2019年09月16日

現在の二酸化炭素濃度は400ppmでは、この先5万年間は次の氷期は来ない可能性が高い。直面する温暖化を食い止める知恵が求められている。


「木本昌秀(東大教授)著:現在は氷河期のはざまの温暖期 地球気温500万年の歴史、週刊ダイヤモンド、2019.7.27」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.今年は冷夏気味のようだ。今雨も多めのようである。冷夏気味とはいっても、温暖化も都市化も進む中、晴れた日には猛暑レベルになってもおかしくない。氷河期については、およそ1億年前、恐竜の時代の気候は現在より暖かかった。温室効果を持つ大気中の二酸化炭素が多かったことが主因である。それ以降、大陸移動、造山運動を経て地球はゆっくりと寒冷化してきた。
2.ヒマラヤ山塊の隆起は、大量の雨を伴うモンスーン気候を強化する。モンスーン、すなわち季節によって海から陸、陸から海へと主な風向きが入れ替わる現象は、陸と海の温まりやすさの違いによって生じている。夏には大陸が温まりやすく、海から陸への季節風が大量の水蒸気を運ぶため、大量の降雨を生じる。
3.大陸上の大規模山塊は、上空での昇温を助けることになるため、ヒマラヤの隆起とともにアジアモンスーンは明瞭となった。モンスーン雨域の西側では、雨域の上昇流を補う下降流となって乾燥した気候となる。砂漠と雨域の間に発達した広大な草原は人類の祖先の「出アフリカ」を助けたともいわれる。モンスーンでもたらされた大量の雨は、地表を流れ、激しく土壌を風化・浸食する。このとき、岩石中のケイ酸塩が大気中の二酸化炭素を取り込んで水に流す。このため、大規模山塊の隆起が二酸化炭素の減少、気候の寒冷化をもたらすのである。
4.ヒマラヤの隆起も終わりつつある約550万年前から現在までの地球の気温の推移を推足したものである。ゆっくりとした寒玲化を示している。恐竜の時代は、現在より5℃程度暖かかったことは間違いない。当初は4万年程度の周期が主に見られたが、約100万年前から10万年周期に変わった。われわれは、今からおよそ1万2000年前に始まった問氷期に生きている。南極大陸上に数干メートルもの高さで存在する氷の塊から得られたデータがある。長い年月をかけて形成された氷の塊なので、大昔の情報が得られる。
5.われわれの直接の祖先であるホモサピエンスの出現は今からおよそ20万年前である。氷期は現在より最大8℃程度も寒かったので、北半球にも巨大な氷床が形成された。現在と最後の氷期である約1万8000年前の北半球氷床の様子を数値計算で推定した。グリーンランドには現在も氷床が存在するが、氷期には北米とスカンディナビアにも巨大な氷床が存在した。
6.大気中の二酸化炭素濃度の推定値も重ねてプロットすると両者の変動はよく一致しており、比較的短い間氷期から氷期に向かってゆっくりと気温が下がり、間氷期に戻るときは比較的素早く気温が上昇する。気候が寒冷化してくると1年中0度を超えない地域が広がり、降った雪が融けないため、氷床の成長が促された。太陽光を反射する白い氷の面積拡大は、気温の低下を一層助長し、極端な場合、全球凍結に至ることもあり得る。一方で、太陽光が同じであったとしても、地球上に氷が全くない暖かい状態にもなり得る。このような地球気候の多重性が、氷期と間氷期を行ったり来たりするサイクルの背景にある。
7.実際には、地球の公転軌道、自転軸の傾きや歳差運動によつて入射太陽光の緯度・季節分布が数万〜数十万年スケールで揺らいでおり、氷期-間氷期のサイクルはこれに対する気候システムの応答と考えられている。最初の提唱者の名前を取って、ミランコビッチサイクルと呼ばれている。入射太陽光の揺らぎは、天文学的な計算で正確に見積もることが可能だが、多様な周期性の中から4万年や10万年という特定周期が選ばれるのは、気候システムの特性による。巨大な氷床に沈められた地殻が数万年のスケールで押し戻す効果や、気候変化に伴う海洋の深層循環の役割など、詳しくはまだよく分かっていない。過去の気候を知ることは、現在そして未来の気候をよりよく知ることにもつながる。
8.大気海洋だけでなく氷床のゆっくりした成長もコンピュータで計算し、地質データと比較する研究が可能になってきた。CO2も気温とともに変動していたが、このようなシミュレーションにより、二酸化炭素はこの時間スケールではサイクルの駆動源というよりはサイクルを増幅させる二次的な役割を果たしていることが分かってきた。ところで、地球は現在、間氷期にあるが、この後また氷期に向かうのか、そうならば現在の地球温暖化は心配するに及ばないか、近年の研究によれば、氷期の開始には日射量の変動はもちろんだが、二酸化炭素濃度も大きな制約要因となっていることが分かってきた。人聞の活動によつて、現在の二酸化炭素濃度は400ppmとなっている。このことを考慮すると少なくともこの先5万年間は次の氷期は来ない可能性が高い。氷期を生き残ったホモサピエンスだが、5万年以上先のことを考えている場合ではない。直面する温暖化を食い止め、増加する極端気象に対処する知恵が求められている。



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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
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