2019年09月21日
AIの作品が世界のオークションに出品された。AIを開発した研究者3人は絵画の素人集団。芸術とは何なのか疑念が湧き上がる。
「池谷裕二著;闘論席、週刊エコノミスト、2019.8.6」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.昨年10月、クリスティーズのオークションで絵画「エドモンド・デ・ベラミー」に43万2500ドルの値がついた。予想をはるかに上回る落札金額に会場がどよめいた。
2.画家は人工知能〔AI)である。AIの作品が世界規模のオークションに出品されたのは初めてである。AIを開発したフランスの研究者3人は、絵画の訓練を受けたことのない素人集団。創作アルゴリズムもシンプルで、斬新な計算原理が使われているわけでもない。芸術とは一体何なのかと、深い疑念が湧き上がる。
3、今年6月には人型ロボットのアーティスト「アイーダ(Ai・Da〕」の個展が英オックスフォードで開催された。仕上げにプロ芸術家の手助けは必要だが、アイーダの腕は確かで、絵画はもちろん、彫刻も名人のレベルにある。モダンアートがとりわけ得意で、一流画家の作品に比べて遜色ない。
4.アイーダは、小説やオブジエなど、与えられた題材から新たな主題を構築し、抽象絵画を創作する。内部に複雑な数理メカニズムを備えており、創作はもちろん、創作手段も白ら学習しながら、新たな芸術概念を打ち立てていく。
5.エイダン・メラー学芸員は「アイーダは芸術家であるだけでなく、アイーダそのものもまた芸術作晶です」と述べる。確かにアイーダは、芸術、学芸、計算科学など、多様な分野の融合の上に結実した芸術的結晶である。
6.展覧会は盛況だった。しかし「芸術への冒とく」「ロボットで行う意味はない」など、賛否両論が飛び交った。私白身は、こうした社会的インパクトよりは、もっと原始的な問い、「今なぜそこに赤色を置いたのか」というような創作原理の本質的な問いに迫るためのツールとして、アイーダのような人造芸術家に興味を持っている。