2019年11月05日

神仏習合は日本の良いところ。キリスト教にしても、古代社会からの神々の信仰と必ず習合している。


「五木寛之著:白秋期、日経プレミアシリーズ、2019.3.13」は面白い。「第2章:神さまは資本主義者か」の概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本人は明治以来、西洋文明の影響のもとに、それを取り入れて生活を西洋化してきた。チョンマゲを落とし、刀を棄て、靴を履いて、いまではほとんど、西洋人と変わりないようなスタイルで生活している。しかし、日本人が拠って立つ精神的支柱は、欧米とは根本的にちがう。
2.洋才には洋魂がある。洋才と洋魂は不即不離である。欧米人がバッハの音楽を聴くとき、耳が肥えたクラシックファンでなくても、素朴な児童でさえ、自己の根にあるキリスト教的宗教感覚を揺さぶられ、音楽技法上のテクニックや表現力を超えた、深いものを感じている。
3.ヴェルディのオペラ「運命の力」を聴きに行って、教会の場面がつづくのに退屈して、途中で出てしまったことがある。声が素晴らしいとか、演出が新しいとかいう以前に、どうしてもわからないという感覚がある。欧米人と日本人では、感動する仕方が、根底的にちがう。そのことを、私たちはしだいに理解するようになったが、理解はしても、そこには深い溝がある。
4.たとえば、ある種の外資系投資家につけられた「ハゲタカ・ファンド」という呼称には、一種の嫌悪感がふくまれているが、彼らの行動原理には、神への信頼と、神からのクレジットがある。自由経済、自由競争、規制撤廃、市場原理の背景にあるのも、神の存在である。
5.市場は、ほうっておくと弱肉強食の修羅の場になりかねないが、大きく傾いてしまったときには、アダム・スミス以来の「見えざる神の御手」が働くはずだという考え方が根底にある。その確信があればこその自由競争、錦の御旗を背負った市場原理なのであって、日本がそれを抜きにして、形だけ取り入れのは正しくない。
6.ハゲタカよばわりされる外国資本の背景にも、神の力が働いており、日本型企業に乗りこんできて、大胆な合理化を達成したカルロス・ゴーン氏も、敬盧なクリスチャンを自称していた。欧米諸国の資本主義は、神の大義を背負ったシステムである。形だけの市場原理スタイルでは、太刀打ちできない。
7.日本人には昔から、金儲けは汚いことだという倫理意識があるから、錦の御旗を背負った欧米の経済十字軍と向き合ってビジネスをするとき、どうしても猫背になる。なによりも日本でいう「畏れ」という気持ちが、21世紀の世界全体で失われている。神道には、「かしこみかしこみまをす」という畏れの気持ちが根底にあって、森の木を切ることを畏れ、雷を畏れ、大雨を畏れ、自然を畏れるというのは、非常に深い思想形態である。
8.神仏習合を、近代日本の恥部ではなく、そもそも信仰は習合するものであって、キリスト教にしても、ドイツにはドイツのプロテスタント、イギリスにはイギリス国教会、アイルランドにはアイルランド・カトリック、イタリアではローマ・カトリックという具合に、古代社会からの神々の信仰と必ず習合している。
9.純粋な原理主義的一神教では、「我らの信じる神以外を信じるな」という姿勢になるが、日本人が宗教において保ちつづけているシンクレティズムの感覚は、貴重なまもので、世界に広がっていく必要こそあれ、けっして恥ずべきことではない。先進国でありながら、日本人がいまなお備えているシンクレティズムとアニミズムの感覚は、人間にとって貴重な資産として、この国の未来を支えていく。
10.これから先の日本は、人口が減り、斜陽化し、産業は停滞していくのは必定である。国家にとっても下山の時代である。経済成長だ、GDPが世界で何番目だと誇るのではなく、日本人が大事にしてきた精神世界の恩恵と、それが持つ可能性を、あらためて国内にも世界にもメッセージすればよい。ゆっくりと下降し、やがては、どこかに静かに着地する21世紀には、そういうことが大きな価値として、歴史に残る。



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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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