2019年10月10日
世界企業の売上高トップ500社の番付の2019年版を発表した。ランク入りした数は中国系企業が129社(台湾系企業10社含む)で米国の121社を抜き、世界一となった。
「真家陽一(名古屋外国大教授):中国視窓、再編で巨大化する国有企業本業集中で強さを追及、週刊エコノミスト、2019.8.27」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.経済誌『フォーチュン』は7月22日、世界企業の売上高トップ500社の番付「フォーチュン・グローバル500」の2019年版を発表した。ランク入りした数は中国系企業が129社(台湾系企業10社含む)で米国の121社を抜き、世界一となった。
2.中国企業の躍進に貢献しているのが国有企業である。中でも、「中央企業」と呼ばれる大型の国有企業は129社中と約4割を占めた。トップ10入りした中国石油化工集団(2位)、中国石油天然ガス集団(4位)、国家電網(5位)はいずれも中央企業である。
3.国有企業の規模拡大の背景には、政府主導の再編がある。中国共産党と国務院は15年9月、「国有企業改革の深化に関する指導意見」を公表した。「より強く、より優秀で、より大きく」をスローガンに「20年までに決定的な成果を収める」として、経営統合を通じた再編を進めてきた。中央企業は12年初めの117社から今年7月末には96社に集約され、現在も国有造船大手の中国船舶工業集団と中国船舶重工集団の経営統合などが進められている。
4.中国の企業研究で著名な北京新世紀グローバル企業研究所の王志楽所長は「内需の急成長が企業規模の拡大に重要な基盤を与えたことに加えて、多くの中国企業の戦略的再編により順位が押し上げられた」と指摘する。国有企業改革は「より大きく」という観点では一定の成果が得られたと言える。しかし、「より強く、より優秀で」の点ではまだ課題がある。王所長は「売り上げが多くても企業の収益性が高いとは限らない。中国企業は大きさではなく、強さを追求する方向へ転換する必要がある」と強調する。
5.こうした中、中国政府は国有企業の再編を次の段階に移行させようとしている。国資委の彰報道官は7月16日、国務院新聞弁公室主催の記者会見で、設備製造、船舶、化学工業などの分野で中央企業の再編・大型化を引き続き推進するとした一方、「本業をより強く、より優秀にすることを一層重視し、専業化のための整理・統合を推進する」と強調。今後は電力、非鉄金.属、鉄鋼、環境保護などの分野で、本業に資源を集中させる「専業化」を進め、企業競争力の向上を図る方針を示した。
6.中国企業研究院の李錦執行院長は「今後1〜2年は、専業化に向けた再編の動きが相次ぐだろう」と指摘する。中国経済の減速を受け、中央企業は19年上半期の売上高の伸びが前年同期から3・7ポイント低下するなど業績が悪化しており、再編の機運を高める可能性もある。
7.日本はかつて、国鉄や電電公社といった公営企業を分割民営化して競争原理を導入し、効率やサービスを向上させた。中国の国有企業の再編はこれとは正反対のやり方で、弱みである生産性の低さが改善されるかは不透明である。とはいえ、国有企業の規模が再編でさらに拡大すれば、グローバル競争において日本の大きな脅威となり得る。決定的な成果を収めると宣言した来年に向け、今後の再編の動向を注視する必要がる。