2019年10月17日

不確実な未来での新事業を、直感と試行錯誤で行動するベンチャー型の人材が求められ、複数のベンチャー企業に投資し、失敗も計算に入れ、投資リターンを得る。


「校條浩著:両利きの経営と参謀、週刊ダイヤモンド、 2019.08.31」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.デジタル化の大きな波の中で、全ての企業で事業のイノベーションが課題となっている。既存企業でのイノベーションへの取り組みで問題になるのが、「イノベーションのジレンマ」である。これは、「優良な企業が顧客に対応して努力すればするほどイノベーシヨンから遠ざかり、新たな挑戦者(イノベーターや破壊者)に足をすくわれる」というジレンマのことで、クレイトン・クリステンセン氏が著書の中で解き明かしたものである。この本は今や世界中の企業経営者、幹部のバイブルとなっている。
2.イノベーションのジレンマを理解すると、次に「既存企業は外からの挑戦者による破壊的な力の前に、なすすべはないのか」という疑問が湧いてくる。そこで、私は既存組織の"城壁"の外側に独立したベンチャー組織をつくり、そこでつくられた新事業を「トロイの木馬」のように城壁の中に引き入れるモデルを提唱してきた。木馬(新事業)の開発途中では、なるべく既存組織の影響を受けないようにすることが最重要と信じていたからである。既存のビジネスモデルとは異なる新事業をつくることは、管理・秩序を重んずる閉鎖的な古い組織の中では難しい。だから、物理的にも企業本体から切り離して開発する必要がある。ただ、新しい組織をつくるだけでは回らない。そこに集う企業の従業員たちは既存事業の規範が身に付いていて、失敗を恐れず試行錯誤しながら木馬をつくるという、イノベーション追求に必要な文化を持っていないからである。
3.そこで要となるのが、経営トップである。経営トップは「新しい事業分野にチャレンジするコミットメントを表明せよ」。イノベーシヨンが分からないことを勇気を持って認め、新しい組織のリーダーやイノベーション人材を探索・選択することに自らコミットせよ」「新事業創造の組織に合った人事政策のビジョンづくりをけん引すべき」は新時代の経営トップに課せられたことである。
4.スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・オライリー教授は、新時代の経営トップに課せられることを、豊富な研究事例を基に「両利きの経営」であると提唱し、脚光を浴びている。「両利き」とは新事業の探索・創造と既存事業の維持・深化をあえて両方追求する経営を指す。今では、オライリー教授の下で学ぼうとする経営トップ・幹部が、日本を含む世界中から集まってくる。「トロイの木馬型」でも、「両利きの経営」でも、経営トップに課せられるハードルは高くなる。実際、オライリー教授が取り上げている例を見ても、その難しさが分かる。
5.オライリー教授は、IBMとシスコシステムズが2000年ごろに既仔事業から転換していく苦難の過程を紹介している。どちらも、サミュエル・パルミサーノ氏(IBM)、ジョン・チェンバース氏(シ一スコ)という名経営者が、新事業組識と既仔事業組織のシナジーを求めて自社をけん引した。両氏は、両利きの事業運営を成功させるために、新事業創造の戦略的方向性を明示し、その活動を保護、支援。さらに異なる文化の組織を設計し、共通の価値観を提示するという難題を、全て実行してみせた。彼らのような実力者だからこそ成し遂げられた。
6.結果としてシスコはIBMほどの成果を上げられなかった。チェンバース氏の新事業創造のビジョンの具体性が不十分だったことと、乱立したプロジェクトの絞り込みが足りなかったのが原因だといわれている。ただこれは、経営トップに未来を見通すセンスや嗅覚が求められることを意味しており、これでは、どんなに優秀な経営トップでも、イノベーション活動をけん引するのは困難だろう。むしろ必要なことは、経営トップのエンパワーメントだ。イノベーションのために経営トップに課せられた能力は、それまでの能力とは異質であり、既存事業で培われた能力だけでは早晩破綻する。あのチェンバース氏でさえ足りなかった。
7.筆者が堤案したいのが「イノベーション型企業参謀」である。経営コンサルタントの大前研一氏が1975年に著した『企業参謀』では、経営トップの近くに戦略的思考家のグループを置くことを提案している。この「戦略的思考家グループ」とは、「組織の中にあって、外部にあるような極めて客観性と独立性の強いトップレベルの参謀グループ」であり、参謀とは「単にスタッフ的に作動するだけでなく、企業の運命を左右するトップの精神を持ち、企業体の頭脳中枢として戦略行動方針を策定し、それをラインへ実行させる独特の力を持つ」ものである。8.今経営トップに足りないのは「戦略的思考」の参謀ではなく、「イノベーション的思考」を持つ参謀である。前者が事実と分析に基づいて論理的に考えるMBA型なら、後者は不確実な未来での新事業を、直感と試行錯誤で行動するベンチャー型の人材である。求められる能力は、未来のビジョンを持って複数のベンチャー企業に投資し、投資先の失敗も計算に入れながら投資リターンを得るベンチャーキャピタルに似ている。さらに、参謀は経営トップの精神を自ら持っていることが重要である。「数十年先に会社の経営トップになる」ということを本気で思いながら企業の針路を考えている人材である。そこには部下という意識はなく、経営トップとはあくまで対等の意識でなくてはいけない。
9.もう一つ大事なのは、若いことである。未来に対する真剣度と感度が違う。さらに、現業の成績に対する責任がないことで、自由な発想ができ、失敗を恐れる気持ちも小さい。ただ、イノベーション型企乗参謀はそもそもあまり存在しないのと、存在していても企業の外からは見えにくい。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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