2019年08月28日

小胞体ストレス応答を適切に制御することができるようになると、病気を治療したり、健康寿命を延ばすことができる。

「森和俊(京都大学大学院理学研究科教授)著:小胞体ストレス応答の仕組みと意義、學士會会報No.937(2019-)」参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.1989年4月の研究開始から31年目を迎えた筆者のライフワークである「小胞体ストレス応答」の解説である。小胞体ストレス応答を別の言い方にすると、タンパク質の品質を管理する細胞応答、もしくは私たちが持っている驚異の復元力である。細胞は生き物の基本単位で、ヒトは60兆個もの細胞でできている。
2.細胞内小器官、細胞の中はどうなっているかは、体内のいろんな臓器の役割分担をしているものである。肺があるから呼吸でき、心臓が血液を循環させている。胃があるから食べ物をどろどろにして、腸から栄養を吸収することができる。同じように、細胞の中にも小さな臓器(細胞内小器官と呼ぶ。動物の器官=臓器)がたくさん入っている。細胞を通常の光学顕微鏡で観察すると内部はとてもシンプルで、核、ミトコンドリア、ゴルジ体しか見えない。
3、子が親に似るのは、DNAを受け継ぐからである。このDNAが収納されているのが核という細胞内小器官である。生き物のエネルギー源はATPという化学物質で、ミトコンドリアという細胞内小器官がATPを作る。DNAとATPがあれば十分ではなく、細胞は生き物の基本単位だから単純ではない。生活をしていればゴミが生じるはずだが、ゴミを細胞が処理する手段は、従来のシンプルな細胞像が第二次世界大戦後に電子顕微鏡が細胞観察に用いられてから分かってきた。
4.細胞内部は実に様々な細胞内小器官で満たされていて、それぞれが役割分担していた。2016年にノーベル生理学医学賞を受賞された大隅良典先生が研究されているのが、リソソームという名の細胞内小器官で、不要になったタンパク質等のゴミ処理の場となっている。筆者が研究している小胞体は、細胞内小器官の一つで、タンパク質の製造工場という役割を果たしている。
5.タンパク質は、食物の成分の一つで、肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品に多く含まれるものと認識している。細胞が何でできているかは分析すればわかり、細胞を構成する成分の7割は水で、残りの3割が何らかの化学物質である。水の次に多いのがタンパク質で、化学物質の半分、全体の15%を占めている。DNAは全体の1%しかない。DNAが遺伝物質であるのに対して、タンパク質は生命活動の担い手といっても過言ではなく、タンパク質が働くから我々は動いたり考えたりできる。そのため細胞は多量のタンパク質を必要とする。タンパク質は、20種類からなるアミノ酸が数珠つながりで並んだ紐の状態で誕生し、DNAにこのアミノ酸の並び方が暗号として書き込まれている。
6、我々は3次元の世界に生きているので、紐状ではタンパク質は働くことができない。タンパク質が働くためには、それぞれの機能に最適な立体構造を形成しなければならない。紐状から最終的な立体構造に至る過程をタンパク質の折り畳みと呼び、英語ではprotein foldingである。紙を折り畳んで鶴などを作る折り紙を英語ではpaper foldingと呼ぶ。
7.品質とはタンパク質の立体構造の出来具合を指す。タンパク質の立体構造の重要性は、糖尿病という病気がの例が分かりやすい。社会の高齢化に伴って、糖が尿にでる病気である。糖尿病が悪化すると失明したり、足が壊死して切断しなければならなくなる。悪さをする糖が尿にでたことがこんな状態をもたらすとは考えにくい。糖が尿にでるのは結果であって原因ではない。血液中の糖濃度(血糖値)が高い状態が持続すると、糖が血管にダメージを与えると同時に尿に漏れ出す。注意すべき点は、病気になったから血糖値が上昇するのではなく、食事後はだれでも血糖値が一時的に上昇することである。しかし一時間もすれば元に戻るのは、膵臓という臓器に蓄えられていたインスリンというホルモンが血中に放出されるからである。
8.インスリンの役割は糖を壊すのではありません。インスリンというタンパク質が肝臓や筋肉の細胞の表面に存在するインスリンを受け容れるタンパク質(インスリン受容体)に結合すると、これらの細胞が血液中の糖を取り込む。その結果、血糖値が正常レベルに戻る。多くの生命現象は鍵と鍵穴の関係で説明される。車の鍵と鍵穴をイメージする方がわかりやすい。インスリンという鍵が、インスリン受容体という鍵穴に入ってぐいっと回すと車(肝臓や筋肉の細胞)のエンジンがかかって糖をせっせと取り込んでくれる。ここで最も大事なことは、鍵と鍵穴は一対一の関係にあることである。同じ車種であっても、他人の車の鍵では自分の車のエンジンをかけることはできない。インスリンとインスリン受容体がそれぞれ正しい形をしているときにのみ両者が結合して、食後に血糖値を下げることができ、私たちは糖尿病にならずに済む。
9.第二次世界大戦後まもなく、アンフィンゼン博士は単純な試験管内の実験結果から、タンパク質はそのアミノ酸の並び方の情報に従って、自発的に立体構造を形成すると結論付け、その学説が認められて、1972年にノーベル化学賞を受賞した。その当時は、DNAにアミノ酸の並び方がきちんと書き込まれていれば、タンパク質が作られ、それが勝手に(エネルギーも使わずに)最終的な立体構造になると考えられていた。
10.アンフィンゼン博士の学説が細胞内でも成立するかの問いかけが、1981年代になってから始まった。その結果、細胞内ではタンパク質濃度が非常に高く、タンパク質が自発的に立体構造を形成することは極めて困難であることがわかった。この問題を解決するために、細胞内には分子シャペロンと呼ばれる特殊なタンパク質が存在していて、タンパク質の立体構造形成を助けていることが明らかになった。シャペロンは専門用語ではなく、細胞の中で誤った立体構造を形成しないように一時的に寄り添うのが分子シャペロンである。
11.インスリンやインスリン受容体のようなタンパク質の折り畳みが行われるのが、小胞体という細胞内小器官で、それぞれのタンパク質が最も働きやすい立体構造に作り上げている。このタンパク質の製造工場はかなり優秀で、よく働くが、時にうまく機能しなくなり、構造異常タンパク質ができてしまうことがある。この状態を小胞体ストレスと呼んでいる。この悪くなった状況を元に戻そうとする復元力が細胞に備わっていることを米国テキサス大学のMary-Jane Gething & Joseph Sambrookというボス2人 が発見した。
12.小胞体ストレスを、元のよい状態に復元させるには、細胞は分子シャペロンが足りないから、いつも以上に不良品のタンパク質ができると考え、分子シャペロンを増やすことがわかった。増量した分子シャペロンが不良品タンパク質を修復し、正常な立体構造へと導く。ボス2人の指導の下、30年前からこの驚異の復元力(小胞体ストレス応答)の仕組みとその意義の解明に取り組んでいる。まず、酵母という単細胞生物を使って、小胞体の中の状況が悪化していることを感知するセンサー分子を世界で初めて発見し、1993年に論文発表した。帰国後この驚異の復元力が働く仕組みの解明に取り組み、酵母の細胞で小胞体ストレス時に分子シャペロンが増える仕組みを解明した。次いで、哺乳動物の細胞で小胞体ストレス時に分子シャペロンが増える仕組みを解明した。
13.受精卵がどんどん分裂していって胎児へと成長していく過程で、小胞体ストレスは生理的に発生しており、生じた構造異常タンパク質を修復している。様々な生命現象や生物進化を裏から支えているのが小胞体ストレス応答である。例えば血糖値の調節では、インスリンやインスリン受容体が主役だが、主役が主役として活躍できるように、立体構造形成を助けることで裏からこの生命現象を支えている。この仕組みが働かないと、糖尿病をはじめとして様々な病気を発症することになる。小胞体ストレス応答を適切に制御することができるようになると、病気を治療したり、健康寿命を延ばすことができる。

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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
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