2019年10月11日
ベネズエラに2人の大統領が誕生して、国が大混乱している。石油価格が下落してもチャベスはバラマキ政策を続けた。バラマキ政策は簡単には止められない。財政は悪化する。
「池上彰著:
知らないと恥をかく世界の大問題、角川新書、2019.6.10」は面白い。「第1章:居座るトランプ・アメリカファースト主義」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.米中が対立しているのは南米のベネズエラである。ベネズエラの国民生活は破綻状態である。国民の1割にあたる約300万人が難民となって周辺国家に逃げ出している。ベネズエラは、20世紀に入り貧しい農業国から豊かな国に発展した国である。世界最大級の油田が発見されたからである。OPEC(石油輸出国機構)を組織しようと言い出したのもベネズエラである。親米政権時はベネズエラの石油資源への利権をアメリカが握っていた。これを自国に取り戻そうと大統領になったのがウゴ・チャベスだった。反米姿勢を打ち出し、キューバのフィデル・カストロを尊敬して社会主義国家を目指した。チャベス政権の追い風となったのが、石油価格の上昇である。2008年には国際的な石油価格が1バレル:40ドルを超え、ベネズエラは大いに潤った。大統領だったチャベスは、この石油収入をもとに高度な福祉社会を目指し、バラマキ政策を行った。石油資源に恵まれていると、通貨が高くなり、輸入には有利だが輸出には不利になり、国内産業が育ちにくくなった。とりわけチャベス政権は貧困層のために食料などの価格を抑えこんだため、国内の農家などの生産意欲が低下し、ニンジン1本も輸入に頼る経済構造になった。
2.かつてオランダも北海油田が見つかって急激に豊かになったとたん、国内産業が壊滅的になった。これをイギリスの経済学者リチャード・アウティが「資源の呪い」と名付けた。天然資源の輸出の拡大が国内の製造業を衰退させる現象をオランダ病といい、ベネズエラはオランダ病にかかっていた。サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)も同様である。日本は資源がなかったおかげでオランダ病にはかからなかった。
3.ベネズエラに「2人の大統領」が誕生して、国が大混乱している。石油価格が下落してもチャベスはバラマキ政策を続けた。バラマキ政策は簡単には止められない。財政は悪化する。お金がなければ刷ればいい。刷りまくれば、お金の価値は下がり、輸入ができなくなり国内の需要を満たすことができなくなる。需要があるのに供給が減ると、インフレになる。
4.IMF(国際通貨基金)によればベネズエラの2018年のインフレ率は1000万%。年初に100円のものが年末には10億円になっている。お金がなければ借金をすればいいが、反米国家にアメリカはお金を貸さない。ベネズエラにお金を貸したのが、中国やロシアである。負の遺産を置いて2013年3月、チャベス大統領ががんのため死去すると、後を継いだのが副大統領だったニコラス・マドゥロだった。マドゥロはチャベスに心酔していたから、チャベス時代の政策を引き継いだ。その結果、国内経済は破綻し、治安も悪化して国民が周辺国家に逃げ出している。そのマドゥロ大統領の任期は2019年1月9日までだったが、2018年5月に前倒しの選挙を実施した。理由は、2019年1月まで待っていると負けそうだからである。このとき、マドゥロ大統領は対立候補になりそうな野党幹部を次々に捕まえて投獄して立候補できないようにした。
5.選挙でマドゥロ大統領は再選を果たしたものの、こんな選挙は認められない、大統領は不在というのが野党の主張である。そして2019年の1月10日、マドゥロ大統領の当初の任期が切れた。ベネズエラの憲法の規定では、「大統領が不在になった場合は、国会議長が暫定大統領に就き、30日以内に大統領選挙を実施する」ことになっている。野党が多数を占めている議会は、国会議長のフアン・グアイドを暫定大統領に任命したが、しかし最高裁判所の裁判長は、チャベスやマドゥロが任命しているためグアイドを大統領として認めなかった。かくして大統領が2人になり、どちらを正式な大統領とし、ロシアや中国はマドゥロばくだいを大統領と認めています。ロシアも中国もベネズエラに莫大な資金を貸しているので、マドゥロ政権が倒れたら貸したお金を取り戻せないと考えている。ロシアは、マドゥロ大統領を守るために民間の軍事会社の要員100人を派遣した。民間の軍事会社というのはロシア軍の特殊部隊です。クリミア半島を占領するときに絶大な力を発揮した。
6.一方、アメリカはグアイドを大統領と認めている。南米を自らの裏庭と考えるアメリカにとって、ロシアや中国と親密な反米国家は許せない。やっかいなのは、反米国家なのに石油を売っている最大の相手国がアメリカだったことで、アメリカは、ベネズエラから石油は買わない、という経済制裁に出た。これが大打撃となり、ベネズエラ経済が大混乱に陥っている。アメリカはマドゥロ大統領を追い落とそうと、軍事力の行使をちらつかせている。グアイドのバックには、アメリカがついおり、アメリ力対中国・ロシアの代理紛争に国民が翻弄されている。
7.アメリカ大統領選挙は、2020年2月から民主党の大統領候補を選ぶ予備選挙が始まる。注目しているのはテキサス州出身のべト・オルークで、2019年3月14日に立候補を表明した。下院議員を3期務め、2018年の中間選挙ではテキサスの上院議員選挙に立候補した。伝統的に共和党が強いテキサス州で現職のテッド・クルーズ上院議員の議席を争い、注目を集めた。敗れはしたが、保守地盤にもかかわらず僅差まで追い上げて、全米の民主党支持者を興奮させた人物です。さわ現在46歳の彼は、弁舌爽やかでアイルランド系白人ながらオバマ二世などと呼ばれている。「べト」というのはスペイン語でのニックネームである。本当はロバート・オルークという名前なのに、ヒスパニック票を意識して「ロベルト」と言い、ニックネームのべトだけにしている。テキサスではヒスパニックの人口がどんどん増えているからである。
8.もう一人の注目はバーニー・サンダースである。前回の大統領選挙でヒラリー・クリントンと民主党の大統領候補を争って敗れた人物である。確かに「サンダース待望論」はあるが、現在77歳。仮に大統領に当選したらすぐに80歳になる。マレーシアで92歳のマハティール・ビン・モハマドが首相に返り咲いたという例もあるものの、アメリカ大統領の責任の重さや激務であることを考えると大変である。野党・民主党候補には、これまでに男性15人、女性6人が名乗りを上げている。
知らないと恥をかく世界の大問題、角川新書、2019.6.10」は面白い。「第1章:居座るトランプ・アメリカファースト主義」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.米中が対立しているのは南米のベネズエラである。ベネズエラの国民生活は破綻状態である。国民の1割にあたる約300万人が難民となって周辺国家に逃げ出している。ベネズエラは、20世紀に入り貧しい農業国から豊かな国に発展した国である。世界最大級の油田が発見されたからである。OPEC(石油輸出国機構)を組織しようと言い出したのもベネズエラである。親米政権時はベネズエラの石油資源への利権をアメリカが握っていた。これを自国に取り戻そうと大統領になったのがウゴ・チャベスだった。反米姿勢を打ち出し、キューバのフィデル・カストロを尊敬して社会主義国家を目指した。チャベス政権の追い風となったのが、石油価格の上昇である。2008年には国際的な石油価格が1バレル:40ドルを超え、ベネズエラは大いに潤った。大統領だったチャベスは、この石油収入をもとに高度な福祉社会を目指し、バラマキ政策を行った。石油資源に恵まれていると、通貨が高くなり、輸入には有利だが輸出には不利になり、国内産業が育ちにくくなった。とりわけチャベス政権は貧困層のために食料などの価格を抑えこんだため、国内の農家などの生産意欲が低下し、ニンジン1本も輸入に頼る経済構造になった。
2.かつてオランダも北海油田が見つかって急激に豊かになったとたん、国内産業が壊滅的になった。これをイギリスの経済学者リチャード・アウティが「資源の呪い」と名付けた。天然資源の輸出の拡大が国内の製造業を衰退させる現象をオランダ病といい、ベネズエラはオランダ病にかかっていた。サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)も同様である。日本は資源がなかったおかげでオランダ病にはかからなかった。
3.ベネズエラに「2人の大統領」が誕生して、国が大混乱している。石油価格が下落してもチャベスはバラマキ政策を続けた。バラマキ政策は簡単には止められない。財政は悪化する。お金がなければ刷ればいい。刷りまくれば、お金の価値は下がり、輸入ができなくなり国内の需要を満たすことができなくなる。需要があるのに供給が減ると、インフレになる。
4.IMF(国際通貨基金)によればベネズエラの2018年のインフレ率は1000万%。年初に100円のものが年末には10億円になっている。お金がなければ借金をすればいいが、反米国家にアメリカはお金を貸さない。ベネズエラにお金を貸したのが、中国やロシアである。負の遺産を置いて2013年3月、チャベス大統領ががんのため死去すると、後を継いだのが副大統領だったニコラス・マドゥロだった。マドゥロはチャベスに心酔していたから、チャベス時代の政策を引き継いだ。その結果、国内経済は破綻し、治安も悪化して国民が周辺国家に逃げ出している。そのマドゥロ大統領の任期は2019年1月9日までだったが、2018年5月に前倒しの選挙を実施した。理由は、2019年1月まで待っていると負けそうだからである。このとき、マドゥロ大統領は対立候補になりそうな野党幹部を次々に捕まえて投獄して立候補できないようにした。
5.選挙でマドゥロ大統領は再選を果たしたものの、こんな選挙は認められない、大統領は不在というのが野党の主張である。そして2019年の1月10日、マドゥロ大統領の当初の任期が切れた。ベネズエラの憲法の規定では、「大統領が不在になった場合は、国会議長が暫定大統領に就き、30日以内に大統領選挙を実施する」ことになっている。野党が多数を占めている議会は、国会議長のフアン・グアイドを暫定大統領に任命したが、しかし最高裁判所の裁判長は、チャベスやマドゥロが任命しているためグアイドを大統領として認めなかった。かくして大統領が2人になり、どちらを正式な大統領とし、ロシアや中国はマドゥロばくだいを大統領と認めています。ロシアも中国もベネズエラに莫大な資金を貸しているので、マドゥロ政権が倒れたら貸したお金を取り戻せないと考えている。ロシアは、マドゥロ大統領を守るために民間の軍事会社の要員100人を派遣した。民間の軍事会社というのはロシア軍の特殊部隊です。クリミア半島を占領するときに絶大な力を発揮した。
6.一方、アメリカはグアイドを大統領と認めている。南米を自らの裏庭と考えるアメリカにとって、ロシアや中国と親密な反米国家は許せない。やっかいなのは、反米国家なのに石油を売っている最大の相手国がアメリカだったことで、アメリカは、ベネズエラから石油は買わない、という経済制裁に出た。これが大打撃となり、ベネズエラ経済が大混乱に陥っている。アメリカはマドゥロ大統領を追い落とそうと、軍事力の行使をちらつかせている。グアイドのバックには、アメリカがついおり、アメリ力対中国・ロシアの代理紛争に国民が翻弄されている。
7.アメリカ大統領選挙は、2020年2月から民主党の大統領候補を選ぶ予備選挙が始まる。注目しているのはテキサス州出身のべト・オルークで、2019年3月14日に立候補を表明した。下院議員を3期務め、2018年の中間選挙ではテキサスの上院議員選挙に立候補した。伝統的に共和党が強いテキサス州で現職のテッド・クルーズ上院議員の議席を争い、注目を集めた。敗れはしたが、保守地盤にもかかわらず僅差まで追い上げて、全米の民主党支持者を興奮させた人物です。さわ現在46歳の彼は、弁舌爽やかでアイルランド系白人ながらオバマ二世などと呼ばれている。「べト」というのはスペイン語でのニックネームである。本当はロバート・オルークという名前なのに、ヒスパニック票を意識して「ロベルト」と言い、ニックネームのべトだけにしている。テキサスではヒスパニックの人口がどんどん増えているからである。
8.もう一人の注目はバーニー・サンダースである。前回の大統領選挙でヒラリー・クリントンと民主党の大統領候補を争って敗れた人物である。確かに「サンダース待望論」はあるが、現在77歳。仮に大統領に当選したらすぐに80歳になる。マレーシアで92歳のマハティール・ビン・モハマドが首相に返り咲いたという例もあるものの、アメリカ大統領の責任の重さや激務であることを考えると大変である。野党・民主党候補には、これまでに男性15人、女性6人が名乗りを上げている。
yuji5327 at 06:33