2019年10月06日

マクロンはエリートで富裕層に属する。デモに参加する年金生活者や低賃金で働く労働者の気持ちを理解できていたか疑問である。

「池上彰著:
知らないと恥をかく世界の大問題10 角川新書、2019.6.10」は参考になる。「第2章:揺らぐヨーロッパ、EUは夢だったのか」の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。・
1.イギリスがEUから離脱した末にどうなるか?ロンドンにはシティという金融街があり、ニューヨークのウォール街と並ぶ世界の金融の中心である。世界の金融機関は、EU域内のどこか一国で免許を取得すれば、ドイツでもフランスでも域内のどこででも営業ができる仕組みである。日本の金融機関も多くがシティに事業拠点を構えていた。しかし、離脱すればこのパスポートは失効する。イギリス国内でしか営業ができなくなるため、日本の金融機関は拠点をドイツのフランクフルトへ移したり、フランスのパリへ移したりとイギリスから逃げ出している。それだけではなく、離脱後はイギリスとEUとの間の輸出入には、すべて関税がかかるようになる。
2.イギリスとフランス間をユーロスターという高速鉄道が走っている。ドーバー海峡トンネルを通って、イギリスとヨーロッパ大陸を結ぶ国際列車である。ユーロスターは現在、イギリスの運行免許しか持っていない。EUはそれぞれの国で免許があればEU加盟国全部で使えるが、離脱するとユーロスターはフランスに乗り入れができなくなる。ドーバー海峡トンネルでは、税関検査もなく大量の物資が行き来しているが、離脱するとトンネルのどこかで一つひとつ品物の検査をしなければならない。
3.ヨーロッパ大陸から部品を輸入してイギリスで組み立てていた自動車工場は、部品がなかなか入ってこなくなるばかりか、コストが上昇することになる。日産自動車が新車種の製造を英国サンダーランド工場から日本に切り替えると発表した。日産に続きホンダもイギリスにある工場を閉鎖する。イギリスの産業空洞化が進むことは避けられない。
4.移民労働者に反感を抱いているのは、イギリスだけではない。ヨーロッパは難民・移民問題に揺れている。ドイツは、もともとトルコからの移民が多い国である。メルケル首相は、「第2次世界大戦が始まってしまったのはナチスの過激な人種主義によるユダヤ人の追害が原因だった。ホロコーストという悲劇を許した」という反省から、多くの少数民族や困っている難民を受け入れようという決断をした。
5.シリアからの難民を含め、100万人もの難民を受け入れた。100万人の難民を受け入れればその中には犯罪者も出てくる。2018年8月、ドイツ東部で難民申請者として入国した中東出身の男らが、ドイツ人男性を殺害する事件があった。これに対して「難民を受け入れるからこんなことになるんだ」という声が広がり、この事件が発端となって、難民や移民を排斥しようといういわゆる新しいナチズム(ネオナチ)、ナチスとそっくりな団体がいまドイツで急速に支持率を伸ばしている。ドイツでは、ナチスのシンボルであるカギ十字を掲げたり、人種差別的なメッセージを打ち出したりすることは法律で禁じられているが、これまでにないようなネオナチの大集会がドイツ各地で行われている。
6.2018年9月には、スウェーデンで議会総選挙があった。スウェーデンというと、「福祉国家」という良いイメージを持っているが、この選挙で最大の争点になったのが移民や難民の問題である。シリア内戦を逃れ、スウェーデンに押し寄せた難民の数は16万人を超える。最初は寛容に受け入れていたが、急増する難民は福祉や医療の大きな負担になった。移民や難民は、スウェーデンの人たちが納めた税金でつくられている社会保障にタダ乗りをしているという不満が急激に高まり、反移民・難民を掲げた右派の「スウェーデン民主党」という極右政党が勢力を伸ばした。ヨーロッパが急激に閉鎖的になってきている。北欧では、これまでは街で黒人を見かけることなどなかったのですね。自国民の白人ばかり、だから理想主義で大量の難民を受け入れた。中東からの難民の中には「寒すぎる」と不満を言い出す人もいる。スウェーデン政府はあまりに大量の難民が来たため受け入れ先に困り、豪華客船を港につけて収容した。そこまでしても不平不満を言い、挙句の果てに難民が暴動を起こし、警察車両へ放火したりした。難民に対する反感も広がっている。
7.寛容さをなくし、瓦解しそうなヨーロッパを一生懸命つなぎとめようとしているのが、ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領である。ドイツでは難民・移民政策を巡る内部対立が痛手となり、メルケル首相率いるドイツキリスト教民主同盟(CDU)の支持率が過去最低に落ち込んだ。メルケル首相は党首を辞任すると発表した。フランスのマクロン大統領もメルケル同様に支持率の低下が止まらない。マクロンは、もともと支持率はそう高くなかったが、極右政党「国民連合」のルベンを勝たせてはならないという消去法で大統領に選ばれた。マクロンの考え方は「フランスは労働者の権利が守られ過ぎている。労働者がクビにならないから若者が就職できず、失業率が高い。もっと労働者の流動性を高くすれば、長い目で見ればフランス経済のためになる」、富裕層を優遇する税制改革を行ったのも、「富裕層に高い税金をかけたらみんなベルギーへ逃げてしまう。国外へ逃げられるくらいならフランス国内に留まって税金を払ってもらったほうがいい」である。あるいは燃料税を引き上げようとしたのは、「燃料の消費を減らして温暖化をストップさせよう。地球温暖化対策のためには電気自動車だ」。これらがことごとく庶民の反感を買った。燃料税の引き上げへの抗議をきっかけに始まったのが「黄色いベスト運動」である。フランスでは何かあったときのために、全車両が視認性の高い蛍光黄色のベストを車内に搭載するよう法律で義務付けられている。パリなど都市部は公共交通機関が発達しているが、田舎へ行くと車がないと移動できない。黄色いベストはトラック運転手や、田舎の労働者のシンボルである。彼らは都市部と地方の格差に不満を募らせている。
8.マクロンはエリートで富裕層に属する。デモに参加する年金生活者や低賃金で働く労働者の気持ちを理解できていたか疑問である。大統領就任当初は19世紀のルイ・ナポレオンより1歳若く、史上最年少で大統領にと期待されたが、ベテランの政治家はマクロンのもとを去った。マクロンが嫌われる理由は、エリート意識と「上から目線」である。
9.2018年11月11日、マクロン大統領は第1次世界大戦終結から100年を記念する式典で、アメリカのトランプ大統領やロシアのプーチン大統領などが参列する中、演説を行い、その中で「自国利益が最優先で他国のことなど構わない、というナショナリズムに陥るのは背信行為だ。いま一度、平和を最優先にすると誓おう」と訴えた。ごもっともだが庶民からすると、世界では、反グローバリズム、反エリートのムードが高まっている。明らかに逆風が吹き、苦境に立たされるマクロン政権は崖っぷちである。ルペン大統領の誕生などありえないと思うが。2019年4月28日に投票が行われたスペイン総選挙では国政に進出した極右政党「VOX(ボックス)」が驚異の躍進を果たした。同党が掲げているのは「スペインを再び偉大な国に」である。
10..バルカン半島の小国マケドニアはギリシャの北にある国で、マケドニア王・アレクサンダー大王が支配した国の名です。旧ユーゴスラビアの一部でしたが、解体した後、マケドニアは国家として独立した。これに対し、南隣のギリシャが「許せない!」と猛反発した。「マケドニアは我々ギリシャの歴史上の名前だ。勝手に名乗るな」という。紀元前4世紀のマケドニアは、いまのギリシャ(北側)とマケドニアにまたがっていた。以前は旧ユーゴスラビアの一自治共和国だったからギリシャは何も言わなかった、「国」となれば話は別である。1993年にマケドニアが国際連合に加盟するとき、ギリシャが猛反対をした結果「マケドニァ旧ユーゴスラビア共和国」という名前で加盟を果たした。EUにマケドニアの名前で加盟することには、頑として反対してきた。ギリシャの反対で、西側の一員になれないままだった。マケドニア政府がギリシャ政府と交渉をして、「北マケドニアという名前に変更する」と折れた。ギリシャ議会は譲歩する」と表明した。この「国名を北マケドニアに変更すること」の賛否を問う国民投票が2018年9月に行われ、投票の結果、賛成が90%を超えたが、投票率は約37%にとどまった。国民投票の結果が効力を発揮するには50%以上の投票率が必要と定められており、国民投票は無効となったが、政府は国名を変更することにした。
11.しかし、この過程でロシアが介入し、フェイクニュースで反対をあおったと言われています。ユーゴスラビアを構成していたのはスロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケッドニアである。ユーゴスラビアが解体後、この中からスロベニア、クロアチアがEUの仲問入りし、モンテネグロはNATOに加盟している。ユーゴスラビアとは「南スラブ人の国」という意味で、ロシアの主流民族である東スラブ人とは同類である。それがロシアの影響下から剛れてEUやNATOに入るのは許せない。だから、「マケドニアを認めない」と言っているギリシャ人を扇動したという
12.ギリシャとロシアにはある共通点は東方正教である。ロシアの仮想敵国はEUであり、アメリカである。バルカン半島にEUやアメリカの影響力が及ぶことにロシアは警戒心を高めている。2016年のアメリカ大統領選挙で、「ヒラリー・クリントンがイスラム国に武器を提供していた、とか「ローマ法王がトランプを支持」とかいったトランプに有利なフェイクニュースが多く流れた。ニュースの発信源はマケドニアで、政治には興味のないマケドニアの10代の若者たちが金儲けのために勝手にやったと考えられていたが、最近になり、仕掛けたのはロシアという疑惑が出てきた。今回のマケドニアの国民投票の際も「EUやNATOに加盟すると自主性が奪われる」「国の分裂につながる」といったフェイクニュースを流していると言われている。バルカン半島が再び「火種」になることが心配である。


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工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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