2019年09月18日

日本の借金は2019年3月末時点でl103兆円、3年連続で過去最大。GDP比で236%。ギリシャの183%、国家が破綻したベネズエラの175%、世界ワースト1位である。


「大前研一著:国の借金容認、MMT理論値に騙されるな、PRESIDENT。2019.8.16」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.財務省の発表によれば、国債や借入金を合計した「日本の借金」は2019年3月末時点でl103兆円に達し、年度末残高は3年連続で過去最大を記録した。日本の政府債務残高は対GDP比で236%(18年)である。この数字は財政破綻したギリシャの183%、国家そのものが破綻したベネズエラの175%を大きく引き離して世界ワースト1位である。
2.日本の借金が増え続けている理由はハッキリしている。18年度の日本の税収は60兆円を超えて過去最高を記録したが、40兆〜60兆円の税収に対して100兆円規模の予算を毎年組み続けているのだから借金が膨らむのは当然である。借金の大半は国債。政府は赤字予算を埋め合わせるために国債を発行し続け、世界最大の国家債務を日々更新している。日本が抱える大問題の一つは国家債務に対する危機意識の低さであるが、近頃は「日本はいくら国債を発行しても財政破綻しない」とか「借金なんて気にする必要ない。政府はもっと積極的に財政出動して、景気刺激をすべきだ」といった声まで聞こえてくる。
3.そのような赤字容認派、赤字奨励派の論拠の一つに祭り上げられているのが、「現代貨幣理論〔MMT〕である。提唱者はニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授らである。MMTの中核にある考え方は「自前の通貨を持つ国がいくら自国通貨建ての国債を発行しても、債務不履行には陥らない」「インフレにならない限り、財政赤字を膨らませても構わない」というものである。
4.ケルトン教授は16年の米大統領選挙で「民主社会主義」を標榜し、大学無償化などの財政拡大策を訴えて大旋風を巻き起こしたバーニー・サンダース上院議員の政策顧問を務めた。サンダース氏は20年の大統領選挙でも民主党からの出馬を表明していて、ケルトン教授も再び政策顧問に就く。また18年11月の連邦議会選挙で初当選し、史上最年少の28歳で下院議貝になったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏がMMT支持を表明して話題を呼んだ。
5.アメリカでは財政政策の理論的裏付けとしてMMTが注目される一方で、異端視する経済学者やエコノミストも多く、論争を呼んでいる。自前の通貨を持っている国が自国通貨建ての国債をどれだけ発行してもデフォルトしないという理由は、いざとなれば際限なく自国通貨を発行できるからだという。たとえばユーロという共通通貨を使っているギリシャは、独自通貨を自由に発行できないので、デフォルトリスクが常につきまとう。しかし、アメリカや日本のように独自通貨を持つ国は、低インフレ環境にある限り政府債務を増加させても、つまり財政赤字を拡大させても問題ない、とMMTは説く。
6.ケルトン教授は「巨額債務を抱えているのにインフレも金利上昇も起きない日本が実証している」「日本の景気が良くならないのは、インフレを恐れすぎて財政支出を中途半端にしてきたから」「MMTはH本が直面するデフレの解毒剤になる」とまで述べている。日本をMMTの実証モデルと見立てているようだが、これは全くの見当違いである。ケルトン教授は日本経済の特殊性というものを全く理解していない。公的債務が対GDP比約240%まで膨れ上がっているのに、財政破綻せず、今年も100兆円を超える予算を組んでいるのだから、傍目には日本はMMTを実践しているように見える。しかし、もし政府や日本銀行の目標通りに物価が上がったらどうなるか。当然、金利は上がる。
7.今は超低金利だから国債の利払いは年間約9兆円で済んでいるが、金利上昇に伴って新規発行や借り換えで利率の高い国債が発行されるようになったら、利払い費は一気に増加していく。他方、金利.が上がって国債よりも高利回りの金融商品が登場してくれば、海外の投資家はもとより、日本の金融機関や生保・損保なども国債を売ってそちらにシフトする。それは国債の暴落を招き、市中から国債を買い集めて大量に溜め込んでいる日銀の内部爆発のトリガーを引く。結局、国債の金利も上げざるをえなくなって、財政破綻の坂道を一気に転げ落ちる。「日本の景気が良くならないのは、インフレを恐れすぎて財政支出を中途半端にしてきたから」というケルトン教授の指摘は真逆である。デフレ脱却のために政府・日銀は2%というインフレ目標を定め、財政支出をジャブジャブと増やしてきた。
8.それでも日本はインフレにならなかった理由は、ケルトン教授のみならず、日本経済の実態を知らなかったノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマン教授やジョセフ・E・スティグリッツ教授も読み違えたことで、大前氏が再三指摘してきたように日本は世界で唯一の「低欲望社会」だからである。政府が支出を増やせば経済活動が活発になって需要が生まれるというのがMMTの理屈だが、そもそも日本社会は需要の基になる「欲望」がなくなっている。少子高齢化による人口減少や将来に対する漠たる不安から低欲望化が進行し、日本人はお金を貯めるばかりでいっこうに使わないし、いくら金利が下がっても借りようともしない。だから個人金融資産が約1800兆円も積み上がり、その大半が金利もつかない銀行口座に塩漬けにされている。
9.「欲望」は金利とマネタリーベースで操作する。これが20世紀の経済原論の大前提である。それが日本では崩れている、という実態を知らない学者が短期間のマクロ現象たけを見て考えると根本から履き違える。「今のところ大丈夫」が現実であって、「これがセオリー」というMMTの考え方は大変危険である。
10.日本国債についても、学者的には日本人が買っているように見える。しかし、現実に国債を買っている日本人はほとんどいなくて、日本人が預金している金融機閲が国債を買っている。外国の経済学者は「日本人が買っている限り、日本国債は安全」というが、日本国債を意識的に良しと判断して買っている日本人はほとんどいない。学者はここを理解していない。個人ではなく金融機関や生保などの機閲投資家が買っている以上、日本国債に対する食欲がなくなれば、国債暴落のリスクはある。
11.MMTの最大の問題点は「インフレにならない限り」という前提で理論を一般化していることである。「インフレにならない限り、政府はいくら借金を膨らませても構わない」というのは、例えてみれば、「爆発しない限り、ダイナマイトをいくら部屋に置いてもいい」と言っているようなものである。そんな部屋で暮らせない。やはり極力、危険物は取り除くべきだし、リスクを取り除いて少しでも安全にしておくことは、将来世代に対する現役世代の責務である。
12.勤労人口が減り、恐らくは収入も減っていく中で、将来世代はより少ない人数で残された借金を返済しなければならない。次の世代に重荷を押し付けて今の繁栄を享受したいと思っている人にはMMTは心地よく聞こえるかもしれないが、将来世代からすれば「ふざけるな」である。「国債償還は我々の責任ではない。自分で借リたものは自分で返せ」と世代間闘争が勃発する可能性もある。実際にスウェーデンでそれが起きて、高齢者の医療や介護・福祉が大幅にカットされ、税率も上がった。最後に、低欲望を克服しなければ日本の再生はないし、時間は多少かかるかもしれないが低欲望社会を変えていくアイデアもある。
13.そもそも日本人が未来永劫、低欲望のままかといえば疑問で、世代が変われば価値観も変わってくる。注目しているのはバブル世代である。彼らは高欲望のバブル期に青春時代を送りながら、バブル崩壊後の失われた20年は欲望を縮小させて生きてきた。60代〜50代半ばのバブル世代がリタイアを迎えたときには、それまでとは全然違う行動を取る町能性がある。人生を楽しむことをないがしろにしてきた人が目覚めたときには、まるで違うお金の使い方をする。借金をしてでも遊ぶ、借金を残して死んだほうが得だと思う人が増える可能性がある。それがMMTのご臨終と、国債を腹一杯食っている中央銀行の終焉につながる。


yuji5327 at 06:43 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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