2019年10月09日

第2次安倍晋三政権は、効果がないことが分かっている金融緩和政策で貴重な時間を空費した。この間にも、世界は大きく変わった。


「野口悠紀雄著:2000年代の円安で日本製造業が偽りの復活、週刊ダイヤモンド、2019.8.24」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.1990年代末の金融危機で、日本の金融機関の姿は大きく変わった。戦後経済を支えてきた金融体制は崩壊した。また、中国の工業化に押されて、鉄鋼業などそれまでの日本の基幹産業が不調に陥っていた。この象徴が、「スペースワールド」である。
2.新日本製鐵(現日本製鉄)は、すでに90年から、八幡製鉄所の一部をこの名称の宇宙テーマパークにしていた。鉄鋼業の業績は、それほど悪化していた。「超」整理日誌7に収録したのは、次のような記事で、どれも、日本の経済政策に不満を表明している。「金融緩和では問題は解決しない」「必要なのは構造改革だがそのシグナルが見えない」「経済政策が短期的バイアスを持っている」「円安で痛み止めをしても問題は解決しない」である。
3.04年春から1年間、アメリカのカリフォルニア州にあるスタンフォード大学に滞在した。この間にも、超」整理日記の連韓を続けた。ゲラのやりとりも、PDFをメールに添付することで、日本にいるのと全く同じように、支障なくできた。ITはその前から私の仕事の進め方に大きな影響を与えていたのだが、海外で仕事をすることになって、その効果がはっきりと目に見える形で現れた。この10年前ではもちろん、5年前においてさえ、海外にいて連載を続けることなど考えられなかった。60年〜70年代と比べれば、実に大きな変化である。飛行機は、この間にあまり変わらなかった。自動車もそれほど大きく変わったわけではない。しかし、情報環境だけは比較にならないほど大きく変わった。
4.インターネットは、情報収集の手段として重要性を増していた。ただし、新聞や雑誌も重要だった。大学にいたので、日本の新聞を読むことはできたが、あまり丹念に読む気にはなれなかった。その代わりに地元の新聞を購読していた。人間は、「住んでいる土地に関する情報に関心を抱く」という不思議な習性を持っている。インターネットが出版に与える影響は顕在化しつつあり、私も危機感を強めて、なんとか対応しなければと努力した。
5.スタンフォード大学は、シリコンバレーの中心にある。これは、サンフランシスコの南、サンフランシスコ湾に面した地域で、パロアルトなどの町で形成される都市群である。さまざまなIT企業の本拠地がある。ここでの1年間の滞在で、世界の大きな変化を実感することができた。第1は、IT関連企業の急成長だ。滞在中にグーグルの株式公開(IPO)が行われた。検索やGmailなどのグーグルのサービスは、すでに広く使われていた。ただし、グーグルマップはなかった。このため、ドライブしていて道に迷うことがしばしばあった。
6.アップルは、まだ小さな会社だった。スタンフォード大学では、研究室にアップルのパソコン(PC)を配備していたのだが、ウインドウズ・マシンが圧倒的なシェアを持つ中で、これは珍しい風景だった。インターネット関連企業としては、これらの企業よりむしろ、ルーターのメーカーであるシスコ・システムズが注目されていた。
7.インターネットは、すでに生活の重要なインフラになっていた。税の申告も簡単にできる。日本の運転免許証の書き換えのために帰国しなければならなかったので、日米両国の差を思い知らされた。実感したもつ一つの世界の変化は、中国の発展である。これは、留学生の状況にはっきりと表れていた。中国からの留学生は急増しており、しばらく前から、スタンフォード大学の外国人留学生の中でトップになつていた。80年代には日本人の留学生が多かったのだが、明らかに逆転した。時代の大きな変化を感じた。中国からの留学生は、「パーリンホウ」と呼ばれる世代(80年代以降に生まれた世代)の人々である。驚くほど優秀である。これらの人々が中国を動かす時代になれば、大きな変化が生じるだろうと予想できた。そうした変化が今、実際に起きている。
8.「日本にも夢はあるはず」で、中国の状況について、次のように書いた。「能力ある若君が、ハングリー精神にあふれて努力している。(中略)こうした人的能力の大爆発こそ、最大の脅威というべきではある」。日本経済の閉塞的状況が、03年ごろから変わってきた。財務大臣の権限によって決定され、その指示に基づいて日本銀行が実施する外国為替市場への大規摸な介入が始まり、為替レートは大幅な円安に動いた。日本の製造業が復活した。
9.だが、宇宙テーマパークに手を出すほど業績が悪化した製鉄会社が復活するのは、不可能なことと思われた。シリコンバレーでは、全ての自動車がトヨタ自動車の車になったかと思われるほど、トヨタ車が氾濫した。これも実に奇妙な光景だった。その頃、アメリカでは住宅価格のバブルが生じていた。このメカニズムを考えているうちに、トヨタ車の氾濫と関係があるのではないか、と気付いた。アメリカの住宅価格バブルは、日本や中国の経常収支の黒字によって生じたアメリカへの資金流入が住宅に投資されることで引き起こされたものであり、日本の輸出増も、このメカニズムの一環だった。
10.帰国した05年から、悠長に構えてはいられないという切迫感から、経済一色になった。日本経済は本当に復活したのか?である。08年にリーマンショックでアメリカの住宅バブルが崩壊すると、日本の輸出も激減した。「超」整理日記もこの問題に集中し、単行本のタイトルで見ると、08年版は『円安バブル崩壊金.融緩和政策の大失敗』と『世界経済危機日本の罪と罰』、09年版は『未曾有の経済危機克服の処方箋』、10年版は『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』「日本を破滅から救うための経済学』である。
11.中国経済もリーマンショックで崩壊するかと思われたが、復活した。復活しただけではない。今や世界一の経済大国に向かって驀進を続けている。日本はどうかというと、民主党政権は、期待をばらまいただけだった。第2次安倍晋三政権は、効果がないことが分かっている金融緩和政策で貴重な時間を空費した。この間にも、世界は大きく変わった。


yuji5327 at 07:20 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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