2019年10月21日
無性生殖の場合、自分自身を分裂させて次世代をつくるので、子どもの遺伝子構成は、親と同じになる。そうすると、多様性が生み出されないので、環境の変化に対応しにくい。
「シビアな軍拡競争の結末、週刊ダイヤモンド 2019.9.7」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる「長谷川眞理子(国立大学法人総合研究大学院大学学長)著:『雄』と『雌』はなぜあるのか? 」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.多くの動物には、雄と雌という二つの性がある。雄と雌が遺伝子を混ぜ合わせて次の世代をつくる繁殖様式を、有性生殖と呼ぷ。人間の目に見えるような生物の多くは有性なので、それが当然のように思えるが、「増える」「次世代をつくる」という点では、有性である必然性はない。自分自身の体を分裂させて増やしていけばよいからである。これを無性生殖と呼び、目に見えない微生物の多くは無性である。
2.無性生殖の場合、自分自身を分裂させて次世代をつくるので、子どもの遺伝子溝成は、親と同じになる。そうすると、多様性が生み山されないので、環境の変化に対応しにくい。そこで、他個体と遺伝子を混ぜ介わせれば、多様性が積極的につくられるので、変化に対応できる子どもが残る。だから、有性生殖は有利である。しかし、他個体と遺伝子を混ぜ合わせるのが有利だとして、それが雄と雌という2つになる理由が問題である。
3.雄と雌がなくても、誰かと混ぜ合わせればよく、そもそも雄とは、雌とはというのが問題である。次世代をつくるための細胞である配偶子の違いである。配偶子とは、次世代をつくるためだけに用意される細胞である。異なる個体からやって来た配偶子が一緒になって子どもをつくるので、遺伝的に多様な子どもができるのが利点である。それだけならば、配偶子自体の大きさに差異がある必然性はない。
4.しかし、多くの生物は、大きな配偶子と小さな配偶子の2種類を持っている。大きな配偶子が卵で、小さな配偶子が精子である。卵を生産する個体が雌、精子を生産する個体が雄である。配偶子は次世代をつくるための細胞だから、遺伝子を運んでくるのが仕事であり、持ってくる遺伝子の量に違いはない。大きさの違いは、栄養をつけているかいないかの違いである。卵が精予よりも大きいのは、栄養をたくさん持っているからである。二つの配偶子が合体して受精卵が生じたとき、その生存のために当面の栄養が必要である。その栄養を提供しているのが卵である。子どもの生存には雄も雌も同等の責任を持つべきなのに、卵だけに栄養を持たせるのは、精子は無責任ということになる。
5.興味深い事実がある。動物の細胞には、ミトコンドリアという器官が含まれている。ミトコンドリアの主な働きは、酸素呼吸を通して細胞にエネルギーを供給することである。ミトコンドリアは、独特の構造を持ち、独自の遺伝子を持っているので、もともとは別の生物だったと考えられている。このミトコンドリアは、卵にも精子にも含まれているのだが、子どもに伝えられるのは、母方由来のミトコンドリアだけである。
6.植物の細胞には葉緑体という器官がある。これは、植物にとって大変に重要な光合成という過程をつかさどる器官である。この葉緑体も、もともとは別の生物だったと考えられている。そして、子どもに伝えられるのは、母方由来の葉緑体だけである。こうして見てくると、卵は栄養を持つが、精子は栄養を持たないという分類もあるが、卵はミトコンドリアや葉緑体といった細胞内の小器官を子どもに伝えられる配偶子、精子はそれを伝えられない配偶子という分類もある。そして、細胞内小器官の母性遺伝が先か、それとも大きさの違いが先かというと、母性遺伝の方が先である。この地球上に生息している原始的な生物の中には、配偶子の大きさに差がないものもある。このような生物であっても、配偶子にはなんらかのタイブの違いがあって、細胞内小器官の遺伝に関しては、どちらか一方からしか受け付けないという原則がある。
7.ミトコンドリアの元になったのは、プロテオバクテリアという細菌の仲聞だった。プロテオバクテリアは、酸素呼吸する細菌の仲聞で、およそ20億年前に、他の生物の細胞に飛び込んで、細胞内共生を始めた。当時の多くの細胞は、酸素呼吸をしない「嫌気性」生物だったのが、プロテオバクテリアを体内に取り込むことによって、酸素をエネルギー源として生きることができるようになった。そういう生物の中から、動物が進化した。
8.葉緑体の元になったのは、シアノバクテリアという細菌だと考えられている。シアノバクテリアは、光合成をする能力を持った細菌で、およそ10億年前、すでにミトコンドリアを体内に取り入れていた細胞の中で共生を始めた。これが緑色植物の元になった。
9.生物は、自己複製して存続する。自分自身が生存して、自分の複製を残す作業は決して楽ではなく、競争が激しい。この競争では、少しでも他より多く複製を残せたものが、次の世代に増えていく。
10.他の細胞に取り込まれたバクテリアは、取り込まれた細胞の持ち主〔宿主)とはまったく異なる生.物である。彼らは、自分自身の複製を少しでも多く残したい。宿主の細胞が別の細胞と配偶するのはよいが、バクテリアからすれば、相手の細胞に含まれているバクテリアは、自分とは関係がない競争相手である。それ故、どちらのバクテリアが多く増えるかについて、かなりシビアな競争が起こる。それぞれ相手方由来のバクテリアを出し抜こうとする「進化的軍拡競争」が起こり、揚げ句の果てには、宿主の細胞に悪影響が出る。宿圭が死ねば、共生しているバクテリアにとっては元も子もない。こうして、どこかの時点で、どちらかの細胞がこの軍拡競争を放棄する。それを、雄と呼ぶ。こうして、細胞内小器官を伝える権利をものにした卵が、子どもの生存に必嬰な栄養も与えるようになり、権利を放棄した精予は、何も持ってこなくなる。それが卵と精子に分かれた理由で、その先も、雄と雌の進化はさらに続く。
yuji5327 at 06:33