2019年10月25日
中国の精華大学の施路平博士らが、新しい仕組みの人工知能〔AI)を発表した。従来型AIと脳の演算様式を融合し、既存のAIに比べ、エネルギー効率は1万倍に達する。
「池谷裕二著:闘論席、週刊エコノミスト、2019.9.10」は面白い、概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.8月の英科学誌『ネイチャー』で中国の精華大学の施路平博士らが、新しい仕組みをもった人工知能〔AI)を発表した。従来型AIと脳の演算様式を融合したデザインをとり、既存のAIに比べ、計算効率にして最高100倍、エネルギー効率は1万倍にも達する。博士らは一例として、自転車に自動運転機能を実装してみせた。二輪走行のバランス制御は難しいが、低速でもふらつくことなくスムーズに自走する動画の様子は不思議な光景である。音声認識や追尾機能も備え、AIの汎用性と自律性が高まったことを実感させる。
2.中国の科学は躍進している。現在AIの最先端を走るのは、アメリカでもイギリスでもなく、中国である。この事実を察知したアメリカはファーウェイ排除などの手を繰り出した時は、すでに遅しである。
3.日本の科学技術振興機構が2015年から17年に発表された高インパクトな科学論文を研究分野別に分析した結果、151の理工系領域のうち71領域で中国が首位だった。IT(情報技術)やAIなどの工学・計算科学系は、ほぼ中国の独占状態である。アメリカの研究所での主戦力は、もともと中国人だった。朝一番に実験室に来て、最も勤勉に働く研究者の多くは中国出身である。
4.中国と聞いて反射的に低品質や低モラルというステレオタイプなイメージを思い浮かべたのはもはや過去のことである。中国は古来、孔子、老子、荘子といった傑人を輩出してきた道徳と知性の国である。著者の専門分野である神経科学でも中国が強い。最新情報を得るためにアメリカや欧州の学会に参加するのが常識だったのは数年前までである。今は中国へも情報収集に飛ぶ必要がある。