレジットカードのような審査も要らない。手数料がクレジットカードの10分の1で、中国ではいまや完全にクレジットカードを凌駕した。
2.いまだにクレジットカードの手数料が銀行の貴重な収入源となっている日本やアメリカにとって、この中国のスピードについていくことができない。このようにグローバル経済はすでに第5フェーズに入っているというのに、トランプ大統領の頭の中はいまだに第2フェーズで止まっている。だから、その第2フェーズで完勝した日米貿易戦争のように、今回の米中貿易戦争も米国が横車を押せば楽に勝てると思い込んでいると思われる。
3.日米貿易摩擦の歴史には多くの教訓が含まれている。まず、政府間の2国交渉ではアメリカは必ず勝つ。1960年代後半の繊維交渉から始まる日米貿易戦争で、日本政府はアメリカと激しくやりあっが、日本が勝ったことは一回もない。最終的にはすべてアメリカの要求が通った。その後アメリカの産業競争力が強くなったわけではない。テレビは消え、鉄鋼はみな外資に買われた。デトロイトがやや回復したのは、日本の良質な部品メーカーが100社も進出しアメリカのビッグスリーに納人するようになったからである。
4.貿易戦争でアメリカにいじめられた国の産業は、グローバル化が早まり結果的に強くなっている。たとえば、日本のトヨタはそれまでジャストインタイムの生産ができなくなるので、愛知から20km以上離れることができなかったが、日米貿易摩擦を境に、世界52ヵ所(27カ国)で生産できるように変貌した。こういうことをアメリカも中国も歴史から学ぶべきである。
5.トランプ大統領のアメリカ・ファーストには、同盟国のヨーロッパ各国も振り回されている。その事例は、トランプ大統領は2017年に、アメリカにとって非常に不公平だと一方的に決めつけ、パリ協定からの離脱を表明。フランスのマクロン大統領は、この離脱に対しいつかは戻ってくるだろうといっているが、石炭ロビーから多額の献金を受けているトランプ政権に、復帰の可能性はまずない。アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアの国連常任理事国にドイツを加えた主要六力国とイランとの間で2015年に結ばれた核合意からも、2018年5月、トランプ大統領は離脱を表明した。査察役のIAEA(国際原子力機関)は、イランが核合意を順守していることを認めていて、他の5カ国も合意継続を訴えていたが、耳を貸そうともしなかった。
6.イラン核合意はオバマ前大統領の外交成果で、それがトランプ大統領は気に入らない。また、イスラム教シーア派のイランと核合意を結んだことで、オバマ政権時のアメリカはイスラム教スンニ派のサウジアラビアとの関係に距離ができていたが、トランプ大統領が核合意から離脱したため、その距離は一気に縮まった。ジャマル・カショギ氏が殺害された事件で、指示を出したとみられているムハンマド皇太子に対し厳しい態度をとらないのも、トランプ政権とサウジが蜜月状態にあるからである。
7.輸入制限の問題もある。トランプ大統領は2018年3月、「鉄鋼とアルミニウム産業をわが国の手に取り戻す」といって、鉄鋼輸入品に25%、アルミニウム製品に10%の関税を課す方針を明らかにした。これに対し欧州委員会委員長のジャン・クロード・ユンケル氏は、明らかなWTOルール違反だとして、アメリカから輸入するハーレーダビッドソン、リーバイスなどアメリカを代表する製品や、アメリカ産バーボンウイスキーに報復関税をかけて対抗したが、額はそれほど大きくはない。トランプ大統領は、アメリカに入ってくるすべての自動車や自動車部品に20%の関税を課すと警告している。